侍ジャパン「みらいの侍」プロジェクトが始動 仁志敏久氏を講師に招いて開催
2019年8月9日
小学校訪問やふれあいイベントなど様々な野球普及・振興事業を行ってきた野球日本代表「侍ジャパン」が、このたびさらに活動の幅を広げ「侍ジャパン『みらいの侍』プロジェクト」として新たなスタートを切ることになった。
「侍ジャパン『みらいの侍』プロジェクト」は、これまでの野球未経験者を中心とした体験型の活動に加え、実際に野球をプレーしている子供たちをターゲットに本格的な技術指導と共に、精神面にも踏み込んだ指導を行うことで、まさに「みらいの侍」を生み出すことを目的に始動したプロジェクトを指す。
そして、船出となる第一弾のイベントとして8月9日に「第5回 WBSC U-12 ワールドカップ」で準優勝を果たしたばかりの侍ジャパンU-12代表監督・仁志敏久氏を講師に招き、神奈川県鎌倉市で野球教室を開催。市内の少年野球チームから約30名の選手とその父兄が集うなか、自主性を促すための指導が行われた。
午前10時、まず第一部はミーティングからスタート。事前に走攻守のそれぞれの項目に対して、10点満点での自己評価の点数と、「できていること」と「できていないこと」をシートに書き込んできた選手たち。仁志氏は点数の高かった選手と低かった選手にその理由を尋ねながら講義を進めていく。走塁についてのパートでは、図らずもリードの取り方を直接、指導。「足元だけを見るのではなく、ピッチャーを見ながらでも常に同じ距離をリードできるように」とアドバイスした。さらに野球だけでなく私生活の面でも「自分でできることは自分でやるように」と話し、まずは「一人で目覚まし時計を使って起きることから始めよう」と声を掛けた。
それから講義の対象は個人からチームへと移り、「チームとしてできていること」と「チームとしてできていないこと」を班ごとに話し合わせてホワイトボードに書き出し、その「できていないこと」の改善点を選手自身に挙げさせた。そして、仁志氏は午後から予定されている練習試合に向けて、一つだけ自分たちができるテーマを決めるように促し、その結果「集中力を切らさせないために、自分から積極的に声を出すこと」を目標に定めさせた。
昼食休憩を挟んで正午から第二部となる実技が行われ、各自、ウォーミングアップやキャッチボール。そしてシートノックを受け、13時からは練習試合がプレーボール。選手たちは思い思いにテーマを意識しながらプレーし、30度を超える暑さを感じさせない、はつらつとした動きを見せた。
試合後は再び室内に戻り、第三部となる座学を実施。この日の試合を振り返り、自分に起こったことや感じたことをシートに書き記した。また、仁志氏からは試合展開を振り返りながら具体的なアドバイスが送られ、初回から3回まではピンチが続き、失点も許した場面について、「ピッチャーにかける言葉は通り一遍なものにならないように」と指導があり、「アウトカウントを言ったり、『打たせていこう』と言ったり、だいたいみんな同じようなことを言いますが、それだとピッチャーの耳には届かない。だから、ピッチャーのことを本当に思いやった言葉を掛けること。そうすれば心にに届く言葉になります」と諭した。また、「見逃し三振をしてしまった」と反省点を挙げた選手に対しては「今日の試合は5回で終了したので、多くても3打席しか回りませんでした。3打席ということはストライクは6球までしか許されません。なぜなら、9球を取られたら全打席三振になってしまうからです。だから、全打席で『1球は見ていこう』としてしまうと、残りのストライクはたった3球になってしまう。だから、見逃し三振をしたことを悔やむよりも、追い込まれるまでに打てたボールが何球あったのかに目を向けて、1球のストライクを無駄にしないように」と発想の転換を求めた。
最後にチームのテーマにしていた「集中力」について選手たちに自己採点をしてもらい、100点満点になるまでに何が足りなかったのかを考えさせ、その改善点をキャプテンを中心に討論。次の試合への新たな目標(テーマ)を立てた。「みんなで決めたのだから、みんなで守らなくちゃいけない。そうやって反省を積み重ねることで強いチームになっていきます」と仁志氏は締め、継続することの大切さを説いた。
その後、質疑応答とこの日に使用したシートと同じ内容が書かれたノートなどが参加者全員に贈られてイベントは終了。小学生に対して、考えて野球をするように説いた仁志氏は「小学生でも実はできることも多いので、周囲の大人が『できない』と決めつけることなく、接してほしい」と要望。そして、「野球の未来を創るのは今の小学生たちなので、今のうちから考える野球を身に付け、将来は立派な侍になってほしい」と激励した。
今後は「さらに小学生でもわかりやすくなるように内容を改善しながら、こうした野球教室を続けていきたい」と話した仁志氏。「みらいの侍」を生み出すために、侍ジャパンの活動は今後も熱を増していく。