9月1日(月)から7日(日)まで宮崎県宮崎市で開催される「ENEOS Presents第6回IBAF女子野球ワールドカップ2014宮崎大会」において大会4連覇に挑む「侍ジャパン女子日本代表」。2大会ぶり、4回目の指揮を執る大倉孝一監督に、8月6日(水)~8日(金)の3日間・愛媛県松山市にある松山市中央公園・坊っちゃんスタジアムを中心に行なわれた代表選考最終合宿の狙いと、女子日本代表への思い、大会4連覇への意気込みを伺いました。
――今大会の日本開催は大倉監督が2度目の采配、世界一を遂げた第3回大会以来6年ぶり。最終合宿を迎えたチームの仕上がり具合はいかがですか?
我々のでき得る中での最善のチームが出来つつあると思います。とくに、女子野球ワールドカップにおいては大会直前まで、ともすると1次リーグに入ってみないと他チームの状況がわからない状況です。そのため、1次リーグに入った際に、対戦相手と日本を、そして星取りをアジャストしていく作業が入ってきます。
ですので、私たちが大会までにすることは、これまでの状況を頭に入れつつ、日本チームのレベルを上げていく、整えていく作業がすべて。この最終合宿でも、僕が思う日本チームの形を整えていくことになります。
――大倉監督が考える侍ジャパン女子代表の「整え方」とは?
「整える=ミスが出ない」ということですね。僕もIBAF女子野球ワールドカップに長らくかかわってきましたが、日本がもし負けるとすればミスを連発した場合。その危機管理、すなわちミスが出ない考え方を攻撃にしても、守備にしても合わせていきます。とくに最終合宿では、サインプレーや動き方の再確認を重視しています。
技術的な部分は本人たちの各チーム内での取り組みに任せていますし、その時間も短い合宿期間では取れません。どういう取り組みをするかということも彼女たちには過去の合宿で十分理解してもらっているので、最終合宿ではタイミングと考え方を合わせていく中で、僕が彼女たちの精度をジャッジ、整理しなければいけません。
今回は23名の選手たちを20名に絞り込むことになりましたが、今後の女子野球普及につながるようなフォローも当然、しなくてならないとも考えています。
――その中でも、中心となる選手は固まってきていると思います。まず、投手陣ではどうでしょうか?
さきほど触れたように、どのような戦い方をするか決めるのは1次リーグに入ってからになります。里 綾実(日本女子プロ野球・レイア)を先発完投にするか、全試合抑え役にするかで投手起用のパターンも変わってくるので、様々な状況に対応できる準備はしておこうと思っています。
ただ、里と前回カナダ・エドモント大会最高殊勲選手の磯崎 由加里投手(侍)の2人は当然、登板機会は大会中、多くなると思います。
――投手では矢野 みなみ(日本女子プロ野球・フローラ)投手も前回の宮崎合宿で追加召集しています。
矢野と磯崎で先発ローテーションを回し、里が全試合リリーフでスタンバイする形も計算に入れた中で、彼女を招集しました。あとは、右のワンポイント、左のワンポイントに誰を選ぶかという組み立て方の中で、投手陣はみんな頑張ってもらっています。
――打線の中心はいかがでしょうか?
基本的には西 朝美(AFB TTR)と、川端 友紀(日本女子プロ野球・アストライア)が中心になりますが、僕としては1・2番と、6・7・8番がどれだけ出塁できるかをポイントにしているので、1・2番として考えている六角 彩子(侍)と厚ヶ瀬 美姫(日本女子プロ野球・アストライア)。そして8・9番を予定している志村 亜貴子(アサヒトラスト)、寺部 歩美(尚美学園大4年)あたりの働きがすごく重要になります。
過去のIBAF女子野球ワールドカップでも内角・外角のコントロールがよくて、日本が打ちあぐんだ例はたくさんあります。もし最速135キロの投手が対戦相手にいたときにどうするか。「打てなかったらどうするか」、「打てなくて当然」という考えの中で、全員がバントをでき、走ることができれば、得点は取ることができる。ヒットが出ない中でも「攻めていく」準備はしておきたいです。
――守備でポイントとなる選手は?
第3回大会でも僕と一緒に戦ってくれた厚ヶ瀬が、プロでも安定した力を発揮してくれているショートに入ってきました。そこに出口彩香(尚美学園大4年)がプレーだけでなく、メンタル面でも勢いを出してくれるので、この2人は中心に考えています。
――キャプテンは前回大会に引き続き志村 亜貴子(アサヒトラスト)を指名しています。
彼女は声で引っ張るタイプではないですが、過去のワールドカップにおける実績や経験を見れば信頼できる選手です。ベテランでいえば他に金 由起子(ホーネッツレディース)など、僕と一緒に戦った選手たちもいます。彼女たちが精神的支柱になって、厚ヶ瀬や出口などが思い切り、積極的にやってくれればと考えています。
あとは六角、新宮有依(侍)、磯崎が次世代のリーダーになれるように。その意味も込めて六角には中島梨沙と2人で副キャプテンをしてもらっています。彼女たちが高校生や大学1・2年生をリードできるような形にしていけば、次にもつながると思っています。
――「ENEOS Presents第6回IBAF女子野球ワールドカップ2014宮崎大会」は、女子野球にとっても大きなターニングポイントになると思いますが、大倉監督はどのように考えていますか?
その答えは「僕がなんで女子野球を普及したいと思ったのか?」という話にもかかりますね。実は2001年12月・僕がまだ駒澤大学硬式野球部のコーチをしていたとき、女子野球世界大会のセレクションを駒澤大学グラウンドで行うことになったんです。当時の僕は高いレベルの選手を指導することを目指していたんですが、手伝いをするために一歩足を踏み入れたときに大きな衝撃を受けました。
人数は150人もいるし、北海道から沖縄県まで全国から集まっている。キャッチャーをしている女の子は、自分で用具を買ってきていました。僕は現役時代キャッチャーでしたが、中学時代からこれまで、部に備え付けられていたので、一度もキャッチャー道具を買ったことがない。僕たちは行けばそこに「野球があった」のに、彼女たちは「自分で野球をする」環境を作ろうとしていたんです。
「甲子園出場、大学選手権優勝、都市対抗優勝。そんなことはたいしたことではない。これまでもっていた経歴など、ふざけた野球観だった。野球とはこのようにしてもっと身に着けていくものなんだ」。僕は、彼女たちから学びました。
――では、最後に、大会に向けての意気込みをお願いします。
「これだけ野球が大好きな女の子たちがいるのだから、この子たちに思い切り野球をしてもらう環境作りをしてあげたい」。そうして、色々な方々にかかわって頂いた中での宮崎開催なので、純粋さや、ひたむきさなど、観てもらえる人々に感動を与える試合をしていき、喜んでもらえる結果を全力で残したいです。