3月6日、7日に京セラドーム大阪で行われる「カーネクスト 侍ジャパンシリーズ2024 日本 vs 欧州代表」を間近に控え、侍ジャパントップチームの井端弘和監督にインタビューを実施。昨年のWBC優勝メンバーである源田壮亮(西武)、村上宗隆(ヤクルト)、近藤健介(ソフトバンク)ら経験豊富な選手に加え、金丸夢斗(関西大)、中村優斗(愛知工業大)、宗山塁(明治大)、西川史礁(青山学院大)といった大学生4名をはじめとした初選出選手まで、幅広い選手選考をした意義や期待、今シリーズで得たいものなどを聞いた。
選考の狙いや意義
――まず今回の選考で重視したことは、どのようなことになりますか?
「11月にプレミア12があることも意識しましたし、その先のWBC(2026年)やロサンゼルスオリンピック(2028年)ということも考えて選んだ選手もいます」
――あらためて、大学生を4選手選んだことの意義を教えてください。
「ここ最近の侍ジャパンを見ても、プロ1年目の選手や1年目に活躍した選手がすぐに選出されていることがあります。また、“自分がプロの中でどれくらいの位置にいるか”を知れば、この1年の過ごし方が変わってくる。そう思ったので、大学トップレベルの選手たちを選びました。今年のプレミア12はどうか分かりませんが、今後のWBCやオリンピックの予選、本戦と代表に入ってきておかしくない選手たち。何かを掴んで帰って欲しいです」
――「何か掴んで欲しい」という思いが強いのですね。
「自分は初めてフル代表(トップチーム)に選ばれた際、雰囲気に飲まれてしまった経験があるので、一度経験しておくことは重要です。今回はWBCの優勝メンバーも選出していますし、トップ選手から様々なことを学んで欲しい。間近で見られることはとても大きいと思います」
――井端監督の現役時代はどのような経験をされましたか?
「2003年のアテネオリンピック予選の時です。前年と前々年にも日本代表には選出されていましたが、その際はプロ・アマ混成チームでした。でも2003年は(トッププロ選手たちのみの編成であることに加え)オリンピック予選ということもあり、変に萎縮して構えてしまったのです。対戦する韓国やチャイニーズ・タイペイとは、それまでも試合をしていた選手たちはほとんどなのに、なぜかいつもと同じ気持ちでプレーできなかった。完全なる自信が無かったのでしょう。なので、彼らには後々代表にいきなり呼ばれて、そういう経験をして欲しくないなと思いました。また自分自身、この時の経験があったからこそ“レベルアップしないといけない”と頑張れました」
初選出の選手に対する期待
――大学生4選手それぞれの魅力を教えてください。まずは投手の2人をお願いします。
「金丸投手は1年生の秋に初めて見たのですが、その最初の1球で凄いと思いました。特に制球力が素晴らしいと感じましたし、年々ボールも速くなって150キロを超えるようになりました。中村投手は、噂は聞いていたのですが初めて見たのは12月の大学代表合宿です。寒い中で全ての球が150キロを超えていましたから、球速に関して言えば大学ナンバーワンだと思います」
――続いて野手の2人はいかがでしょうか。
「宗山選手は、昨夏の大学代表合宿で守備を見せてもらって、何か助言することを見つけようと思ったのですが、なかなか欠点が見つからないほどでしたから、プロでも高いレベルだと思いました。打撃は長打をガンガン打つ選手ではありませんが、ミート力が高い選手です。西川選手は長打力が魅力ですね。高校時代は内野手だったということで、足も速くて肩も強い。今の野球にマッチしています」
――プロの選手にも初選出が多いですね。
「WBCの優勝メンバーなど経験豊富な選手が多いので、彼らもまた様々なものを吸収して、今後に生かしてもらえればと思います」
――将来を嘱望されるスケールの大きさがある山下舜平大投手(オリックス)もついに初選出です。
「ボールが速いということが最大の武器ですね。変化球も良いですが、一番の特長は角度のある速いストレートだと思いますし、日本を代表する投手になれると思っています」
――捕手では山本祐大選手(DeNA)が初選出です。
「アジアプロ野球チャンピオンシップの選手を決める際もみんなが最初に名前を挙げました。でも思ったより若くなくて、年齢が大会の規定外でした。なので、今回は真っ先に呼びたいという選手でした。肩の強さと、投手を思ってのリードや気配りに素晴らしいものがあります。若い投手や大学生もいますので良い影響を与えるのではないかと期待しています」
――外野手の田村俊介選手(広島)も初選出ですが、一軍通算10試合のみの出場です。
「周りが言うほど驚く選出ではないと思っています。近い将来、それが次のWBCなのか、次のオリンピック予選やオリンピックなのかは分かりませんが、いずれ必ず代表に入ってくる選手だと思います。田村選手もまた“その時急に”というより一度ユニホームを着て、近藤選手、村上選手、源田選手らを間近で見て、今後に生かして欲しいなと思いました」
「侍ジャパンのユニホームを着ている限りは」
――采配面で試しておきたいことはありますか?
「場合によってではありますが、そこまで細かくやるイメージは無く、良いものを見せてもらうことが大事になってきます」
――アジアプロ野球チャンピオンシップで課題とされていた盗塁も、今回は大切にされますか?
「相手バッテリーの力量を見ながら、走れる選手はどんどん走って欲しいです。ただ、盗塁がすべてではありません。走らなくてもプレッシャーはかけられるので、細かいところもきっちりやっていきたいです。次の塁を狙う姿勢が大事ですし、そうした意識は誰もが持てるものなので、誰もが持ってやって欲しいです。“日本は走ってくる”と警戒されればプレッシャーもかけられますからね」
――4番打者は決めてらっしゃいますか?
「当然、そこは村上選手ですね。変わらず。体調次第ですが2試合ともそのつもりです」
――村上選手の前後を打つ選手の構想はできているのでしょうか?
「もちろん選ぶ時点で構想はしているのですが、その通りにならないことはしばしあります。見ないで決めるのは良くないので、5日の公式練習1日だけではありますが、そこを見て最終的に決めたいです」
――今回対戦する欧州の野球の印象を教えてください。
「昨年のWBCで対戦したチェコもそうですしオランダ、イタリア、スペインなど様々な国が年々、力をつけてきています。2015年に対戦した際も1勝1敗で、その1勝も8回に逆転したものでした。力があるチームなのは間違いない。侍ジャパンのユニホームを着ている限りは、勝ちにこだわって戦います」
――最後にファンの方へのメッセージや見せたい野球を教えてください。
「WBC優勝を経験した選手から、日本の将来を背負って立つ選手まで様々な選手たちが揃い、様々な見方ができると思います。選手は全力プレーで勝利を目指すので、良いプレー、良い試合をお見せしたいです。応援よろしくお願いいたします」