第2回大会は数々の激闘を経て初優勝 その後の東京オリンピックやWBC制覇にも繋がる「世界一奪還」
2024年11月13日
11月13日に開幕する「ラグザス presents 第3回WBSCプレミア12」。過去2大会でも様々な激闘が繰り広げられたが、今回は2019年に行われ世界一に輝いた第2回大会を振り返る。※()カッコ内は当時の所属
鈴木誠也が3試合で9打点
「やっている時は負けるとは思っていないですが、振り返ると“よく勝ったな”という試合がいくつもありました」
第2回大会で内野守備・走塁コーチを務めた井端弘和監督がそう振り返るように、初戦から苦戦を強いられるなど激闘の連続だった。
4チーム中2チームがスーパーラウンドに進める中、オープニングラウンドグループBの舞台となった台湾で、開幕戦のベネズエラ戦でさっそく苦戦を強いられた。6回表に逆転を許すと、その裏と7回裏の攻撃は走者を出しながらも、ベネズエラの細かい継投の前に得点が奪えず、重苦しい空気が立ち込めた。
それを救ったのが追加招集となった新人の甲斐野央(ソフトバンク)だ。8回にマウンドに上がると初球から154キロのストレートを投じるなど強気の投球。2人の打者をともに外野フライに抑えると、最後は140キロの高速フォークで空振り三振。チームに再び活気をもたらした。
するとその裏、相手投手陣の制球が定まらなくなり四球を連発。押し出し四球や菊池涼介(広島)の同点打、鈴木誠也(広島)の犠牲フライなど6点を挙げて逆転。最終回は山﨑康晃(DeNA)が3人で危なげなく締めて初戦を制した。
続くプエルトリコ戦はプロ2年目のアンダースロー右腕・高橋礼(ソフトバンク)の6回1安打の好投や鈴木の3ラン本塁打などで4対0と快勝。最終戦のチャイニーズ・タイペイ戦でも鈴木が2試合連続本塁打を放つなど4打点を挙げ、投手陣も細かい継投で8対1と大勝し無敗でスーパーラウンドに進んだ。
MLB有望株たちも多く出場
スーパーラウンドは全4試合が2点差以内という接戦の連続だった。ZOZOマリンスタジアムで行われたオーストラリア戦は、3回表に先発の山口俊(巨人)が先制を許すと、4回表にも2点目を失った。反撃したい侍ジャパンは4回裏に4番・鈴木がレフトスタンドに飛び込む3試合連続本塁打を放って1点差に詰め寄ったが、その後は細かい継投の前になかなか同点とすることはできず。
その状況を打破したのは機動力と小技だ。7回裏に吉田正尚(オリックス)が追い込まれてからのチェンジアップを上手くセンター前に運んで出塁すると、稲葉篤紀監督は代走にこの年から支配下選手になったばかりの周東佑京(ソフトバンク)を起用。足のスペシャリストとして稲葉監督に抜てきされた周東はすかさず二塁盗塁を決めると、2死になってからは「狙っていました」という三塁盗塁を見事に決めた。
このチャンスで源田壮亮(西武)は、自らの判断でセーフティーバントを敢行。投手の前に転がり、周東は「ビックリしました」と驚きながらも懸命に走り、投手のタッチをかいくぐり、同点の生還を果たした(記録は投手の野選)。さらに8回は、甲斐野央(ソフトバンク)が三者凡退であっさりと片づけると、裏の攻撃で浅村栄斗(楽天)が押し出し四球を選んで勝ち越し。最終回は山﨑康晃(DeNA)が、この日も3人で試合締めた。
第2戦以降は東京ドームに戦いの場を移した。
第2戦となったアメリカ戦はMLBでの活躍が期待される有望株や、メジャー経験もあるベテラン選手を融合させたアメリカに苦戦。タイプの異なる投手による継投や力強い打線の前に3対4で敗れて今大会初黒星を喫した。
なお、この試合に出場していたアレク・ボーム、ジェイコブ・クローネンワース、アレント・ルッカーの3人の野手は既にMLBのオールスタープレーヤーになっており、第3回大会でも野手を中心に有望株が揃っていて脅威となりそうだ。
前日に黒星を喫し、なおかつ大会無敗だったメキシコとの第3戦は絶対に負けられない試合となったが、鈴木、近藤健介(日本ハム)、坂本勇人(巨人)のタイムリーで奪った3点を、今永昇太ら投手陣の1安打完封リレーで守った。
その後の試合結果によりスーパーラウンド最終戦は、ともに決勝進出を決めた韓国との前哨戦になったが、10対8で打ち勝ち、スーパーラウンドも首位で通過した。
迎えた決勝戦も緊迫した試合展開となった。先発マウンドに上がった山口が韓国2番のキム・ハソンに2ラン、5番のキム・ヒョンスにソロ本塁打を浴びて、いきなり3点を失った。だが侍ジャパンもその裏に4番の鈴木誠也(広島)がレフトフェンス直撃のタイムリーを放って1点を返し、2回には、山田哲人(ヤクルト)が韓国先発のヤン・ヒョンジュンの甘く入ったストレートを見逃さずレフトスタンドへ運び、これが逆転の3ラン本塁打に。スーパーラウンド途中まで不振に苦しんでいただけに、三塁を回ったところで思わずガッツポーズも飛び出した。
投手陣も2回と3回は高橋、4回と5回は田口麗斗(巨人)、6回は中川皓太(巨人)、7回は甲斐野と若手投手陣が躍動。韓国守備陣の好守もあり、なかなか追加点が奪えない中ではあったが、7回に浅村が貴重な追加点となるライト前タイムリーを放ち、点差を2点に広げた。
このリードを8回は山本由伸(オリックス)、9回は山﨑がともに三者凡退に抑えて試合終了。
2回目となる大会で初優勝、トップカテゴリーの世界大会として2009年のWBC以来10年ぶりの優勝に輝いた。ここから2021年の東京オリンピック金メダル、2023年のWBC優勝、2024年のアジアプロ野球チャンピオンシップ優勝と続いているだけに、この大会の「世界一奪還」はその後においても大きな意義をもたらすものだった。
ラグザス presents 第3回WBSCプレミア12
試合日程
オープニングラウンド(グループB)
2024年11月13日(水)19:00 日本 9 - 3 オーストラリア
2024年11月15日(金)19:00 日本 - 韓国
2024年11月16日(土)19:00 チャイニーズ・タイペイ - 日本
2024年11月17日(日)19:00 日本 - キューバ
2024年11月18日(月)19:00 ドミニカ共和国 - 日本
スーパーラウンド
2024年11月21日(木)~ 2024年11月23日(土)
決勝・3位決定戦
2024年11月24日(日)
開催球場
オープニングラウンド(グループB)
バンテリンドーム ナゴヤ、台北ドーム、天母スタジアム
スーパーラウンド・決勝・3位決定戦
東京ドーム
出場チーム
グループA
メキシコ、アメリカ、ベネズエラ、オランダ、パナマ、プエルトリコ
グループB
日本、韓国、チャイニーズ・タイペイ、キューバ、ドミニカ共和国、オーストラリア