6月16日に発表された東京オリンピックを戦う野球日本代表の内定選手24人。今回は11人が選出された投手の陣容を紹介していきたい。
※今季成績は内定選手発表時
期待の新鋭
11人のうち代表トップチームへの初選出は5人。
初選出でも国際舞台での経験が多いのは森下暢仁、栗林良吏(ともに広島)。森下は大分商高時代にU-18代表、明治大時代には3年連続で大学代表に選出され、2019年の日米大学野球では最高殊勲選手賞に輝いた。プロ入り後も1年目に10勝を挙げて断トツの得票で新人王を獲得すると、今季も3勝4敗と勝ち星こそ伸びてないが、防御率はセ・リーグ4位の2.35と安定した成績を残しており、稲葉篤紀監督も「彼は力でも勝負できる投手で、国際舞台であっても、全てのボールが通用すると思っています」と期待をかけている。
栗林は名城大時代の2017年に大学代表に選出され日米大学野球とユニバーシアードに出場。両大会合わせて4試合に登板して貴重な経験を積むと、社会人野球のトヨタ自動車でもさらに成長を遂げ、今季から広島でプレー。新人ながら抑えを任されると、開幕22試合連続無失点の新記録を樹立するなど大活躍。「三振をとれる投手として非常に期待しています。彼のストレートとフォークボールはオリンピックでも通用すると思っています」と、稲葉監督はオリンピックでも試合終盤を任せる構想を持っている。
また無失点記録でいえば平良海馬(西武)は開幕33試合で未だ無失点記録を継続中。もちろん新記録であり、最速160キロのストレートを生かしたパワフルな投球とキレ味鋭い変化球で、海外の強打者たちをねじ伏せたい。
ともに20代後半を迎え、安定した力をつけてきたのは青柳晃洋と岩崎優(ともに阪神)だ。
青柳はプロ6年目でアンダースローとサイドスローの中間のような変則右腕。2019年から先発ローテーションの一角を任されると、今季はリーグトップタイの5勝、リーグ2位の防御率2.17 の好成績を収めている。変則投手は渡辺俊介(ロッテ)、牧田和久(当時西武、現楽天)、高橋礼(ソフトバンク)と国際大会で活躍してきただけに、その歴史の継承者として青柳にも期待したい。
岩崎はプロ入り8年目の左腕。新人の2014年から先発を任されていたが、2017年から中継ぎに転向すると年々成績を向上させ、昨季は41試合に登板し防御率1.82チームトップの17ホールドを挙げた。球速以上に打者が差し込まれるストレートと変化球のコンビネーションが光る。稲葉監督が「初見で対応することが難しい特殊なサウスポー」と表現し、打者の左右にも得意・不得意が無いため重宝される存在になるだろう。
経験豊富な選手たち
国内実績と国際経験が十分な投手たちも選ばれた。
投手陣の牽引役の1人に指名されたのは菅野智之(巨人)だ。代表のユニホームを着て戦うのは2017年のWBC準決勝以来だが、これまで通算103勝と実績は十分だ。
昨年のセ・リーグで菅野に負けず劣らずの活躍を見せ、沢村賞を受賞した大野雄大(中日)は2019年のプレミア12に続く選出。左投手を苦手とする相手と対戦した際の先発として想定されている。
パ・リーグのみならず今や日本を代表する投手の1人となっている山本由伸(オリックス)も文句なしの選出。稲葉監督は「彼は先発・リリーフ両方ができる、非常に重要な投手だと考えています」と語るように信頼度は抜群。所属チームでは先発として、代表では2019年のプレミア12で中継ぎとして相手を圧倒する投球を見せていて頼もしい存在だ。
大野、山本と同じくプレミア12に続き選出されたのは中川皓太(巨人)と山﨑康晃(DeNA)。ともに世界一奪還に貢献した貴重な左右の中継ぎ投手だ。稲葉監督は、中川には「左打者のインサイドへのツーシームは、外国人打者にも通用する」、10回目の代表選出(大学代表1回含む)となった山﨑には「国際舞台の経験が豊富な彼には、リリーフ陣をまとめてもらいたい」と期待する。
そしてなんといっても日米通算179勝の田中将大(楽天)が実績では群を抜く。内定選手の中では唯一の五輪経験者(2008年北京五輪)でもある。北京は稲葉監督も選手として田中ともに戦っただけに「19歳という若さで五輪を戦い、(4位に終わった)悔しさを持ってくれていると思います」と、経験に加え雪辱へのエネルギーにも期待を込めた。
夏の暑さや一発勝負ゆえの早期交代の必要性を重視し、2008年北京五輪より1人多い11人体制で臨む投手陣。フレッシュな気鋭の投手と経験豊富な投手の融合で悲願の金メダル獲得へ大きな鍵を握ることになりそうだ。