今年3月に開幕する2023 WORLD BASEBALL CLASSIC™(以下、WBC)での王座奪還を目指す侍ジャパントップチーム。その指揮を執る栗山英樹監督は間近に迫った大舞台を前に今、何を思うのか。
連載2回目となる今回は、選手選考の悩みやMLB所属選手・日本球界の新鋭選手たちへの期待などを語った。
「悩むことばかりです」
――まず2人のコーチの追加を12月に発表されました。厚澤和幸コーチ、城石憲之コーチに期待する役割は、どのようなことになりますか?
「もともと我々は現場で現在やっていない者(所属チームで監督・コーチをしていない)が多いので、毎日試合をやり続ける現場の感覚がある人がどうしても欲しくて、ずっと枠を空けていました。そこで、勝ちきっている(ともにリーグ連覇を果たしている)オリックスとヤクルトから来てもらえて良かったなと思います」
――日本ハム監督時代にコーチとして支えてくれた両者ということも大きいですか?
「確かにコーチは一緒にやってみないと、どんな動きをするのか特徴は見えてきません。でもそれよりも、現場の感覚があって勝ちきっているチームにいるコーチという条件が先でした。その条件の中に2人がいてくれたので頼むことになりました」
――選手選考では現状何割くらい固まっていますか?
「イメージで言うと6割くらいですかね。選手からすれば早く発表して欲しいと思うし、そうして欲しいという空気は感じています。ただ、選手たちには申し訳ないのですが、最後の最後まで粘らせてもらって一番良いチームを作りましょうと進めているところです」
――選考で最も悩まれているのは、どのようなことですか?
「結局悩むことばかりです。1人違えば全体像の形が変わるので、選手の状態の確認などをしていかなくてはいけません」
「彼らの決断はすごく嬉しかった」
――MLBでプレーしている大谷翔平選手(エンゼルス)、ダルビッシュ有選手(パドレス)、鈴木誠也選手(カブス)が先日、出場の意向を表明しましたが、彼らへの期待はいかがですか?
「それはもう本当に簡単な決断ではなかったと思うので、本当によく決断してくれたなという思いです。アメリカを倒して優勝したいという大前提の中では、アメリカで対等に勝負している選手が必要となるので大きいです。過去に出場した選手たちに聞くと、MLBを知っている選手たちのアドバイスがすごく大きかったとみんなが言うので、何人か入って欲しいと思っていました。大きな力になることは間違いありません」
――渡米して彼らと話した際には、どのようなことを伝えましたか?
「今の野球界においてWBCが非常に重要になってくるという話をしました。でも、僕が話す前から彼らはそうしたことを意識してくれているようでした。その中で、自分たちのやらなければいけないこととして決断してくれたことは、すごく嬉しかったですね」
――国民の大きな注目を集めている大谷選手への期待はいかがでしょうか?
「持っているものをそのまま出す環境を作ってあげなければということ、勝ちきれるようにということ、ここに全力を尽くしていきたいです」
――大谷選手の起用法は現状どのようなイメージをされていますか?
「ここからですね。本人や所属球団と確認していかないといけませんし、これはすべての選手に言えることです。いろんなイメージを持っている中で、どれを選択していくか考えていきます」
――今の大谷選手の現在地はどのように捉えていますか?
「体の不安なく大好きな野球に思いきり打ち込める環境が、この1年はできてきたと感じています」
――大谷選手なら「もっとできる」という思いもお持ちですか?
「トータル的な数字でなく1試合1試合を細かく見ていけば、もっともっと翔平ならできると思います。それが全部できたら野球じゃないよと言われるかもしれないけれど、求めるのは理想なので。そこに向かって行って欲しいし、天井は無いと思っているので、まだまだすごいことをやれると信じています」
――国内に目を向けると山本由伸投手(オリックス)が投手のタイトルを多く獲得するなど、素晴らしい活躍を遂げています。
「国内で無双のような雰囲気になってきていますね。MLBの超一流選手と対戦するんでしょうし、僕らもそんな彼らをやっつける山本投手をイメージしています」
――「今は日本野球界の過渡期」とよくお話されていますが、台頭してきた佐々木朗希投手(ロッテ)や村上宗隆選手(ヤクルト)への期待はどのように感じていますか?
「“このWBCがあったから”という大きなきっかけになって欲しいです。これからの野球界のためになったと大会を振り返って言ってもらえるように戦っていきたいです」
第3回へつづく
【第1回】代表初指揮で感じた選手たちのひたむきな思い
【第2回】悩める選手選考とMLB組・新鋭への期待
【第3回】「世界一になりたいじゃない。世界一になります」