――今回のチャイニーズ・タイペイ戦を振り返っていかがですか。
小久保:選手たちには親善試合ではなく、今回の3試合は強化試合であるということを一番初めに伝えました。とにかく勝つんだと。選手たちはその意識をしっかりともって、実にいい仕事をしてくれたと思います。ぼく自身は監督のキャリアゼロですので、とにかく選手たちに迷惑をかけないようにという思いでずっとやっていました。
――3試合を通じわずか4失点でした。
小久保:投手力というのは日本の誇れる分野。その投手陣が自分たちの持ち味をしっかりと出して、最少失点に抑えてくれたことが、3連勝の大きな要因になりましたね。
――初めてベンチで采配を振るった感想を教えてください。
小久保:1戦目は想像していた以上に考えなくてはいけないことがいっぱいあるなと感じました。サインを出そうかどうか考えているうちに相手のピッチャーがボールを投げてしまったりね。監督業とは想像以上に決断の速さが求められるということがよくわかった。2戦目以降は1戦目の経験が生きて、ベンチでは落ち着いて采配を振るうことができました。そういう意味では本当にいい勉強をさせてもらっていると思います。
――今回、采配を振るう上で心がけていた事、意識していたことはなにかありますか?
小久保:今回、初めて采配を振るう立場となって感じたことは、サインをどんどん出して、動くことは意外と簡単だなということ。新しい監督はやっぱり自分の野球のカラーをアピールしたくなるものだと思うんですよ。だから、どんどん攻撃のサインを出したくなるし、そのほうが周囲も「お、新監督どんどん動いているな」と思ってもらいやすいところもある。でも僕、それって独りよがりな野球に過ぎないなと思ったんです。本来は、動かない、我慢をするということの方が難しいし、そういった我慢が一番、監督に求められる部分だと思う。もちろんそれで負けてしまうと無策などと批判を浴びてしまうかもしれないけれど、そういうところも含めて責任を背負っていくのが監督なのかなと。
――今回の3試合、4番は中田翔選手で固定でした。
小久保:4番という打順はつなぎではなくて、流れを変えられる存在が務めるべきというのが僕の考えだし、自分もそういう意識を持って現役時代にプレーしていました。中田にはぜひともそういう存在になってくれることを大いに期待し、全試合4番を務めてもらいました。今回は、4番を中田、5番を浅村栄斗が務めましたが、この二人には小細工いっさいなしで常に自由に打って良いと伝えていました。
――最初の全体ミーティングで「ユニホームはいわば戦闘服。上から下まできちんと揃って初めて戦闘服と言えるので、基本は着帽。そしてグラウンドは道場。ツバを吐くのは慎もう」という2点の約束ごとを提言したことがすごく印象的でした。
小久保:実際、みんなきちんと約束を守ってくれましたよね。やはり今回集まった選手たちも、野球というものに出会えたことで、野球を通じて成長させてもらっている野球人ばかりだと思うんです。我々は野球から人生を含めて学ばせてもらっている。そう考えるとグラウンドは我々にとって道場なんだと。そういう発想が持てると「そうだよな、道場に唾なんか吐かないよな」と当たり前のように思えるし、そういう意識を持つことで野球が野球道へと変わっていくと思う。そういう意識を当たり前だと思える選手が増えれば、増えるほど、トップチームの結束は強くなっていくんじゃないかな。
――練習後に荒れた打席をならす、グラウンドに入る際・出る際に礼をする、用具を大事に扱うといったことは、日本チームでは当たり前ですが、世界レベルで見るとそこまで気を配って野球をする国は少なく、すごく驚かれますし、「まさに侍」といった声も聞きました。これも日本野球のカラーであり、強みではないでしょうか。
小久保:そうですね。外国から見て当たり前でないことが、当たり前のようにできているというのは日本が誇っていい部分だと思いますね。そういったことは即、勝利に結びつかないと思う人もいるかもしれないけれど、野球道としっかり向き合い、野球道を極めることは勝利にも当然つながっていくこと。僕自身もそうやって自分を高めてきたし、選手たちにも求めていきたいですね。
――最後に、今回選出されたメンバーに対するメッセージがあればぜひお願いします。
小久保:一番最初の全体ミーティングでも選手、スタッフ全員の前で言ったのですが、今回の侍ジャパンプロジェクトは各世代が世界一を目指していくというもの。そして我々はそのプロジェクトの中のトップチームなわけです。トップチームであるということは下の世代から憧れられる存在であり、目標とされるお手本のような存在でなくてはならないことを絶対に忘れないでもらいたい。そして、今回選ばれた選手たちは、今回の遠征で得たもの、感じたことを所属するチームに持ち帰って生かしてもらいたいし、自身は侍ジャパンの一員なんだという強い自覚と自負を持ってほしい。そういう気持ちが芽生えることによって自チーム内での振る舞いなどにも変化が起こるのではないかと期待しています。2017年は君たちが中心選手!これからも共に戦っていきましょう。