文・写真=NPO法人日本アジア球友団ラリグラス(小林 洋平)
日本では先月、プロ野球開幕を前にしてMLBのロサンゼルス・ドジャースとシカゴ・カブスが来日して開幕戦などを行った。今回は、大谷翔平選手をはじめとして5名の日本人メジャーリーガーが凱旋するということもあり、連日多くのメディアでも報道され、在日ネパール人の間でも注目を集めた。
さて、前回のコラム(2025年2月19日付「スポーツの役割」)で述べたように、去る2月24日に大阪マラソン2025が開催され、ネパール野球ソフトボール協会(NBSA)の役員ら3名も来日して大会に出場した。実際に大阪の街を走ったディパック・ネウパネ会長らは、大阪マラソンの参加者の多さに驚き、老若男女が一斉にスタートし喜びに溢れながら走っている姿や沿道からの熱い声援に感銘を受けていた。また、自らがマラソンを体験したことにより、走ることは道具も使わず健康増進にもなると再確認し、スポーツ人口増加につなげるきっかけにもなるとの認識を示していた。ディパック・ネウパネ会長は「スポーツ人口の少ないネパールで野球普及活動を推進していくためには、まずはスポーツへの認知、興味、関心を深めていくことが大切だ。」とレース後に語った。
今回、ネパールから来日した人たちが大阪マラソンに出場したことにより、一部の在日外国人の間でマラソンへの関心が高まった。近年は在日ネパール人が増加しているが、昨年末現在23万3千人を超え、国別でブラジルを抜いて5位になった。大阪マラソンを支えている大会ボランティアの中にも在日ネパール人らの姿があり、彼らの中には日本に来てから野球を知った者も多く、今回、ネパール野球ソフトボール協会の役員らが日本滞在中に会った在日ネパール人の中にも子どもが日本で野球をしているという人もいた。そんな、在日外国人からは「日本人との交流が少なかったり、困った時に周りに頼る人がいなかったりして、日本人との間に壁を感じる。」といった声もよく聞く。同様に受け入れ側の日本人からも「ネパール人の文化がよく分からないし、相互理解のためにももっと交流が必要だと思う。」との声を耳にする。そんな中、来る4月26日と27日に大阪市のFURALI KYOBASHIで「第1回ネパールフェスティバル関西」が開催される。お互いに相手の国を知るところから始めると良いが、こういった催しもネパールの文化を体験する良い機会となるので、関心のある方は是非足を運んでみてはどうだろうか。




スポーツを通じた交流も相互理解のためのひとつの有効な手段と言えるが、去る3月2日に奈良県下市町で「第1回十手・下市町リレーマラソン2025」という市民参加のイベントが開催された。大会には奈良県の社会人硬式野球クラブチーム「NineForce(ナインフォース)」もステージ出演に参加したが、彼らはネパール野球の活動を一緒に進めているチームでもある。この大会では10km 、20km の距離をリレー形式で走るが、参加者の中にはベトナムから来日している者もいた。これもスポーツを通じた国際交流のひとつの例であろう。NineForce監督の藤森稔人氏は「NineForceは地域活性化や国際交流の活動を行っています。近年では在日外国人が増え、地域活性化においてもその存在は大きくなっているので彼らとの相互理解は重要です。これからも活動を継続し、様々な方々に貢献できるチームを構築してまいります。」と述べている。
ちなみに、この大会は吉本興業の奈良県住みます芸人「十手(じって)」のお二人が総合プロデュースしたマラソン大会である。十手の十田卓氏、エナジー西手氏はともにサブ3を達成していて私が尊敬するランナーである。私自身も上述の大阪マラソン2025に出場したが、大会前には彼らが主催する練習会にも参加し、走るコツなどを教わった。大阪マラソン2025の記録は3時間9分00秒で、前年の初マラソン(記録6時間)からは大幅に記録を短縮することはできたが、目標にしていたサブ3の達成はならなかった。しかしながら、何事も目標を持って取り組むことが大切であると改めて感じた。野球界では満塁本塁打をグランドスラムというが、私自身も新たな目標設定として市民ランナーのグランドスラム(フルマラソンサブ3、100kmマラソン10時間以内、富士登山競走の山頂コース4時間30分以内)の達成を目標として頑張っていくことにした。そして、いつかネパールのヒマラヤ山脈も走ってみたい。
今回、いくつかの活動について述べたが、日本と海外との架け橋になることを目標に、このような活動がそのきっかけ作りになればと考えている。いずれにせよ、大切なのはビジョンを持って目標を設定し、その方向に歩み続けていくということである。今後のネパール野球ソフトボール協会の挑戦に期待したい。
- 2025年4月14日「目標設定。ネパール野球ソフトボール協会、大阪を走る。」
- 2025年2月19日「スポーツの役割」
- 2024年11月25日「カラダを動かす楽しさを伝えよう!」
- 2024年9月2日「ネパール野球25周年日本ネパールスポーツ交流プログラム2024-2025」
- 2024年4月12日「学校スポーツ連盟との協定」
- 2024年1月15日「1st National Baseball5 Championship 2024」
- 2023年11月28日「目指せ!体験から広がる笑顔の輪」
- 2023年10月2日「福島県×ネパール シャクナゲ交流」
- 2023年8月30日「ネパール最古参選手」
- 2023年7月14日「ネパール野球ソフトボール協会の新体制発足」
- 2023年6月14日「在日ネパール人による野球体験会」
- 2023年3月27日「WORLD BASEBALL CLASSIC™ 2023」
- 2023年3月1日「ONE WORLD」
- 2022年12月28日「アジア野球連盟審判講習会」
- 2022年10月7日「在日ネパール人との連携」
- 2022年7月20日「第4回世界野球ソフトボール連盟総会」
- 2022年4月15日「主体的な活動」
- 2022年2月14日「ピンチはチャンス」
- 2021年12月22日「ネパール・ベースボール・フェスティバル」
- 2021年11月9日「行動」
- 2021年8月30日「世界への普及を目指して」
- 2021年7月15日「キャッチボールクラシックオンライン国際交流大会プレ大会2021」
- 2021年4月26日「原点に戻る」
- 2021年3月22日「協働」
- 2020年12月25日「迫られる変革」
- 2020年10月1日「WEB野球教室」
- 2020年7月20日「変わるもの、変わらないもの」
- 2020年5月14日「世界がひとつになって逆境を乗り越える」
- 2020年3月2日「ネパール観光年2020」
- 2019年12月25日「ワールドマスターズゲームズ2021関西」
- 2019年12月10日「第3回世界野球ソフトボール連盟総会」
- 2019年11月8日「ネパールへの直行便」
- 2019年9月19日「第14回BFA西アジア野球大会2019」
- 2019年7月2日「政府機関とのつながり」
- 2019年5月22日「第2回ネパール全国野球大会2019」
- 2019年5月4日「北海道ベースボールリーグ」
- 2019年4月15日「国際大会へ、ネパールを応援する人々」
- 2019年3月18日「侍ジャパンシリーズ2019 日本対メキシコ」
- 2019年3月1日「アジア野球連盟総会」
- 2019年2月13日「国際交流活動との出会い」
- 2019年1月9日「野球を通じた国際理解」
- 2018年11月5日「グラウンド開所式」
- 2018年10月26日「ネパールのソフトボール」
- 2018年9月5日「第28回世界少年野球大会」
- 2018年8月3日「楽天イーグルスとの対戦」
- 2018年7月31日「ネパールでのグラウンド建設」
- 2018年7月2日「東京オリンピックへの道のり」
- 2018年5月8日「PRESIDENTIAL CUP」
- 2018年4月16日「新たなネパール代表チームの選考」
- 2018年4月2日「日本の大学生との野球交流」
- 2018年2月5日「パキスタン野球連盟カワール・シャー会長を偲ぶ」
- 2017年12月27日「ネパール野球ソフトボール協会の奮闘」
- 2017年12月6日「ネパール野球ソフトボール協会の来日」
- 2017年11月29日「南アジア交流野球教室」
- 2017年10月31日「第2回世界野球ソフトボール連盟総会」
- 2017年10月10日「ネパール代表選手の日本での活動」
- 2017年9月22日「ネパール代表選手、ゼロロクブルズで学ぶ」
- 2017年8月21日「北海道での挑戦始まる」
- 2017年7月25日「スポーツ庁長官感謝状」
- 2017年6月23日「スポーツで広げる友好の輪」
- 2017年6月7日「北海道での挑戦」
- 2017年4月18日「第13回BFA西アジア野球大会2017 vol.2」
- 2017年4月4日「第13回BFA西アジア野球大会2017 vol.1」
- 2017年2月14日「世界最下位からの挑戦」
- 2017年2月9日「代表強化合宿」
- 2017年2月3日「ネパール人コーチの来日」
- 2017年1月10日「ネパール代表チーム」
- 2016年12月28日「もうひとつのWBC」
- 2016年12月16日「ネパールU15野球大会」
- 2016年11月25日「NHKの新番組『世界はTokyoをめざす』」
- 2016年10月7日「ネパール野球とオリンピック」
- 2016年10月4日「ネパールの雨季」
- 2016年8月22日「東北楽天イーグルスのネパール支援」
- 2016年6月13日「日本に住むネパール人への野球普及」
- 2016年5月19日「被災地の野球事務所に見た信念」
- 2016年5月2日「ネパール復興支援野球大会」
- 2016年4月4日「野球途上国 共通の課題」
- 2016年3月17日「ネパールから日本へ」
- 2016年3月14日「さらなる野球普及へ」
- 2016年2月10日【西アジアの野球ネパール編】〜野球普及への葛藤と模索〜
- 2016年2月9日【西アジアの野球ネパール編】〜野球を拡める課題と苦労〜
- 2016年2月2日「動き出した時間」
- 2016年1月7日「復興支援野球大会の延期」
- 2015年10月15日 「野球指導員、ネパールでの活動」
- 2015年8月21日 「ネパール野球の有望株」
- 2015年6月2日 「希望から絶望へ」
- 2015年4月20日 「ネパール野球の現状」
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