8月4日、19時から横浜スタジアムで東京オリンピックの野球競技準決勝が行われ、日本は韓国と対戦。戦前の予想通りの接戦となったが、この日も終盤の強さを見せた日本が5対2と競り勝ち、1996年アトランタオリンピック以来の決勝進出を決めた。
日本の先発マウンドを任されたのは、ドミニカ共和国との開幕戦で6回無失点の好投を見せた山本由伸(オリックス)。1回と2回は走者を出しながらも後続を冷静に抑えると、3回は三者凡退に抑えて、打線に良いリズムを呼び込む。
直後の攻撃で村上宗隆(ヤクルト)と甲斐拓也(ソフトバンク)の連打、山田哲人(ヤクルト)の犠打で一死二、三塁のチャンスを作ると、坂本勇人(巨人)の犠牲フライで先制に成功する。さらに5回には、山田の二塁打と吉田正尚(オリックス)のセンター前安打で追加点を奪った。
しかし6回、先頭のパク・ヘミンのレフト前安打を左翼手の近藤健介(日本ハム)がファンブルし二塁に進まれると、今季の韓国リーグで首位打者を走るカン・ベクホにレフト前にタイムリーを打たれ1点を返される。その後、山本はイ・ジョンフにもライト前に運ばれるが、4番のヤン・ウィジから空振り三振を奪ったところで降板。後を託された岩崎優(阪神)はキム・ヒョンスに同点タイムリーこそ許したものの、後続の打者から連続三振を奪ってピンチを脱した。
直後の攻撃ではチャンスで山田が三振を喫して勝ち越しできなかったが、嫌な流れを見事に断ち切ったのが伊藤大海(日本ハム)だ。「打線に良い流れを与えようという気持ちでした」という言葉通り、7回・8回ともに走者こそ出すものの動じずに腕を思いきり振って、後続を抑えた。
すると8回裏、柳田悠岐(ソフトバンク)のレフト前安打と2四球で二死満塁のチャンスを作ると打席には山田。「6回に三振をしてしまったので、8回はやり返そうという気持ちでした」と雪辱の思いで立った打席で、初球のストレートを振り抜くと打球は左中間フェンスに直撃。走者一掃となるタイムリー二塁打となり、3点を勝ち越した。
このリードをチーム唯一の4試合連続登板となった栗林良吏(広島)が無失点に抑えて試合終了。プロ選手の参加が解禁された2000年のシドニー大会以降、オリンピックでは4連敗していた宿敵・韓国をついに破り、決勝に駒を進めた。
決勝戦は8月7日19時から横浜スタジアムで行われ、対戦相手は敗者復活を勝ち上がってくるアメリカもしくは韓国との再戦となる。稲葉篤紀監督が常に語ってきた「オリンピックの借りはオリンピックで返したい」という思いや、1984年のロサンゼルス大会以来の2回目かつプロ選手参加解禁後初となる金メダル獲得という日本野球界の悲願が叶うまで、ついに「あと1勝」となった。
監督・選手コメント
稲葉篤紀監督
「とにかく選手がこの試合の重要性を分かって、粘り強く戦ってくれました。今日の相手投手では連打にはならないなという感じがしたので、しっかり犠打で送るところは送っていきました。こうした自己犠牲や、次に繋げようとみんなが取り組んでくれたことが勝利に繋がりました。今日の勝利は非常に大きなものですが、決勝戦に向けてもう一度結束して戦いたいです」
山田哲人(ヤクルト)
「(先制点に繋がる犠打について)代表に招集された時から“バントはある”と聞いていたので強化合宿中から練習していました。緊張しましたが気持ちで決めました。(決勝打について)1球目から振っていこうと準備していたので迷いなく振れました。メチャクチャ緊張しますが、この舞台に立てることは幸せ。感謝の気持ちでいっぱいです。バットも振れていて体のキレも良いのでこの状態を維持して決勝に臨みたいです」
山本由伸(オリックス)
「先制してもらった後に追いつかれてしまいましたが、勝ちきれて良かったです。(2回表の前にマウンドを整備してもらったのは)プレート側が盛り上がってしまっていたのと、踏み込んだ足が滑りやすいコンディションになっていたので、なんとか改善してもらおうとお願いしました」
伊藤大海(日本ハム)
「1球目から思いきって自分のボールを投げることができました。“ここで抑えたら嬉しいだろうな”と腹くくっていくしかないと思っています。日本を代表してマウンドに上がるのは誇らしいことですし、投げたくてウズウズしているので、(決勝戦も登板があれば)思いきって投げます」
吉田正尚(オリックス)
「(先制タイムリーについて)打った球はシンカーです。(山本)由伸が頑張っていて、1点でも多く取りたかったので、良かったです」
岩崎優(阪神)
「0点で抑えるために任された場面だったので同点打を打たれたのは悔しいですが、その後は抑えられて良かったです」