11月29日まで愛媛県松山市と今治市で行われた「第11回 BFA U12アジア野球選手権」はチャイニーズ・タイペイが2大会連続8回目の優勝を果たし、韓国が準優勝。両チームにスーパーラウンドで敗れた侍ジャパンU-12代表は3位決定戦で中国を破り大会を終えた。2016年の第9回大会以来2回目の栄冠は掴めなかったが、選手たちは活動期間を通して様々なものを得た。
仁志敏久監督は毎晩ミーティングを実施。選手としてだけではなく、1人の人間として成長に欠かせないことを伝え続けた。
オープニングラウンドは3試合で47得点無失点と他チームを圧倒したが、グラウンド内外で気の緩みが目立ち、オープニングラウンドを終えた25日のミーティングでもその部分に時間が割かれた。
「やってはいけないことが分かっているのに、誰かが始めると2人、3人と増えていってしまう」「悪いことを始める1人目やそれに続く2人目にならず、良いことをする1人目、続く2人目になっていこう」と仁志監督は伝えた。加えて、2014年から2019年までもU-12代表を率いていた経験も踏まえ「今も高いレベルで続けている選手は周りに流されずにやっていける選手だったよ」「今ちゃんとしていないと2、3年後もこのままだよ。今から良い大人を目指していこう」と助言した。
これを受けて、選手たちは26日の予備日に選手たちのみでミーティングを実施。27日からのスーパーラウンドに臨んだ。
迎えた初戦の韓国戦は0対2と敗れたが、韓国戦後に野下卓泰コーチが「とても成長したと思います」と称えたように、選手たちの集中力は格段に上がった。相手の好投手の力強いストレートや国内の試合では禁止されていて慣れない変化球にも必死でくらいつき、守備でも投手を中心に粘り強く守る好ゲームを展開。走塁や守備でのミスが響いて敗れたが、江尻慎太郎投手コーチも「今までやってきたことが結果に繋がっていました」と称えた。その上で「悔しい思いをした時に、切り替えて笑おうではなく、次に取り返すしかないと思うことが切り替えるということだと思います」と伝えた。
また、仁志敏久監督も熱を込めてミスについての捉え方を話した。
「この悔しさを絶対に忘れちゃいけない。ミスはみんなで共有して反省すると次のレベルに上がっていける。次に生かせれば、ミスは“経験”という言葉に変わるよ」
それが体現されたのが、スーパーラウンド第2戦のチャイニーズ・タイペイ戦だ。被安打や四球、失策で5回まで走者を毎回出すも、何度も好プレーが生まれ堅守で先制を防いだ。ミスをしっかりと生かす姿勢がチーム全体にあり、ミスをした選手も次のプレーで臆することなく躍動した。
延長タイブレークの末に0対1で敗れ決勝進出を逃したものの、堂々とした試合展開を見せた。そして最終戦となった3位決定戦の中国戦でも、選手たちで「最後までしっかりと戦い抜く」ということを決め、最後まで集中力高く戦って10対0の5回コールド勝ちで大会を締めくくった。
その日の夜の最後のミーティングでは監督・コーチから、小学6年生にして侍ジャパンを経験した選手たちにエールや今後大切になることが伝えられた(以下、抜粋)。
「この活動を通して学んだことを今夜のうちにノートに書き出してみましょう。人は忘れてしまうものなので、迷った時や立ち止まった時に振り返ることができるようにしましょう。一期一会、出会いを大切にして、幸運を大切にして、良い習慣をつけて良い人と出会いながら人生がすごく豊かになってくれたら嬉しいです」(野下コーチ)
「侍ジャパンに選ばれたということは、“こいつに勝ちたい”と思う選手がたくさん誕生した瞬間です。“昔はすごかったけど”とか言われて苦しむこともあるかもしれないけど、負けないで欲しい。侍ジャパンの価値を変なプライドではなく、武器にして野球を続けていって欲しいです」(江尻コーチ)
「これからみんなは、周りの見る目が変わっている。“あいつ、侍ジャパンだったらしいよ”と見られて野球をするようになります。有名になればなるほど応援する人だけでなく批判する人もたくさん増えます。批判ばかり聞くと病気になってしまうし、称賛ばかり聞くと(舞い上がって)伸びません。だから、どちらも半分だけ聞いて、現実をしっかり受け止めて、自分をしっかりコントロールしていきましょう」(仁志監督)
小学6年生にして、貴重な国際大会の経験を積んだ選手たちは、同時に重荷となることもあるだろうが、この経験を生かし、チームメイトや周囲を牽引するような存在になっていくことを願いたい。今大会の真の成果は、今後の長い人生において表れていくことだ。
選手コメント
石﨑悠士郎(本郷北学童野球クラブ)
※最優秀防御率、ベストナイン(投手)
「獲れるとは思っていなかった個人賞を2つも獲ることができて良かったです。野球の技術だけでなく、人としての振る舞い方とか日本代表としての振る舞い方を監督やコーチの方から学びました。ここで侍ジャパンの活動は終わりますが、経験したことを忘れずに、人に見られている意識を常に持って生きていきたいです」
漆崎一輝(ドラゴン中藤スポーツ少年団)
※ベストナイン(一塁手)
「嬉しいです。バッティングの調子が悪くても、フォアボールなどで出塁することもできたので、チームに貢献できて良かったです。この活動を通して野球への取り組む姿勢が変わりました。前までの自分だったら3位決定戦は気持ちが入らずに戦っていたと思うのですが、ミーティングなどを通して気持ちの入れ方を変えることができました。U-15、U-18そしてプロ野球選手になれるように頑張っていきたいです」
第11回 BFA U12アジア野球選手権
大会期間
2024年11月23日~11月29日
オープニングラウンド(グループA)
11月23日(土)10:30 日本 16 - 0 中国
11月24日(日)14:00 フィリピン 0 - 9 日本
11月25日(月)14:00 日本 22 - 0 インド
スーパーラウンド
11月27日(水)14:00 韓国 2 - 0 日本
11月28日(木)15:00 日本 0 - 1 チャイニーズ・タイペイ
3位決定戦
11月29日(金)12:00 日本 10 - 0 中国
開催地
日本(松山・今治)
出場する国と地域
グループA
日本、中国、フィリピン、インド
グループB
チャイニーズ・タイペイ、韓国、香港、タイ