7月23日に開幕する東京オリンピックの野球競技には日本を含む6か国が出場。メダル獲得を争う出場国のうち、今回はイスラエル代表を紹介する。
ヨーロッパ・アフリカ予選突破しオリンピック初出場を決めたイスラエル
2017年のWBCでの躍進が記憶に新しい人も多いだろう。一説によると国内の競技人口は約5000人程度と言われるなど、野球が発展している国とは言い難いイスラエル。ただ自国出身者以外のユダヤ教徒に国籍を与える国として知られており、野球の代表チームも理論上「ユダヤ系アメリカ人を中心とした構成で強力なチームが作れる」と言われてきた。
2013年WBCの予選大会にイスラエルがエントリーし、初めてユダヤ系選手を中心としたメンバーで戦ったが予選決勝で惜しくも敗退。雪辱を目指した2017年大会の予選をようやく突破しWBC本大会出場を果たすと、韓国、オランダ、キューバといった強豪国を次々と破り、惜しくも敗れたが日本とも熱戦を展開した。
とはいえ、2019年に行われた1つの出場枠を競う東京オリンピックのヨーロッパ・アフリカ予選では、国際大会の実績が少ないイスラエルよりも、近年のヨーロッパの代表格であるオランダや、過去に4度のオリンピック出場歴を持つイタリアが本命視されていた。だが蓋を開けてみれば、オランダに直接対決で8対1の快勝をするなどイスラエルが4勝1敗で予選突破し、オリンピック初出場を決めた。
2017年WBCでは強豪国を次々と破り熱戦を展開した
オリンピック本番でも予選時と同様にユダヤ系のマイナーリーグ・独立リーグ・アメリカの大学野球経験者で編成されるチームとなりそうだ。出場が内定している選手の中には、目を引くビッグネームも存在する。
ヨーロッパ・アフリカ予選突破にも貢献したダニー・バレンシア(元ツインズなど)は通算87本塁打を記録した強打の内野手としてMLBで活躍。イアン・キンズラー(元レンジャーズなど)はMLBオールスターゲームに4度出場した経験を持つなど、メジャーを代表する二塁手として走攻守に活躍したことで知られる。2人ともフリーエージェント状態のため実戦から離れていたが、期間限定で独立リーグに参戦するなど、キャリアの集大成としてオリンピックを戦うための準備もぬかりない。
2017年のWBCでは徹底したシフトや投手登録の多い編成を生かした細かい継投など、緻密なスカウティングを生かした戦略が躍進に繋がっていたが、今回の出場国で最も情報量が多いであろう日本戦でそれが生かされる可能性はある。
ユダヤ系選手を中心としたチーム、と書くとどこか寄せ集めのチームのような印象を抱いてしまいそうになるが、ユダヤ教徒という同じバックボーンを共有する彼らの結束力は強い。彼らの「祖国」であるイスラエルで野球を発展させたいというモチベーションも高く、イスラエルの団体競技としては45年ぶりとなるオリンピックで、祖国の野球発展に繋がる戦いを目指す。