9月3日に宮崎で開幕する「第12回 BFA U18アジア選手権」に出場する侍ジャパンU-18代表が8月30日、メーン会場となるKIRISHIMAサンマリンスタジアム宮崎のグラウンド状況を確認した。
チームが結成されて6日目。疲労はピークに達しており、当初は「完全休養日」に設定されていた。この日はフェンス際、内野天然芝の芝生、内野の土の具合などをチェックして、約30分で球場を切り上げる予定だった。ユニフォームも着用しておらず、ジャージー姿のまま。しかし、グラウンドに足を踏み入れると、野球人の血が騒いだようだ。
平川敦投手コーチから「ピッチャー陣が軽く走りたい」との要望を永田裕治監督が受けると、次に中川卓也主将から「ロングティーをして良いですか?」との声が出た。選手たちの前向きな姿勢に対して、指揮官は制止することはできない。結局、投手陣はキャッチボール、内野陣はノック、そして、ティー打撃の後、本塁付近では緩いボールを打ち返すフリー打撃まで行っている。
選手の動き見守った永田監督は驚きの表情を見せながらも、自覚の高さを再確認していた。
「あまり、長くなっても……。最後はこちらでストップをかけましたが、予定の4倍……2時間してしまいました。実は昨日の時点で『練習したい!!』という話もあったんです」
しかし、この想定外の動きに、2つの思わぬ副産物があった。まずは、東京合宿5日間は別メニュー調整を続けていた吉田輝星の状態が上がってきたことにある。25日の集合日はノースロー、26日は約15メートルのキャッチボール、27日は60メートルまで距離を延ばし、本人の直訴によりブルペン入りして約30球。そして大学日本代表との壮行試合前(28日)には捕手を立たせたまま20球、そして、29日も捕手を座らせて30球を投げ込んだ。3日連続のブルペン入りは、すべて室内練習場での投球。この日は屋外で力強いキャッチボールを披露し、変化球も交えて、最後は実戦の投球をイメージし、回転の良い、力強いストレートを投げ込んでいた。
「徐々に良くなってきている。計画通り。理学療法士と相談しながらきました。本人は『やりたい』『やりたい』だから、抑えながらここまできた。『行けるか?』と聞けば『行けます』としか言わないことは分かっている。念には念を入れました。つぶしたらアカンですから」(永田監督)
明日は大会前最後の実戦(対宮崎県高校選抜)との壮行試合を控えているが、永田監督は「帰って決めます。状況を見て。良い方向には考えますが、あくまで様子を見て。仮に投げたとしても1イニング」と慎重な姿勢を崩さず、登板は明言しなかった。吉田は「甲子園のときよりも状態は良い。久しぶりにマウンドに上がり、投げたくなってきた。自分はいつでもいける気持ち。任されたイニングを抑えたい」と前向きに語っている。
野手陣では藤原恭大のコンディションが上がってきた。対外試合3試合で計3安打と、まだ本来の当たりが出ていない。フリー打撃では、緩いボールを引きつけて、フルスイングし、右越えへの柵越えを連発。約30分間、打ち込み、気持ちの良い汗をかいていた。想定外となった〝練習の流れ〟は打撃練習の先陣を切った藤原が作ったと言ってもよかった。永田監督も「今日は良いスイングをしていた」と納得した様子。
「リラックスできるのは、今日くらい」(永田監督)と、練習後はグラウンドで記念撮影。選手たちは緊張から解き放たれ、高校生らしい表情を見せていた。束の間のオフを経て、明日はいよいよ総仕上げ。永田監督は壮行試合へ向けて「(過去3試合とは)違った形になる。まだ、試したいことがある。試合が終わった後に説明しますよ」と不敵な笑みを浮かべた。4試合の練習試合をフル活用し、ベストの布陣を決めていく方針だ。
「今日の昼以降ですか?ゆっくりしてもらいたいところですが、すでに選手からは『(ある)スポーツをやりたいです!!』との話もありました。彼らは本当、元気です」
永田監督は笑顔でサンマリンスタジアムを引き揚げたが、宿舎に戻れば、アジア選手権連覇へ向け、さまざまなシミュレーションを練っていく。チーム結成初日、選手たちに合言葉として伝えた「何があっても、驚かない」ための準備を、指揮官は自ら実践している。
第12回 BFA U18アジア選手権
大会期間
2018年9月3日~9月10日
グループA
9月3日(月)18:00 日本 26 - 0 香港
9月4日(火)18:00 スリランカ 0 - 15 日本
9月5日(水)18:00 日本 1 - 3 韓国
スーパーラウンド
9月7日(金)18:00 チャイニーズ・タイペイ 3 - 1 日本
9月8日(土)18:00 日本 (中止) 中国
3位決定戦
9月10日(月)13:00 日本 14 - 1 中国
開催地
日本(宮崎)
出場する国と地域
グループA
日本、香港、韓国、スリランカ
グループB
中国、チャイニーズ・タイペイ、パキスタン、インドネシア