侍ジャパントップチームの稲葉篤紀監督は2月5日、沖縄入り後最初のキャンプ視察地である北谷公園野球場(中日)、浦添市民球場(東京ヤクルト)を訪問した。
最初の視察地である中日のキャンプが行われている北谷公園野球場には、午前10時過ぎに到着。早速、球場入り口で森監督と固い握手を交わし、稲葉監督から昨年11月のアジアプロ野球チャンピオンシップへの又吉克樹、京田陽太の派遣に関する謝意と「引き続き3月の大会への協力をお願いします」という言葉が述べられた。
その後、足早にブルペンに移動。岩瀬仁紀、山井大介、ディロン・ジー、オネルキ・ガルシアら実績十分のベテランや期待の新外国人選手が一斉に熱のこもった投球を披露するなか、復活を期す背番号99番、松坂大輔の姿もあった。小雨が降り気温も低下する、2月の沖縄とは思えないあいにくのコンディションであったが、松坂は半袖のユニフォーム姿で登場し、ストレートを主体にチェンジアップを交えながら、約30分間気迫のこもった投げ込みを行った。傍らには杉下茂臨時コーチの姿もあり、時折、身振り手振りでアドバイスを送ったり、話し込む場面もあった。
引き続き室内練習場を訪れた稲葉監督は、2017年のWBCをコーチとして共に戦った、奈良原浩一軍内野守備走塁コーチと再会。奈良原コーチは、石川駿、石岡諒太、高橋周平、京田陽太らの若手内野手を相手におよそ20分間、連係プレーなどを確認しながらノックを行い、終了後にはお互いの近況を伝え合うなど、笑顔で挨拶を交わしていた。
また、グラウンドでは大野雄大、田島慎二、又吉克樹らがバッティングピッチャーを務める様子を視察。稲葉監督からは「こんな早い段階で打者相手に投げていますので仕上がりが非常に早いと感じました。引き続き見ていきたい3人です。」という感想が上がっていた。
約2時間半の視察を終えた稲葉監督は、報道陣から中日のキャンプの印象を問われ、「非常に若い選手が多く、ベテランもいて今年は楽しみという印象です」と答えたほか、松坂については、「ここ数年では状態がいいかなと感じました。ドラゴンズさんには感謝の気持ちを持っていると思うし、気持ちも入っている感じがしました。ぜひ復活してほしいですね」と期待。若い選手についても「小笠原投手、京田選手は今後も見て行きたい選手です」との印象を語った。
午後からは浦添市民球場に場所を移し、東京ヤクルトのキャンプを視察。「Swallows RISING」をチームスローガンに、昨年最下位からの巻き返しを狙うチームは、小川新監督のもと、4年ぶりに古巣のユニフォームを身にまとった宮本一軍ヘッドコーチ、石井打撃コーチ、河田外野守備走塁コーチを新たに招聘し、首脳陣の刷新を図った。キャンプ初日から夜間練習が行われる等、明らかにチーム、選手個々の意識は変化している。この日も午後の早い時間にノック、ケース打撃等、目的意識を明確にした練習が行われており、稲葉監督は球場に到着早々、小川監督、宮本コーチと熱心に話し込む姿があった。
ケース打撃では昨年ドラフト1位の寺島成輝の投球や、今シーズン復調を目指す山田哲人のバッティングを視察した。稲葉監督は山田について「走攻守そろっている選手。今ちょっとバッティングでは迷っている部分があり、今年1年、彼の中でしっかりやらないといけない年でもあると思います。もう一度、自分の打撃を取り戻してやってくれたら十分、ジャパンのメンバーに入る選手ですし」と期待を寄せていた。
山田以外の注目の若手選手としては「宮本ヘッドコーチからショートの廣岡選手は守備もよくなってきて非常に楽しみだよ、という話をしていただきましたので、注目して見てみたいと思っています」と今後に期待を寄せるとともに、日本球界に復帰する青木宣親について「やはり、経験をたくさんしているので大事な場面はベテランの力が大事だと思っています。チームを引っ張っていく存在になってほしいと思っています」「成績をしっかり残してくれれば、(侍ジャパン選出の)可能性はなくもないかなと思います」と語った。
3月の試合に向けたチーム作りとして、このキャンプ視察でも一貫して今のトップチームを召集しつつ、若い選手への経験についての必要性を語る稲葉監督。加えて機動力と長打力のバランスを重視してメンバーを選んでいくという点を踏まえて、東京五輪の金メダル獲得へ向けての土台づくりと位置付けられる稲葉ジャパン初のトップチームの顔ぶれが注目される。