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"世界の野球"受け継がれるSri Lanka野球の物語~光り輝くスリランカ野球の夢~「スリランカ野球を支える人たち」

2017年9月13日

文・写真=八木 一弥

 日本の皆さんコホマダ(元気ですか)???
 今年もたくさんのドラマがあった全国高校野球選手権大会も地方大会から甲子園大会まで全日程が終了しました。私も時々チェックしながら、スリランカから興奮しっぱなしでした。また、世代別の世界大会も開催され世界中で子どもたちが大好きな野球に命を燃やしていますね。もちろんここスリランカの野球も、日本の暑さに負けないくらい熱々です!!
 ここまで、「スリランカ野球の歴史」「スリランカ野球の原点」のお話を書かせていただきました。今回は3回目「スリランカ野球を支える人たち」についてお伝えさせていただければなと思います。

 さて、前回の投稿で少し紹介させていただきましたが、6・7・8月を通して3つの大会が開催されました。まず、この写真は6月から7月にかけて行われたNational Baseball Leagueとその決勝トーナメントの様子です。5枚目は今回優勝したNavy(海軍)チーム、6枚目は準優勝のRanabima Royal Clubの写真です。
 今大会から、少しルール変更がなされ、ピッチャーに球数制限のルールが適用されました。それに伴い、各チームいろいろと作戦を立て、エースを温存したり野手がマウンドに上がったり、工夫がありとても面白い大会でした。惜しくも負けてしまったチームの選手と話していると「エースが7回まで行って、そこから2番手で逃げ切る作戦だったんだけどね、6回で交代になっちゃったね」と話してくれました。試合展開は8回まで1点差で勝っていて、打者が2巡目に入ったところでつかまり、逆転負け。ルールの変更で考える内容も増え、各チームがレベルアップしていきそうな予感がします。

 これは、6月の末に行われたU14の全国大会の様子です。全国からゴール県という南の街に集まり開催されました。この大会も少しルールが変わり塁間とマウンドまでの距離が伸びポニーリーグの規格になりました。もともと小さかったダイヤモンドの大きさを国際規格に統一し開催されました。最初は広い塁間に戸惑っていた子どもたちですが、練習である程度適応してきており、問題なくプレーしていました。

 優勝はWewala College。圧倒的なチームの完成度で、まさに圧巻でした。私は基本的にはいろいろなチームを巡回させていただきながら、コーチと練習について考えたり、少し技術指導をさせてもらったりという形で基本的にはスクールチームに関わらせていただいていますが、コーチがいない関係でメインのコーチとして一緒に野球を楽しんでいるチームがあります。
 私が赴任してきてから一緒に野球を始めた子たちで、約1年間一緒に野球をしています。その子たちも出場しましたが(様子は写真2・5枚目)、惜しくも18-17でサヨナラ負けと16-6のコールド負け、チーム初勝利とはいきませんでした。

 スリランカでは公式戦が各世代、年に一度しかないので、なかなか試合をする機会がありません。そのため、子どもたちは本当に嬉しそうに、そして気持ちを前面に出して戦っています。もちろん試合の勝ち負けも大切ですが、そこで友達が出来たり、なかなか他県に行く機会もないので初めての街に行ったり、そんな楽しみもありながら子どもたちは活動しています。

そしてもう1つ、8月中旬には大学の全国大会が開催されました。スリランカではスクールチームもかなり数が増え、盛り上がりを見せていますが、近年、大学のチームも増え、こちらもかなりの盛り上がりを見せています。

 これはその大会の様子です。大学では、スクール時代に野球をやっていた選手が中心に、チームを作っており、自立したチームという印象です。コーチがいるチームもあればコーチはおらず選手だけのチームもあります。日本の大学のようなイメージでしょうか。
 今大会はKelaniya大学が初優勝を果たしました。初出場のチームや、コーチ無しで勝ち上がってくるチームもあり、これからが楽しみだなと感じます。

 スリランカの大会はリーグ方式またはトーナメント方式で行われ、トーナメントもノックアウト方式(負ければ敗者のトーナメントに移行し2試合負けると敗退)で行われます。日本ではトーナメントの場合1度負ければ終わってしまいますが、スリランカでは2回負けるまでチャレンジすることができます。

 このようにスリランカ各地で世代別の大会が開催されています。大会に行くと、選手たちだけでなく、たくさんの指導者や審判、家族、サポーターの方々と出会い、話す機会があります。私が活動をさせていただく中で、この方々との時間というのは、本当に貴重だと感じています。
 基本的に指導者や審判たちはナショナルチームで一緒に活動している仲間であったり、どこかのチームで野球をやっていて、野球が好きで年下の選手たちに教えている大人の選手ということがほとんどで、仕事、ナショナルチームや自分のクラブ、コーチまたは審判というように一人で何役も掛け持ちしながら活動している人がたくさんいます。そのような彼らとスリランカ野球の夢や、願い、難しいことなど、何度も何度も話していく中で、同じように私もスリランカ野球の夢に思いをはせることができ、それがコンパスのように道を照らしてくれていると感じます。
 選手たちが大会に行くと必ずそこにはナショナルチームの選手やコーチが数人います。

 1枚目は、このチームの試合を見て話をしたくなったんだと、夜の宿舎まで足を運んでくれたナショナルチームの選手、2枚目は試合後にお願いしてナショナルチームの監督に話をしてもらった時の写真です。
 ナショナルチームの選手やコーチと話をすることで子どもたちに夢を持ってほしいという願いと、スリランカの未来を見据える指導者たちの思いをたくさんの子どもたちに届けたいと考え、このような機会を作ってもらいました。

 彼らの話の中にはいつも素敵なヒントが隠されています。
「僕らも最初は勝てなかったんだ。最初は20-0とかで負けてたんだ(笑)でも野球が好きでやめなかった。もうあれから15年くらいたったかな、今でも野球を好きでやってる。みんなのゴールはここじゃないんだ。大人になってナショナルチームの選手になって新しい時代を作っていくのは君たちだから。大好きな野球をずっと続けていってほしいんだ。大会に来れば会えるし、見かけたらいつでも話しかけてよ。野球について聞いてくれてもいい。できる限りサポートするから」

 彼らはそろって口にします。みんなのゴールはここじゃないよ。どうか大好きな野球を続けていってほしい、と。

 このように近い距離で自分たちのヒーローと話をできる機会は、日本では簡単には作れませんが、ナショナルチームの選手が中心になって野球を支えているこの国ならではのチャンスだと思っています。子どもたちが未来を見据えるヒーローたちの思いを聞き、大きな夢を描く。そんな関係こそがスリランカ野球の魅力の一つだと、私は感じています。

 日本で野球をし、育ってきた私が、スリランカで野球を通して人と関わる中で、日本で学んだことをそのまま伝えるのでは、やはり伝わりません。それは、この国が日本ではなくスリランカだからです。野球は鏡のようなスポーツ、スリランカの価値観、文化をそこに映しています。スリランカの方々とたくさん話をしてスリランカの文化や価値観を知り、なるほどと思うことが多いです。その話を私も一緒に聞かせてもらい、「あ、これってこういう風にこの国では伝えるんや」「この国ではここを大事にするから、そこに絡めて大切さを伝えてみるか」というたくさんの発見をさせていただき学ばせていただいています。
 少し余談ですが、スリランカで生活を送っていると、日本でもスリランカでも大切にしている内容は同じでも、その意味や根本にある考え方が違っている場合(違っている場合と現地の子たちに伝わりやすいように独自の解釈でスリランカ仕様に翻訳して彼らが伝えている場合)がたくさんあることに気づきます。当たり前かもしれませんが、私はスリランカで関わる全ての方々から、これを教わりました。だからこそ私もそこから学び、スリランカ翻訳を通して、子どもたちと道具を大切にしたり、時間を守ったりしていくことを考えながら活動しています。これはどこの国でも同じだと思いますが、そこに、同じ目線で飛び込んで、大切にしながら、一緒に歩んでいきたいと感じています。だからこそ、このような思いを持った人たちと一緒に、この国の野球と向き合っていけることに、幸せを感じながら活動させていただいています。

 さて、10月2日から第28回BFAアジア選手権が始まります。スリランカチームもメンバーの最終選考も大詰め、ナショナルチームの練習も少しずつ進み、いよいよというところです。

 組み合わせも決まり、大会初戦の相手は韓国。しっかり準備して、暑いスリランカの熱気そのままに戦いますので応援よろしくお願い致します。

 今回は第3回目「スリランカ野球を支える人たち」について書かせていただきました。ありがとうございました。次回もよろしくお願い致します。

著者プロフィール

八木 一弥
1993年12月1日生
愛媛県立丹原高校を卒業後、大分大学へ進学。
2016年10月よりスリランカ硬式・軟式野球連盟に青年海外協力隊の野球隊員として配属。「世界中に野球小僧を」モットーに、スリランカの人々に野球の楽しさを伝えいくことを目指している。主な活動は学校・クラブチームへ野球の普及活動、技術指導やナショナルチームの指導。好きな言葉は「野球小僧」。

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