東京オリンピックの野球競技開幕を7月28日に控え、野球日本代表の稲葉篤紀監督がインタビュー取材に応じた。前編となる今回は、悲願の金メダル獲得に向け新戦力への期待や19日からの直前合宿でのポイントを聞いた。
投手を1人増やした理由
――オリンピック本番間近ですけれども、今の率直な思いを教えてください
「いよいよ始まっていくなという気持ちですね。緊張感も少しずつ高まってきています」
――代表選手内定後も公式戦の視察続けられましたが、どのような部分を見られたのでしょうか?
「視察というより、挨拶や選手に会うことが目的でした。監督・コーチにご挨拶をし、選手に直接会って、こちらの考え方や思いを短い時間の中で伝えようと、各球場を回らせていただきました」
――やはり選手たちの気持ちの入りようも感じるものはありましたか?
「そうですね。選手たちも強い気持ちを持ってくれているなと感じましたし、我々の思いや考え方、選手個々の役割を含めて話をさせていただきました。直前合宿で集まった時には、トーナメントに向けての話や他の国の情報などを細かく伝えていきます」
――2019年のプレミア12の経験が今回の選考で生かされた点というのはございますか
「私は投手を早く代えたくなるので、そこで投手を1人でも多くと考えて(北京オリンピックより1人多い)11人の登録にいたしました」
――やはり国際大会では、流れが一度相手に行ってしまうと取り戻すのが大変だということでしょうか?
「そうですね。投手が10人だと、我慢して投げてもらわなくてはいけなくなる場面も出てきてしまいます。加えて、オリンピックはデーゲームもあり、夏の暑さもあり体力の消耗が早いでしょうし、独特のプレッシャーもあります。先発投手は、長いイニングでの起用を考えていますが、これだけの良い投手が揃っているので"1試合すべてを任す"というよりも"最初から自分の持っているものをどんどん出してもらって、後ろに繋いでいく"という気持ちでやってもらいたいです」
期待の新戦力
――今季、目覚ましい活躍を遂げて初選出された投手の起用法は、どのようにお考えでしょうか?
「平良海馬投手(西武)に関しては、現在所属チームで抑えの役割も担っておいますし、終盤3イニングはすごく難しくて重要な役割だと思っていますから、そういうところを考えていきたいです。伊藤大海投手(日本ハム)もチームでは先発を任されていますが、大学日本代表の際は抑えの経験をしています。ですので、幅広い起用ができることを重要視いたしました」
――青柳晃洋投手(阪神)に関してはいかがでしょうか?国際大会でこれまで活躍の多い変則投手です。
「青柳投手を見ていると、他のチームがどれだけ対策しても、ゴロばかりなんです。それならば、初見の海外選手たちはより対応しづらいのかなと感じています。プレミア12ではアンダースローの高橋礼投手(ソフトバンク)に先発もやってもらったり、決勝の韓国戦では2回から2イニングを投げてもらったりしました。こうした特殊な投げ方や球質は有効的だと思うので、彼の起用法は非常に大事にしなければならないと感じています」
――2019年3月以来2回目の選出となった最年少・村上宗隆選手(ヤクルト)に対する期待はいかがでしょうか?
「村上選手は球団でも先頭に立ってプレーしていますし、投手に声をかける姿も多く見かけます。また、打席に立った顔つきなど、この若さに風格がすごく出てきたと感じます。彼は打つだけでなく、守りや足も良いものを持っていますので、あらゆる面で期待したい選手の一人です」
――選手では唯一のオリンピック経験者(2008年北京大会代表)である田中将大投手に対する期待はいかがですか?
「MLBで戦ってきた彼の経験は替えがたいものがあります。どんどん若い選手が田中選手とコミュニケーション取って欲しいと思います。2009年の第2回WBCの時にはイチロー選手が、ウォーミングアップからあらゆる面で先頭に立って取り組む姿を見せたので、我々はたくさん学ぶところがありました。それだけに今回は、田中投手に先頭に立って欲しいという思いがあります」
――19日からの直前合宿では、どういったところに重点を置いていきたいですか?
「日本代表には日本代表のルールがあるので、その確認をしっかりとしていきたいです。例えばバントの時に、"バットに当たったら走者はスタート"なのか?"地面にバウンドした時点でランナーがスタート"なのか?など、チームによって違います。こうした細かいルールやサイン、牽制のタイミングを詰めていきます。2試合の強化試合(24日楽天戦、25日巨人戦)も組んでいただけましたから、そこで様々なことを確認して、試合に入っていける準備をしていきます」
後編へつづく