11月8日~10日に行われたBASEBALL CHALLENGE 2013をチームの集合から解散まで1日ごとに振り返ります。
チャイニーズ・タイペイとの強化試合がついに開幕!
「蒸し暑いねぇ~」
強化試合第1戦が開催されるこの日。15時過ぎに決戦の舞台となる新荘球場に到着すると、そんな声がどこからとなく聞こえてきた。天気は晴れ。風は強いがその風は終始生温かい。気温は夕方になってもさほど下がらず試合開始時刻一時間前になっても26度。11月とは思えぬ暑さに半袖のアンダーシャツを着用している選手も多い。
「風が強いね!」
侍ジャパンのシートノックの時間が終了し、村松有人外野守備・走塁コーチが苦笑いでベンチへ戻ってきた。
「芝生も荒れてる感じだし、クッションボールの跳ね返りも不規則な感じなので、外野手はそのあたりに神経を使いながら守ることになるかな。照明塔の明るさは最初は日本に比べると暗いのかなと思ったけど、実際にノックを打ってみると、気になるほどじゃなかったね。心配ないよ」
国際試合の場合、打者陣にとっては、初めて対戦する投手がほとんどだが、打席の中でのボールの待ち方は、ペナントレースとは大きく異なるのだろうか。積極打法で知られる浅村栄斗(埼玉西武)にこの疑問をぶつけたところ「ぼくは国際試合経験が少ないので、あまりよくわかんないんですけど…」と前置きしつつ、次のように語った。
「データは頂いているのですが、実際打席に立って対戦するのは初めての投手ばかり。やはりデータを鵜呑みにする気にはなれないですね。追い込まれるまでは、自分が打てると思った甘いボールを積極的に振っていく。自分は日本でもこのスタイルですが、これが国際試合におけるボールの待ち方の基本でもあるんじゃないですか? 1打席目のバッターボックスで、初めて対戦するピッチャーが投げる球の感覚をどれだけつかめるかがポイントだと思います」
ベンチ前に広がる歓喜と安堵の「ナイスゲーム!」
19時37分にプレーボールがかかった強化試合第一戦は、3時間39分の熱い攻防を経て、新生侍ジャパンが4対2で逆転勝利。記念すべき初陣を飾った。
試合終了後、ベンチ前では侍軍団による勝利のハイタッチがおこなわれていた。まるで勝利の雄叫びのごとく、「ナイスゲーム!」の声の輪がベンチ前で広がっている。勝利のハイタッチ行進は、監督、コーチ、選手間にとどまらなかった。侍軍団はさも当然のように、ベンチで待つスタッフの元へと歩を進め、「ナイスゲーム!」と発しながら、大きな手を差し出した。手のひらと手のひらがぶつかり合う音がベンチ内に鳴り響く。一人ひとり目を合わせながら、ハイタッチを交わした人数の分だけ「ナイスゲーム!」という声が響いた。1点ビハインドで迎えた5回に、先頭打者として初球を積極的にとらえ、チャンスメイクとなる二塁打を放った浅村には、「ナイスゲーム!」のあとに「ナイスバッティング!」と慌てて付け加えた。
手を差し出しながら通り過ぎていった男たちの顔はどれも安堵に満ちていた。勝てたことを心の底から喜んでいる表情だった。まるで負けたら終わりというシチュエーションの日本シリーズで勝利を収めたのかと、錯覚してしまうほどだった。「これは親善試合ではなく、強化試合。3戦すべて勝つために真剣勝負をしに台湾へやってきた」という強い気持ちが、ハイタッチという一瞬の行為だけで、十分すぎるくらいに伝わってきたのだ。
試合後のロッカールーム。なにげなくのぞくと主将の嶋基宏(東北楽天)だけが一人残っていた。私の存在に気づいた嶋は試合終了直後と同様の安堵に満ちた表情で言った。
「いやぁ、ほんと負けなくてよかったですよ…。よくひっくり返したと思う。勝てて本当にホッとしています」
試合はあと2試合残っている。狙うは当然、3連勝のみだ。
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