序盤に突き放しチャイニーズ・タイペイにコールド勝ち!開幕から4戦全勝で決勝戦へ
2017年10月7日
侍ジャパン社会人代表、チャイニーズ・タイペイがともに前日までの対戦で決勝進出を決めており、このスーパーラウンド第2戦は、言わば消化試合である。しかも、翌日の決勝と同じ相手と戦うために、下手な試合はできないのだが、かと言って選手の状態や戦術を相手に把握させたくもない。すでに監督同士の駆け引きが始まっているような難しい試合に、国際大会で初采配の石井章夫監督がどう臨むのかが注目された。
実は、この大会システムで日本にとっては苦い経験がある。2014年の21Uワールドカップで、日本とチャイニーズ・タイペイは一次ラウンドを全勝で突破。スーパーラウンドでも連勝し、最終戦を前にともに決勝進出を決めた。そして、最終戦の直接対決で日本は6対2でチャイニーズ・タイペイに快勝したのだが、翌日の決勝ではチャイニーズ・タイペイの先発・郭俊麟(現・埼玉西武)に抑えられ、投手陣は9失点して0対9の完敗。この時もチームを率いていたチャャイニーズ・タイペイの郭李建夫監督は「日本戦を分析し、前日の直接対決で私自身が日本チームの姿を把握できた。大会のシステムを上手く活用できたのも勝因だ」と語っていた。
さて、郭李監督はどんな手を打ってくるのかとスタメン表を見ると、両チームともほぼベストメンバーの“ガチンコ”だ。ポイントは、昨年のアジア・ウインターリーグで11試合に登板した呉俊杰(ウー・チュンチー=開南大)に対して、どんな攻撃ができるかだろう。







侍ジャパン社会人代表は、2試合目の先発となった阿部良亮(日本通運)が1回表を3者凡退に抑えると、その裏に猛攻を見せる。先頭の田中俊太(日立製作所)が初球を左前に弾き返し、二番の北村祥治(トヨタ自動車)はバントの構えを見せるものの、田中もスタートを切る姿勢でバッテリーを揺さぶる。クイック気味のフォームで制球を乱した呉俊杰は、2つの四球を与えて一死満塁となる。このチャンスに五番の菅野剛士(日立製作所)が右中間を割る三塁打で走者を一掃。3点を先制した侍ジャパン社会人代表は、このあとも神里和毅(日本生命)と木南 了(日本通運)のタイムリーで2点を追加する。
一方、阿部はストレートの最速が130キロ台後半でも、変化球を交えながら左右のコーナーに散らし、打ち気に逸るチャイニーズ・タイペイの打線を手玉に取る。2回にも菅野の2点タイムリーと大城卓三(NTT西日本)の二塁打で3点、続く3回には北村の二塁打で1点を加え、意外にも序盤の3回を終えて9対0と大量リードを奪った。
「チャイニーズ・タイペイはアマチュア選手を国際大会で徹底強化しているし、何よりホームのファンの大声援がある。その勢いを止めようとしても難しいので、日本のいい部分を少しでも出せるように戦えれば。若い選手が多いので、勝っても負けても貴重な経験になるのだから」
そう語る石井監督は、チャイニーズ・タイペイの戦力を分析しつつも、選考合宿の時点から“自分の持ち味を出し切ること”を選手たちに訴え、現地入りしてからもコンディションや起用法を含め、選手がプレーしやすい環境作りに腐心している。いい意味で、相手を見るよりも自分たちがやるべきことをやり遂げる意識を徹底させ、想像以上にのびのびとプレーしているのが好結果につながっている。
敢えてこの試合で見えた課題を挙げるなら、2回途中から登板した二番手・呉承諭(ウー・チェンユー=開南大)のパワー・ピッチングに対して、突っかかり気味の打撃で中盤を無得点に抑えられたことか。140キロ台中盤を超えるストレートを力任せに打ち返そうとすれば、相手の術中にはまってしまう。ただ、それも得点差を考えれば仕方ないとも思えるが……。
8回裏に死球と安打で一死一、二塁とし、藤岡裕大(トヨタ自動車)の右前安打で10点目。コールド勝ちは出来過ぎと、勝って兜の緒を締めたい。そして、これまでと変わらぬスタメンで臨むであろう8日の決勝では、どんな攻撃を見せてくれるだろう。そう、先発投手だけは、互いにこれまで隠し続け、大会初登板となるサウスポーなのか。10月26日のドラフト会議で、1位指名が濃厚と評される田嶋大樹(JR東日本)。前回(2015年)のアジア選手権でも侍ジャパン社会人代表の前に立ちはだかった呂彦青(ルー・イェンチン=国立台湾体育運動大)。21歳のエースが、世代ナンバーワンの座をかけて投げ合うか楽しみにしたい。