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"世界の野球" 南の楽園フィジーのHAPPYベースボール通信 第2回「ナショナルチームの活動」

2019年1月28日

文・写真=大嶋賢人

Bula! Happy new year!!!

明けましておめでとうございます。
Fiji Baseball & Softball Association(フィジー野球ソフトボール協会、以下FBSA)の大嶋賢人です。

先月からこちらのHPでフィジー野球について記事を書かせて頂いています。

今回はナショナルチームのお話を。

と、その前に世界の野球事情を少し知って頂くために外部リンクになりますがWBSCのHPを紹介させて頂きます。

http://www.wbsc.org/members/oceania/all/0/

World Baseball Softball Confederation

世界野球ソフトボール連盟(WBSC)は野球とソフトボールの国際統括団体です。
WBSCには現在アジア、アフリカ、ヨーロッパ、オセアニアにわたる135の国と地域から208の国内連盟と準会員が加盟しています。
FBSAもこれに加盟し野球の普及活動やナショナルチームの運営、国際大会への出場などをしています。
WBSCがU12、U15、U18、U23、と年齢別に大会を運営し、各グレードでの大会結果を元に世界ランキングをつけています。(over ageやプロを含む)
各グレードの国際大会に出場するとポイントが入り、更に大会での戦績でポイントが加算される仕組みです。
大会への出場が滞るとポイントが減って行くこともあります。
実際、昨年途中まで世界ランク1位だったアメリカは今年のU-15 野球ワールドカップとU-18パンアメリカン選手権大会で優勝に輝きましたが、今年度最高峰のU-23への欠場が響いて2位にダウンしています。

FBSAのような小規模野球協会は継続的に大会へ出場しポイントをキープする必要があります。
そこでFBSAに2代目の長期派遣ボランティアとして配属された私には“普及員”の他に“ナショナルコーチ”としての要請があり、実際に2018年1月のU15オセアニア大会にはナショナルコーチとして帯同し指揮をとりました。

参加国が少ないながらもオーストラリア、ニュージーランドに次いで3位に入る快挙。

7年ぶりの国際大会出場と、大洋州3位。

「Fiji野球は確実に前進している」

そう確信しました。

現地人の同僚と相談し、2019年1月の大会はU12のチームで出る事に。
(FBSAは私の他に同僚がひとりいるだけで、ほぼ2人で運営しています。)

前年以上の結果が期待される今年の大会は10月下旬から選手選考やユニフォーム作りを始める気合いの入れよう。

フィジー国内の日系企業にスポンサーのお願いに行ったり

少しづつメディアへの露出が増えナショナルチームの活動も軌道に乗りかけた12月中旬、オーストラリア出張から帰って来た同僚から衝撃の報告が入る。

「U12の大会はなくなったよ」

もともと参加表明していた6ヶ国ほどの国が次々と辞退し最終的に開催国のオーストラリアとフィジーだけになった為に「大会中止」という判断に至ったという。
(U12 Oceania-Championship自体が中止。世界ランク上位のオーストラリアが代表でW杯に出場予定)

このバッドニュースを受け入れるのには時間が掛かった。
翌日の練習で選手に伝えるのが余りにも辛く私には出来なかった。

同僚の口から大会中止を聞いた子ども達は思ったよりショックを受けていないように見えました。
フィジー人は“悲しい”時も“悲しい”表情をしないという。

約2ヶ月ほぼ毎日練習して来た事が無駄になる訳では無いけど、目標としていた大会がなくなるという事は簡単には受け入れ難い。
準備して来たユニフォームやバナーも取りやめ、やっとの思いで見つけたスポンサーにもお断りのメールを打たなければいけない。

子ども達より私自身が一番落ち込んでいたかも知れません。

何よりも不安だったのが「大きな目標を失った選手達がグラウンドから離れてしまう事」でした。
将来のこと、少し先の未来を考えたり準備したりというのが苦手なフィジー人は多い。

U15の選手達もオセアニア3位という輝かしい成績を引っ提げて帰国した翌月にはチームの3分の2が練習に来なくなった。

「大会の為に練習していたから、大会が終わったら(無くなったなら)もうやらない」となるのでは無いかと。

そんな不安をよそに殆どの選手が翌週も練習に来ました。
「だって練習はするって言ってたじゃん」
「家に居ても暇だし」
などと言っていたが、グラウンドに来た選手達はこれまでと変わらずに楽しそうに野球をやっていました。

先を見通したり、未来の為に準備したりするのは苦手なフィジー人。
“今その瞬間を楽しむ”事に関しては他の追随を許さないほどの彼ら。

彼らの姿に励まされました。

悲報から1週間後に我々はスペシャルゲストを迎えイベントを開く事に。

読売新聞とJICAの協賛で行われている野球指導者派遣プロジェクト。
NPB3球団で活躍された元プロ野球選手をお招きしてクリニックを開きました。
世界の野球グローブ支援プロジェクトの一環で、読売巨人軍が運営するジャイアンツアカデミーのコーチを途上国に派遣し、現地の子どもたちに野球の実技指導を行うという企画です。

詳細
https://info.yomiuri.co.jp/news/3986.html

約1週間の野球教室に述べ200人もの選手が参加してくれました。

普段とは違う練習メニューに戸惑う子どもいましたが、ハイレベルな指導を受けて子ども達は嬉しそうでした。

基礎練習から応用練習まで小さい子どもから楽しめるようなアイデアに溢れていて、一指導者として一野球人として勉強させて頂きました。(私が一番楽しんでいたかも知れません)

この経験が将来 U15、U12の選手を大きく羽ばたかせる事になるでしょう。

今回クリニックで指導を受けた選手達が近い将来、国を背負って戦ったり次の世代に野球の楽しさを伝えるようになってくれたら我々も大変嬉しいです。

2019年のシーズンも今週から始まりました。

「学校が始まっても野球にも来るよ」と言ってくれる子どもも多くいるので今年も彼らと野球を楽しんで行きたいです。

http://world-diary.jica.go.jp/oshimakento/7.php

今回は1年で最大のイベントであるナショナルチームの遠征(国際大会)が無くなった事と、日本から元プロ野球選手をお招きして野球教室を開いた事を書かせて頂きました。

イベントが無くなることや計画通りに進まない事はフィジーでは珍しい話では無いということ。
それでもフィジー人は楽しく野球をやっているという事を知って頂けたら幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

2019年もフィジー野球の応援をよろしくお願い致します。

NO SWING
NO HIT!!!!!

南の楽園フィジーのHAPPYベースボール通信
著者プロフィール

大嶋賢人
1994年8月8日生
都内の教育大学を卒業後2017年8月よりFiji Baseball & Softball Associationに青年海外協力隊の野球隊員として配属。ナショナルチームの指導や巡回型普及活動を行っている。「年間300日雨が降る」と言われる首都スバ市で”NO SWING-NO HIT!”をモットーに現地の子どもと白球を追っている。好きな言葉は「出来なくて当たり前、出来たら男前」。

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