晴れ渡った空の下、山城大智(沖縄尚学)の剛球が冴え渡った。「今日は『ライアン投法』を封印して、リズム良く投げることだけを考えて投げました。」山城自ら「“ノー”ライアンデーです」と話したピッチングで3回をパーフェクトに抑えて6奪三振を記録した。
第10回 BFA 18Uアジア選手権は2日目を迎え、日本代表は予選リーグ2戦目のスリランカ戦にのぞんだ。クイーンシリキット球場は両翼98メートル、中堅120メートルの広さでコンクリート製の観客席が設置されるなど日本の球場に近い設備が整っている。ただ、内野の土は日本とは違う茶褐色の赤土が入っていた。
比嘉公也・投手コーチ(沖縄尚学監督)は先日の練習の際、「マウンドが日本より少し柔らかい。下半身主体で投げる山城のときは、左足を踏み出したときに体重移動がうまくできるか心配です」と、赤土を気にかけていた。
だが、実際に投げた山城は「マウンドは気にならなかったです」と意外な反応。「それよりも、リズム良く投げることだけを考えました」。本来はかつてのメジャーリーグの大投手ノーラン・ライアンのように左足を高々と上げるフォームで投げる。それを今日はあえて封印し、最初からセットポジションで投げるスタイルに変更。捕手からの返球を受けるとすぐにサインを見て投球動作に入った。前日、バッターボックスを外して間をとるフィリピン打線に高橋光成(前橋育英)が苦労したことを受けての対策が、この日の好投に繋がった。
このリズムの良さに呼応して、日本代表の打線も初回から爆発した。1死1、3塁から4番岡本和真(智弁学園)のセンター前ヒットで先制すると、この回打者12人の攻撃で7本の長短打を放って一挙9点を挙げた。その後も得点を重ねた日本代表は5回裏に岸潤一郎(明徳義塾)のセンター前ヒットで20対0となったところで5回コールド勝ちとなった。
打線は5番の香月一也(大阪桐蔭)の3安打など19安打の猛攻、投手陣は山城の後を受けて4回から投げた小島和哉(浦和学院)もスライダー、カットボールを交えた投球で2回をパーフェクトに抑えた。守備は初戦に続いてノーエラーと変わらず安定している。
相手のスリランカは、国内に19あまりの高校チームがあってまだまだ発展途上の国だ。ひたむきにボールを追う姿勢はあるが、細見の選手が多くて投手力、打撃力とも、実力的に日本には遠く及ばなかった。
高橋監督は2勝目について「これだけリードすると打線は気が緩んで大振りになるものだが、大きいミスもなくきっちりやってくれました。投手陣も申し分ありません」と満点に近い評価だった。また、比嘉コーチは山城の好投にひと安心しながらも、「何球か抜け気味のボールがありました。決勝トーナメントではその1球が命取りになるので、その点は次から気をつけさせるようにしたいです」と気持ちを引き締めていた。
これで予選リーグ2勝とした侍ジャパン18Uは、明日9月3日の朝9時(日本時間11時)から中国と対戦する。マウンドにはまだ登板がない飯塚悟史(日本文理)と、ここ2試合は6番レフトで出場中の岸の二人が上がる予定だ。
高橋のピッチングから学んだ山城が2つ目の白星をもたらした。侍ジャパン18Uは、アジア制覇に向けて、バンコクの地で一つのチームにまとまりつつある。
インタビュー動画(先制タイムリー含む3安打の4番・岡本選手)