「第12回 BFA U18アジア選手権」に出場している侍ジャパンU-18代表は、チャイニーズ・タイペイとのスーパーラウンド初戦を1対3で敗退した。一次リーグからの持ち越しとなる1敗(対韓国)を含めて、通算成績は2敗となり、日本の決勝進出の可能性はなくなった。
韓国との一次ラウンドに続き「1球」が明暗を分けた。日本にとっては、仮に負ければ大会連覇を逃す一戦。試合開始直後から無風のKIRISHIMAサンマリンスタジアム宮崎は気候同様に、重苦しいムードに包まれた。
2回裏、日本の守りである。一死二塁。六番・リン・シュエンイがカウント2ボール2ストライクから一塁ファウルグラウンドへ飛球を打ち上げた。高校生にとっては不慣れなナイトゲーム、しかも、急造である一塁手・野尻幸輝(木更津総合)が痛恨の落球(記録はエラー)。日本にとっては嫌な流れである。
韓国との一次ラウンドでも1回表、遊撃手・小園海斗(報徳学園)が失策した直後の一死一、二塁から先発・吉田輝星(金足農)が3ランを浴びていた。これが試合の流れか……。
悪い予感は的中してしまう。先発・柿木蓮(大阪桐蔭)は直後のスライダーを左前に運ばれ、二塁走者が生還して、先制点を奪われる。しかし、ここで窮地を救うスーパープレーが出る。七番・ダイ・ペイフォンが右前打。三進を狙った一塁走者が、右翼手・根尾昂(大阪桐蔭)の好返球でタッチアウトとなった。チャイニーズ・タイペイに傾きかけた流れを、投手と遊撃手も兼任する強肩が食い止めた。
「刺さないといけないプレーです。柿木も頑張っていたので、守備から盛り立てていこうと思っていました」(根尾)
4回表、今度は日本にとって幸運な「1球」が訪れる。一死一塁から野尻が打ち上げた右中間の打球を、チャイニーズ・タイペイの右翼手と中堅手が譲り合い(記録は二塁打)。相手からもらったミスである。一死二、三塁から主将・中川卓也(大阪桐蔭)の左犠飛で1対1の同点に追いつく。
「負ければV逸」の姿勢が、投手起用に出た。4回裏、永田裕治監督は先発・柿木を3回(39球)での交代を決断し、2日前に先発した吉田を投入してきた。「柿木はブルペンから悪かった。早いタイミングで代えないといけないと思った。吉田しかいない。根尾や他の投手を含めて、今日はスクランブル態勢ですから」(永田監督)。吉田でペースを引き寄せたいところだったが、チャイニーズ・タイペイは日本のお株を奪う攻撃を仕掛けてきた。
4回裏二死一、二塁から八番・ツェン・チュアンシェンの左前適時打で勝ち越しに成功すると、なおも、一、三塁からセオリーからすれば〝想定外〟の動きに出る。カウント3ボール1ストライクから、クオ・ティエンシンがセーフティーバント。絶妙な打球は三塁前に転がる。安定感抜群の三塁手・中川もさすがに慌てたのか、一塁送球は高めに浮いて内野安打。日本としては、まさしく手痛い3点目を許してしまったのだ。
意表を突くこの「1球」により、チャイニーズ・タイペイが主導権を握った。吉田は5回以降は持ち直して、8回まで5イニング(58球)を投げ切り、味方の反撃を待った。だが、日本打線は決め手に欠く。チャイニーズ・タイペイの先発左腕・ワン・イェンチェンは、今大会の上限である105球の「球数制限」がある中でも、102球の省エネ投球により、2安打1失点で完投している。一番から左打者6人を並べた日本打線は、韓国戦に続いてサウスポー攻略に苦しんだ。1対3。日本の史上初の大会2連覇は消滅した。
いつも冷静な守備で、内野陣を盛り立ててきた中川は悔しさをにじませた。「三塁前のバント?頭には入っていました。(送球ミスは)今の実力だと思います」。中1日ながら、連投となった吉田は今大会2敗目となった。
「自分のピッチングがまったくできていなかった。フォームが全然、ダメ。何が悪いのか分からない。得点した直後だったので、ゼロに抑えようと思ったが……。2試合とも、投げた初回に失点。自分がゲームを壊してしまい、申し訳ない。(5回以降は無失点)相手の打ち損じと、仲間の守備に助けられただけ。2失点で流れを引き寄せなれなかった」
明日は中国とのスーパーラウンド第2戦が控える。日本は勝敗にかかわらず、9日には再び、3位決定戦で中国と顔を合わせる。永田監督は「選手と奮闘して何とか(3位を)死守したい。本来の日本の野球。立て直して、全力で中国戦に挑みたい」と改めて決意を示した。地元開催の日本にとって、残り2試合は難しい戦いとなるが、日の丸を背負っている限り、最後まで全力を尽くすだけだ。
監督・選手コメント
永田裕治監督
「ヒット2本ですから……。バッティングはここに来て、芯に当たらない。(チャンスは)向こうのミスの場面(4回)だけ。強い打球は根尾の(4回の)セカンドゴロくらい。あとはまったく機能しなかった。左投手を攻略するのが難しいのが国際試合。何とかしたい。吉田は本来の調子ではなかったが、よう踏ん張ってくれた。敗因?選手は一生懸命やっている。こちらが管理できなかった」
中川卓也主将
「悔しい気持ちはあるが、日の丸を背負って戦う義務がある。勝つという強い気持ちを持って明日、明後日と勝って3位を死守する」
根尾昂
「(ベンチの)雰囲気自体は悪くなかった。チャンスを作っていくぞ、と言ってきたが、それに比例する技術、粘りがなかった。相手は序盤、中盤、終盤と配球を変えてきた。残り2試合、責任を果たせるようにしたい」
藤原恭大
「ピッチャーは踏ん張ってくれたが、野手がヒット2本なので、これでは勝てない。相手投手はコントロールが良くて、コースに決まる投球術があった。昨年も優勝できなかったので、悔しい気持ちでいっぱいです。昨年もそうですが、打つ力がない。投手は抑えている。打撃陣は打てないのは誰が見ても分かること。韓国、チャイニーズ・タイペイも振ってくるチーム。それに対して、自分たちは当てにいく打撃をしていた。相手は一つも二つも上。まだまだ、振る力が足りない」
小園海斗
「言い訳はしたくないですが、(日本の)高校野球は金属バット。(韓国、チャイニーズ・タイペイとは)木製バットの差があるのかなと思います」
第12回 BFA U18アジア選手権
大会期間
2018年9月3日~9月10日
グループA
9月3日(月)18:00 日本 26 - 0 香港
9月4日(火)18:00 スリランカ 0 - 15 日本
9月5日(水)18:00 日本 1 - 3 韓国
スーパーラウンド
9月7日(金)18:00 チャイニーズ・タイペイ 3 - 1 日本
9月8日(土)18:00 日本 (中止) 中国
3位決定戦
9月10日(月)13:00 日本 14 - 1 中国
開催地
日本(宮崎)
出場する国と地域
グループA
日本、香港、韓国、スリランカ
グループB
中国、チャイニーズ・タイペイ、パキスタン、インドネシア