2018年11月9日
――今日は私たちの同世代の星、松坂世代の森本稀哲君にお話を伺います。稀哲君、今日はよろしくお願いします。
(森本)よろしくお願いします。日米野球が定期的にあるのって、とてもいいことですよね。僕が全盛期だった頃は、ちょうど日米野球がない時期だったので。(2006年を最後に、前回開催の2014年まで開催されなかった) アピールする場所が欲しかったし、本場を生で見る機会も欲しかったなあと思います。
――タイミングもあるよね。でも日本ハム時代、一緒に外野を守っていた新庄さんからいろいろメジャーリーグの話は聞いたりしたでしょ?
(森本)新庄さんは、僕らに「向こうに行くな」って言ってたんだよね。メジャーは移動も多いし、自由な時間は日本と比べると比較的少なかったりする…だから稀哲の性格には合わないって言われてた(笑)。実際のところはわからないけど、そんな風に言ってくれるくらい、新庄さんが僕らのことを見てくれていたのかなと。もちろん、プロの世界に入ってから本当に興味があった世界ですよ。なんせ、実は僕、ヤンキースのキャンプに行ってるので。
――稀哲君は、どの時期にキャンプ参加してたの?
(森本)ちょうど2年目のシーズン終わり、9月から2カ月間くらいかなあ。ルーキーリーグの選手もいたし、3Aの選手もいて、本当に刺激的だったよ。そうそう、この人がいた、ドン・マッティングリー!
――え?じゃあ、日本側の監督も知っているし、アメリカ側の監督も知っているってことになるよね?
(森本)そうだよ!稲葉さんもマッティングリーさんも二人とも知ってる!僕、このインタビューにもってこいじゃないですか笑!
――それは知りませんでした…稲葉監督、金子コーチ、建山コーチのことを中心に聞くためにお願いしてたのでびっくり!
(森本)しかも、僕、清水さんもファイターズ時代の数年間一緒にプレーしていますよ!
――すごい、素晴らしい!日米合わせて5人の首脳陣と一緒にグランドにいたなんて…恐れ入りました。それは聞き甲斐があります。
(森本)マッティングリーさん、ヤンキースで教えてもらった時は抜群に男前で、寡黙なイメージだった。でも、要所要所、ここっていう時に教えに来てくれる方だった。バッティングでよくアドバイスをもらったよ。
――AKI猪瀬さん曰く、とてもオールドスタイルの野球を貫く方らしいよ。
(森本)めちゃくちゃ真面目で、誠実な感じの人柄だったからね。堅い野球を展開しそうな気がします!
――そして、稀哲君だからこそ知る稲葉篤紀さんもいると思うんですけど、稲葉さんの監督というのは、どのように映ってますか?
(森本)稲葉さんって、とても監督が似合う方だと思うんです。性格も監督にぴったりな気がするんだよね。
――どういうこと?
(森本)稲葉さんは、周りを生かす人間性を持つ方で、自分が前に出ないタイプ。でもこだわりが強くて、芯がある。と思ったら、おっちょこちょいな一面もある。だから、僕も含めて周りのみんなに「稲葉さんを支えよう」と思わせるタイプの方。ファイターズ時代もみんな稲葉さんのところにアドバイスをもらいに行っていたことが印象的かな。
――取材陣に対しても、常に、誰に対しても同じ対応、同じ姿勢で接してくれる素晴らしい方です。本当に応援したくなる方ですよね。稀哲君は稲葉さんの采配についてはどんなイメージを持っていますか?
(森本)とにかく基本に忠実な方なので、采配も同じく忠実な采配をされるんじゃないかなと思います。4番でも、点を獲りに行くためには確率が高ければ送りバントのサインを出す。実際に稲葉さんが現役時代に送りバントや進塁打を当たり前のようにやっていたから、きっとそんな采配を見ることができるんじゃないかなと。あと、一度「これ!」と思ったらそのルーティンを崩さない方なんだよね。ルーティンを崩さずに2000本という結果を出した方。だから勝てるルーティンやコツがわかったら、ものすごく強い監督、チームができているんじゃないかな、って勝手に想像してます。
――では、次は金子さんと建山さんについて。このお二人のコーチについて、稀哲君の印象はどんな印象ですか?
(森本)全然違うタイプのお二方。でも二人とも本当に野球を勉強するのが好きで、いつも野球のことを考えていらっしゃる。こないだもお二人に呼ばれて、食事に行ったんですよ。そしたら、二人とも、ずーっと「侍ジャパンがどうすれば勝てるか」という話をしてたんだよね。すごいよね。時々僕に「この選手はどう思う?俺は良い選手だと思うんだけどさあ」って意見を求めてきたり。お二人に対して僕が言えることなんてあんまりないんだけど(笑)
――ものすごくアツい感じが伝わってきます。金子さんは現役時代インタビューさせて頂いていた頃も、冷静でポーカーフェイスなイメージだけど、それは今も変わらないですか?
(森本)金子さんは、現役時代、スタメンで出ているのに、試合中ベンチで待機している時は、冷静に野球を見てるのがとても印象深いよ。試合に出てる人でそういう人はあんまりいなんだよね。あと、裏表が一切ないんだよね。あまり自分から話しかけてくるタイプの方ではなかったんだけど、たまに言う時は、結構大事なことを伝えようとする時で。僕はよく怒られてましたけど笑。クールな雰囲気はそのままなんだけど、後輩がアドバイスを聞きに行ったら、いつも本気で教えてくれる方。僕の印象はそんな感じかなあ。
――金子さんの印象、よくわかった気がします。次に建山さんはどういうタイプの方ですか?
(森本)建山さんは選手の想いを汲んでくれる方です。相手の気持ち、心境を感じ取るのがすごくうまいというイメージがあるかな。コミュニケーションの取り方が本当に上手なのでとても尊敬してます。建山さんは日本でも、メジャーでも、先発も中継ぎも経験しているし、選手の気持ちもすごくわかってくれる方だと思う。
――取材側で話を聞きに行っても、こちらが何を聞きたいかわかってくれている感じ。本当に素敵な方だよね。
(森本)そう、本当に素敵。僕が、建山さんが投げている試合で好プレーをした時に「ありがとう」とわざわざ言いに来てくれたりして…泣きそうになったことがあるのをよく覚えてるよ。
――当時の日本ハムは頼れる先輩たちが本当にたくさんいたんだね。
(森本)今思い返すと、投手陣のリーダーが建山さん、内野が金子さん、外野が稲葉さん。そんな時期があったことを覚えてる。それぞれのポジションで素晴らしいリーダーシップを発揮してくれる方々がいて、その背中を僕はずっと見てきた。その3人が今、侍ジャパンを率いているなんて、不思議な感じ。
――清水さんはどういうコーチという印象がある?
(森本)清水さんはとても積極的に腕を回してくれるサードコーチャー。僕が思うには、「なんで今、腕を回さなかったの?」って思う人はきっと少なくなると思うよ。清水さんの右腕に命運がかかる場面がきても、きっと思い切った判断をするんじゃないかなって想像してるよ。
――最後に、稀哲君は、稲葉さん率いる侍ジャパンはこれからどんなチームになっていくと思う?
(森本)稲葉監督が考える「勝てるプレーヤー」が活躍するチームになっているんじゃないかなと思います。例えば、西武の外崎君とかは象徴的かもしれない。僕が思うに、彼はチームが勝つための要素を持っている選手だと思うんです。長打も打てるし、小技もある。守備も内外野守ることができる。まだそれほど結果が出ていなかった頃から期待して選んでいたりした。稲葉監督らしい人選なんじゃないかなって僕は思ったよ。
――今日は本当に有り難うございました。これだけ首脳陣のことを知っている稀哲君なら、侍ジャパンの広報なれるね笑
(森本)稲葉さんたちのためなら、なんでもやります!あと、稲葉さん、金子さん、建山さん、当時を知る僕が言えるとしたら、3人とも侍ジャパンのために“自分の命を懸けて戦う”というくらいの気持ちでやっていると思う。それは、多分間違いないです。僕はこのことをたくさんの人に伝えていきたいと思います!
(文:田中大貴 写真:小島眞治)