侍ジャパンの赤星憲広アンバサダーが、先日の強化合宿に続き、29日に行われたユニバーシアード競技大会壮行試合(侍ジャパン大学日本代表vs NPB選抜)の視察を行いました。シドニー五輪などで代表経験を持つ赤星氏が、侍ジャパンアンバサダーの視点で、大一番に臨む大学代表チームをレポートします。
田中正義について
―――田中正義投手(創価大)が4回無安打無四球8奪三振と圧巻の投球を見せましたね
言うことないですよ、今日は(笑)。先頭打者で、前の打席に本塁打を放っている山川選手(西武)に全球ストレートで勝負して抑え(左飛)、波に乗りましたね。真ん中近辺のストレートでも空振りが取れる投手は、そういません。
―――さらにこの日は、ストレートだけでなく変化球の精度も高かったですね
変化球でストライクを取って、次は、あの速いストレートでストライク。これで追い込まれたら、打者は次に何を待っていいか分からないですよ。捕手の坂本くん(誠志郎/明治大)のリードを含め、見事です。こうした攻め方は、海外の長距離打者にも効になるでしょう。
濱口遥大について
―――先発に抜擢され、2回7安打2失点だった濱口遥大投手(神奈川大)についてはどのような印象でしょうか?
山川選手に本塁打を打たれた場面ですが、やはり変化球が高めに甘く入ったボールをプロは見逃してくれませんね。これは外国人選手が相手でも同じことが言えます。
―――山川選手以外にも痛打を浴びた濱口投手の課題はどういったところでしょうか?
投球のリズムが一緒で、一本調子ということですね。良い時は打者がタイミングを合わせられていないということなので、そのままで良いのですが、悪い時は投手自身がそういったことを意識したり、捕手がサインをゆっくり出すなど工夫が必要です。
―――プロで言いますと、そういったことに長けた投手はいますでしょうか?
内海投手(巨人)は、まさにそういったところが上手い投手ですね。不調時や、前の打席で安打を打たれている打者に対しては、牽制球を挟んだり、投げるまでの間を変えて、打者のタイミングを外してくるので、とても参考になると思います。
吉田正尚や気になる野手について
―――野手では、吉田正尚外野手(青山学院大)が攻守で存在感を見せました
吉田選手は思いきりが良いですし、技術も高いですね。スイングスピードが速くて、タイミングの取り方も素晴らしい。今日の本塁打はライトスタンドですが、レフトにも本塁打を打てる技術があるはずです。今後、こじんまりしないで欲しいと思う選手ですね。観ていて楽しい。
―――吉田選手が今後さらにレベルアップするためには、どのようなことが必要でしょうか?
凡退した初回の打席(中飛)もあの低めのボール球を、しっかりとセンターに持って行ったのは、高い技術ゆえです。ですが、欲を言えば、ボール球を見逃せるようになれば、さらに打率も上がるでしょう。
―――他に野手で気になった選手はいますか?
この日の髙山くん(俊/明治大)は調子が悪かったですが、そういった中でも、7回に2ストライクと追い込まれてから進塁打を放ったのは、大きなことですね。1年生時からリーグ戦に出て、彼が培ったものでしょう。
谷田くん(成吾/慶應義塾大)も強化合宿初日で観た時より、タイミングの取り方が良くなっていて、しっかりボールを待てています。
守備の要である柴田くん(竜拓/国学院大)は、出塁時にもっとリードを取ってもよいかなと思います。走るつもりが無ければ、牽制で戻ることをだけを考えていればよいわけですし、リードでプレッシャーをもっと与えてもいいかなと思います。
ユニバに向けて
―――壮行試合全体を振り返ってみて、いかがですか?
大会前にこうしたレベルの高い相手と対戦できたことは大きいです。濱口くんも悪くは無かったので、打たれて見つけられることも多かったと思います。田中くんは、素晴らしい投球ができ、本人にとっても自信になるでしょう。
攻撃陣でいえば、投手が1イニングごとに変わる中で対応は大変だったはずですが、対応できている打者もいました。また、対応できなかった打者もここまでの選手たちなら、今日の結果を踏まえ1週間で修正できる選手たちです。
―――最後に、選手たちへエールをお願いいたします
結果がもちろん大事ですが、素晴らしい経験ができることに感謝し、自分たちの持てる力を最大限に発揮してくれればと思います。