来年3月に行われる「2026 WORLD BASEBALL CLASSIC™」(以下、WBC)を見据えて行われた「侍ジャパン宮崎秋季キャンプ2025」(11月6日から12日)と「ラグザス 侍ジャパンシリーズ2025 日本 vs 韓国」(15日、16日)。
WBCで導入される新ルールへの「適応」とWBCの代表選考に向けた「競争」という2つの大きなテーマのもとで貴重な時間を過ごした。

今回の期間ではNPBでは導入されていないが、MLBでは導入されWBCでも導入される新ルールへの適応に多くの時間と意識が向けられた。
守備では、ピッチコム(サインの伝達機器)とピッチクロック(投手は球を受け取ってから走者無しの場合は15秒、有りの場合は18秒以内に投球を始めなければいけない。打者は残り8秒になるまでに打撃姿勢を完了しなければいけない)、牽制球の制限(各打者に対して2回までは可、3回目にアウトにできなかった際はボーク)といったところが主だった。
ピッチコムに関しては、どの捕手も自在に使いこなして大きな問題は見当たらず、投手も当初はいつもより早くサインを知るため早くセットに入りすぎるところもあったが、実戦を重ねて問題は無くなった。ピッチクロックについては複数の投手が「(目に見えてカウントダウンされるので)急かされているように感じる」とは話してはいたものの、違反は2試合通じて平良海馬(西武)の1回のみで、その際も試している要素も強かった。
また、捕手は投手がプレート付近に戻ってから返球してクロックの始動が早くならないように工夫。引き続き、投げ急ぎには注意が必要だが「(ピッチコムとピッチクロックへの対応が)全然ダメだという投手はいませんでした」と吉見一起投手コーチも振り返る。
実戦をすることで実感することもあり第2戦で一、三塁からダブルスチールを決められたのは金丸夢斗(中日)が一塁へ一度牽制した後。カウントなどもあり「牽制したから走られたかどうかは分かりませんが」と吉見コーチは前置きしながらも「(牽制が2回までということもあり)1つ牽制すると行きやすくなると分かったことは良かったと思います」と前向きに捉えた。
第2戦はチーム全体で四死球9個が出たが、それは大会使用球やMLBの審判員が球審を務めた影響の方が大きく、そこへの適応は引き続き求められていく。
攻撃では9日のライブBPや初の実戦となった10日の広島戦では慌ただしく打席に向かう選手もいたが、韓国戦では早めに打席へ向かい、新たにルーティンを作っていた。KBO(韓国プロ野球)でピッチクロックが既に導入されている韓国の選手は、上手く1打席2回までのタイムを使って打席を外す打者もおり、井端弘和監督は「有効に使っていたので見習っていきたいです」と話した。
今回、新ルールに時間をかけることができたことで、来年の大会本番に向けては余計なことに気を惑わされることなく「対相手」に集中して向かっていくことができそうだ。

また「競争」の面でも各選手が代表入りに向けて持ち味を存分に発揮。そこまで数が多くない左腕、特に中継ぎや第2先発を任せる人材の部分では、第1戦でプロ2年目の曽谷龍平(オリックス)が3回完全投球を見せて猛アピール。今回の結果のみが選考に繋がるわけではないが、吉見コーチも「適任者を探す中で良いアピールをしてくれたと思います」と話した。今回の4人から3人に絞り込まれることが予想される捕手も、全員が新ルールに柔軟に対応し、全員が安打を放つなど、良い意味で選考に頭を悩ませそうな内容と結果を残した。
いよいよ4ヶ月を切ったWBC開幕までの日々。大会連覇を目指すため、今回出た収穫と課題を最大限に生かすべく、チーム作りや準備は大詰めを迎えていく。

























