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"世界の野球"日本人指導者の挑戦「世界ランキング26位 香港野球の実力」

2016年12月22日

文・写真=色川冬馬

 世界ランキング26位「香港野球の実力」(2016年現在)
 実はこの26位と言う順位、世界ランキングの指標だけで言えば、アジアにおいては日本、台湾、韓国、中国、そしてパキスタン(25位)に次いで6番目である。世界ランキングとは、過去4年間のWBSC主催または公認の大会の結果をポイントとして加算し数値化されたもの。また大会の大きさ等によっても加算ポイントは変わるようだ。各世代の大会も対象になり、トップチームだけでなく、U-23、U-18、U-15、U-12の結果も加算されていく。
 つまり、各世代において安定した結果を残し続ける事で、野球の世界ランキングの順位は上がっていく。2015年に私が率い、西アジアカップで2位に入り順位を上げたイラン代表ではあったが、世界ランキングが反映される期間で大会に参加していなかったため、前回の49位から後退し今回は52位となっている。アジア4強を除くアジア各国の現状は、イラン代表のように、トップチームを派遣するだけで精一杯なのが状況なのである。
 以上の要素を加味すると、トップチームの結果と世界ランキングは必ずしもイコールにはならないが、その国々の「野球国力の指標」といえば公平に表されていると私は思う。

 さて話は戻り、世界26位の香港野球の実力を見てみたい。トップチームは昨年、東アジア大会で準優勝したインドネシアを倒すもスリランカに敗れて3位になったが、優勝国フィリピンに対しても1-2と接戦で東の王者を最も苦しめた。それ以外にも、今年行われたU-18アジア選手権においても、アジア4強についで5位に入るなど、あと一歩及ばずの悔しい戦いをしてきている。

 この香港野球の強さは一体どこから来るのか、私は非常に興味があった。香港野球関係者と話し合いを続けてきて気づいたのは、香港棒球総会の持つ「組織力」だった。香港棒球総会は、毎月1回行われる定例会において物事の取り決めを行い、香港棒球総会のオフィスではスタッフが6人ほど常駐している。役員は15人からなり、それぞれが違う役職を持ち、責任を持って活動に当る。当たり前ではないかと思う方もいるかもしれないが、私はこれまでイラン、パキスタンを自分で目の当たりにし、その他にもアジア各国で指導に当たる日本人野球関係者から各協会の現状を見聞きしてきたが、これほどまで各役員の責任の所在を明確にし、定期的に責務に当たっている国は聞いた事がなかった。少なくとも、私が関わった国では、肩書きはあっても、結局事務局を取りまとめる人が全てに深く関わり、ほとんどの取り決めを主要幹部数名で行ってきていた。
 この現状が見えてくると、ランキング世界26位、アジア6位の意味がお分り頂けるのではないのだろうか。香港棒球総会が待つ組織力は、経済的に発展している地域である事と繋がっていると私は思う。いずれにしても、私は各国の指導に当たる時、まずは各国の強みを探し出すが、香港野球の持つ組織力は、野球の現場でも間違いなく強み(武器)になると確信した。現場の選手たちの話が薄れてしまったが、一国の野球が発展に向かう上で、現場を支える組織の存在はとても大切である。

 現在、香港代表を牽引する選手たちは、私より若い。この若さが世界へ羽ばたく時、この組織力は間違いなく武器になる。選手たちは当然のこと、香港野球界全体が、もっと自信を手に入れたら、間違いなく化ける逸材が揃っている。その未来の発展を支える基盤がある香港野球の組織力は、これからの時代を生き抜く武器になる。

著者プロフィール
色川冬馬(いろかわ とうま)
2015年2月にイスラマバード(パキスタン)で行われた西アジア野球選手権にイラン野球代表監督として、チームを2位へと導く。同大会後、パキスタン代表監督に就任。2015年9月に台湾で行われた「第27回 BFA アジア選手権」では、監督としてパキスタン代表を率いた。

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