強振してくるバッターが多いとされる外国人打者に、最も有効的なのは、タテ変化のボールと言われている。2大会連続で4強に進出した昨年の3月のWBCで伝家の宝刀・フォークを武器に千賀は「世界」を驚かせた。
フォークボールは千賀が全国的には無名だった蒲郡高(愛知)時代から持っていたが、当時は「指を広げて投げる程度で、フォークと呼べるものではありませんでした。スプリットみたいな感じで、打者の目線を外す程度。決して、通用する球種ではありませんでした」と振り返る。
育成ドラフトで入団し、プロ2年目の途中(4月)で支配下登録。そのオフ、2013年シーズンに入る前、1月の自主トレで中日・吉見一起からフォークの握りを教わった。試行錯誤しながら自身の武器にした。16年には初の二けた勝利を挙げ、初めてトップチーム入りを果たした昨年3月の第4回WBCで、真骨頂を発揮することとなる。
オーストラリアとの一次ラウンド第2戦。1対1の6回裏、3番手で救援すると、7回表に侍ジャパンが勝ち越しに成功。千賀は2イニングで打者7人から4奪三振とリズムを作り、国際大会デビュー戦で勝利投手となった。
二次ラウンドに入ると、さらに勢いが加速する。オランダとの第1戦、3番手で5回から登板し2回無失点。中2日のイスラエルとの第3戦では先発投手として起用されると、5回1安打無失点と、小久保裕紀監督の信頼を完全に得た。
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アメリカに渡っての決勝トーナメント。決勝進出をかけたアメリカとの準決勝は、悔しさが残る一戦となった。先発・菅野智之(巨人)は6回1失点の好投。0対1の6回裏に菊池涼介(広島)が起死回生の同点ソロを放ち、7回表から救援したのが千賀だった。
この回、千賀はメジャー・リーガーに対して、圧巻の3者連続三振。8回裏も先頭打者を空振り三振に斬り、4者連続三振。しかし、次打者に右前打、さらに左中間二塁打を浴び一死二、三塁のピンチを迎える。次打者を三ゴロに打ち取ったが、三塁手・松田宣浩(ソフトバンク)はボールが手につかず、三走の勝ち越しを許した。千賀にとって大会初失点は、まさしく痛恨の1点となった。
とはいえ、千賀の投球はアメリカの地元メディアも絶賛した。4試合で防御率0.82、11イニングで大会トップタイの16奪三振という圧巻の数字を残している。日本代表からはただ一人、主催者発表のポジション別優秀選手(ベストナイン)に選出された。
今年1月で25歳になったばかり。2年後のオリンピックへ向けて、稲葉監督も「日本を代表する投手になれる資質をがある」と期待を寄せている。
「選んでいただきとても光栄です。自分の力を出せるように、しっかり準備して試合に臨みたいです」
千賀の座右の銘は「成せば成る」。努力を重ねれば、夢は実現する。千賀は日本の全国民、野球ファンの「希望の星」であり続ける。