11月9日、「侍ジャパンシリーズ2022」のオーストラリア戦の第1戦が札幌ドームで行われた。2019年のプレミア12でも3対2と辛勝するなど、近年も互角に近い内容で戦った相手に対し、侍ジャパンは岡本和真(巨人)や3試合連続で4番に座った村上宗隆(ヤクルト)らが活躍し、8対1でオーストラリアに大勝した。
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先制したのはオーストラリアだった。先発の今永昇太(DeNA)は初回、2番のホワイトフィールドにレフト前安打を打たれると続くグレンディニングの当たりはライト前へ。ここで右翼手の佐藤輝明(阪神)は一塁走者のホワイトフィールドを刺そうとサードへ送球するも、やや難しいワンバウンドの送球になり三塁手の村上宗隆(ヤクルト)が後逸。さらに今永のカバーも間に合わず、一気に生還を許した(記録は佐藤の失策)。今永は降板後「自分がしっかりサードのバックアップに回れていなかったので、投球内容というより、そこのミスが印象に残っています」と反省を口にした。
それでも今永は後続を抑えて初回のピンチを脱すると、2回以降は持ち味を発揮。140キロ代後半のストレートで押す強気の投球で、4回を投げて7者連続を含む10三振を奪うなど、初回以外はオーストラリア打線を抑え込んだ。
打線は2回裏、4番の村上が先発した元デトロイト・タイガースのワーウィック・ソーポルドからファースト強襲安打を放って出塁すると、続く牧秀悟(DeNA)もライト前安打で続いて無死一、二塁のチャンスを作る。この後、森友哉(西武)は三振に倒れたものの、相手投手の暴投があり、1死二、三塁のチャンスを作ると、打席には7番・一塁手で先発の岡本。ここで「逆転のチャンスが回ってきたので、ゴロでも1点入るという気持ちで、引っ張らないように意識して打席に入りました」とチェンジアップをセンター前に運び、村上と牧が生還。一打で逆転に成功した。
5回は侍ジャパン初選出の戸郷翔征(巨人)が登板。1安打こそ許したものの、後続を冷静に抑えると、その裏に球場はこの日最高潮の盛り上がりを見せる。3番の山田哲人(ヤクルト)がライト前安打を放つと、続く村上がこの日も打った瞬間に分かる高い弾道の本塁打をライトスタンドに叩き込み、2点を追加した。これで村上はこのシリーズ3試合連続で合計4本塁打とした。
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戸郷は6回も落ち着いた投球を見せて、今度は三者凡退に抑えると、その裏は下位打線に火がつく。
6番から始まった攻撃で、森と岡本が連打でチャンスを作ると佐藤輝明(阪神)がセンターフェンス直撃のタイムリー二塁打を放って追加点。さらに9番の源田壮亮(西武)もライト前安打で続くと、1番に戻り近本光司(阪神)や山田にもタイムリーが飛び出して、この回一挙4点を挙げた。
このリードを、戸郷が8回までの4イニングを1安打無四球7奪三振に抑え、最終回は森浦大輔(広島)が1安打無四球2奪三振で締めた。
終わってみれば先発全員安打の12安打、投手陣も5安打19奪三振と圧巻の大勝だったが、試合後の栗山英樹監督に慢心は感じられず。WBCでも同組のオーストラリアについて「最初の2投手と最後の投手を繋げられたら嫌だなと思いましたし、打線も振れるので、これからオーストラリアの国内リーグが始まって調子が上がってきたら怖いなと感じました」と、警戒は一切緩めていなかった。
10日は18時半から再びオーストラリアと対戦。侍ジャパン年内最後の試合の先発を飾るのは、完全試合達成など今季鮮烈な活躍を見せている佐々木朗希(ロッテ)。また、WBCのメンバー入りに向けてのアピールができる最後の実戦機会なだけに、各選手の持ち味を生かした活躍に期待したい。
監督・選手コメント
栗山英樹監督
「今永と戸郷は“素晴らしいな”と楽しく見ていました。WBCの1次ラウンドは球数制限が65球なので64球で今永投手は代えました。戸郷はどこでもできると証明もしてくれましたね。岡本は点を取れないと焦る場面で上手く打ってくれました。(初対戦の相手に対して)各打者が振っていく中で感覚を掴んでくれていますし、かと言ってボール球にも手を出していませんね」
岡本和真(巨人)
「どの打順にいてもチャンスで回ってくることもあれば、チャンスメイクが必要な場面もあるので自分の仕事をしっかりやろうと思っています。僕も振って相手投手に合わせていくタイプなので振りにいくようにしています。村上選手は、普段は可愛い後輩ですが野球になると頼もしい存在でメチャクチャ勉強になります」
村上宗隆(ヤクルト)
「(5回の2ラン本塁打は)打った球種はチェンジアップ。球種を絞るというよりは来た球を打つ意識でした。2死一塁ということで長打を狙っていました。試合展開的にいいところで追加点を取ることができてよかったです」
今永昇太(DeNA)
「投球は、三振の数(4回10奪三振)ほど内容は良くなかったですが、捕手の森さんが“ボール先行の中でも、ローボールよりハイボールの方が良いと思う”というアドバイスをくれたので、2回以降は意識して投げました」
近本光司(阪神)
「(6回のタイムリーについて)日本にはいない背が高くて腕が長いピッチャー。楽しみながら打てました。球種はカーブでしたが、よく当たったなと思いました。誕生日にタイムリーが打ててよかったです。ホッとしています」
デービッド・ニルソン監督
「積極的に戦いましたが相手のコンディションがよかったです。5回まで持ち堪えたが、その後は圧倒されてしまいました。明日の佐々木投手との対戦はワンダフルなチャレンジになります」
スティーブン・ケント
「(2番手として登板し2回3分の1を無失点と好投したが)日本の打線は強力でした。パンデミックの影響で私たちはなかなか試合ができなかったので、外国のチームと対戦できて良かったです。国内リーグがこれから始まるので、コンディションを上げてWBCに向かっていきたいです」