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"世界の野球"”アフリカからの挑戦・赤土の青春”ウガンダベースボール「ウガンダからのメッセージ」

2017年5月26日

文・写真=長谷一宏(JICA青年海外協力隊・ウガンダ野球ナショナルコーチ)

 こんにちは。ご無沙汰しています。今回が私からのウガンダレポートは最後になります。まず、ウガンダ野球協会からメッセージをいただいたので紹介します。

 日本の皆さん、こんにちは。いつもサポートしていただきありがとうございます。
 ウガンダにおける野球の歴史は1989年にスタートしました。国内においては決してメジャースポーツではありません。しかし、日本もアメリカもかつてはそうであったようにそこから1歩ずつ歩みを進めてきました。現在、首都圏ではリーグ戦を行っています。しかし、地方部のチームは首都までの交通費が賄えず参加ができていません。しかし、彼らも熱心に取り組んでいます。決して恵まれた環境ではないものの選手は非常に情熱的に野球に取り組んでいます。昨年、日本の皆さまの協力のもと日本へ渡航をしたオメリは、BCリーグの合同トライアウトに日本人選手と一緒に参加をし、140㎞に迫る速球を投げ1次テストを通過しました。ウガンダ野球協会は5か年計画を立て課題の改善に注力しています。選手、コーチの育成、地方部における野球の強化、そして「アフリカ野球の発展」という共通の夢を描く各国とのパートナーシップを結ぶことを重視しています。日本の皆さん、これからもウガンダの野球を応援してください。

ウガンダ野球協会 Dennis Kasozi Ssempa Johnbosco

ウガンダ野球支援サークルUGBAS(学生団体)ウガンダ訪問

 在任中、日本から多くのサポートをしていただいた学生サークルUGBASの来ウが実現しました。大学生の若者が現地で感じた「生の声」です。

 弊団体UGBAS(ウガンダ野球を支援する会)は2月22日から3月1日までの8日間ウガンダへの渡航を行いました。渡航の目的は、「ウガンダ野球の現状を知るために交流すること」でした。現地の小学校での練習とリーグ開幕戦の観戦を行い、子供たちの意見、選手たちの意見、加えてコーチや選手の家族、観戦者にもお話を伺いました。また、ウガンダ野球協会と信頼関係を築くことで団体の目標である長期的なサポートを実現させることも目的としていました。
 まず、環境面ですが、どの学校のグラウンドもでこぼこが激しく、とてもグラウンドとは呼べないほどイレギュラーが多発していました。道具はグローブもバットもボールも不足し、ぼろぼろの中古のものを使っていました。優れた指導者は少なく、放任的で具体的な指導はあまり行わないチームもありました。リーグ戦運営において、各チームの多額の交通費も、野球協会だけで賄うのは厳しい状況でした。有り体に言うと、よくこの環境で野球を続けられるなあと思いました。選手・コーチは野球で食べていけるわけではなく、皆それぞれの仕事や学業をこなしていました。決して裕福とは言えない選手達も多い中で、どうして生活の中で野球に注げる部分が生まれるのだろうか、と思いました。
 そのヒントは、ウガンダの国内リーグの開幕戦を見た際に感じることができました。守備面では身体能力を生かし、どの選手も肩がよくバックホームで差す場面も見られました。逆に攻撃面、走塁面ともに独自の判断でプレーすることが多くチームとしての作戦は見られないのは改善点であると思いました。また、印象的であったのは、どの選手もどのチームも野球を心から楽しんでいる、ということです。常にベンチの選手は声を出し、チャンスになれば非常に盛り上がる。日本の野球とは違う、小さい子から二十歳前の青年まで、幅広い年齢層のチームが一体となっているのは新鮮でした。試合後に両チームの選手達が一列になってハイタッチを交わしていて、素晴らしい習慣を持っているのも嬉しく思いました。練習の時には女子も男子に混じって遜色なくプレーしていたり、監督が試合に出ていたりと、日本との違いにも驚きました。
 今回の渡航で「発展途上国」であることからの環境面での不足が目につきました。今後UGBASとしては物資、金銭面の援助やウガンダへの渡航を行い、ウガンダ野球との結びつきを深めていきます。また、日本の野球チームを派遣しウガンダの野球チームと対戦してもらうことも計画しています。

 学生のうちにアフリカで体感したことは後の人生において貴重な経験になるのではないでしょうか。前号でも触れましたが、今後は日本の大学生チームをウガンダに派遣し、試合を行うことができればと考えています。

さいごに

 ウガンダから帰国して3か月が経ちました。今振り返ると「国際協力とスポーツ」という点に関して在任中に悩んだことは
1 ウガンダ野球の自立的発展のためにどう支援をするのか
2 現地の選手・スタッフの内発的な活動を発展させるためにどう支援をするのか
という2点に集約されます。

1 ウガンダ野球の自立的発展のための支援をどう行うのか
 支援をするのか、それとも支援を止めて自立を促すのかという問いを度々いただきました。支援か自立かという二者択一ではなく自立のための支援をどう行うのかというところが肝だと思っています。

2 現地の選手・スタッフの内発的な活動を発展させるためにどう支援をするのか
 支援は現地の選手、関係者達の内側から生じる「内発的な」思いに耳を傾けていきたいと思っています。彼らがどういう理想の未来を描いていて、そのための課題は何で、その解決のために自分たちの手でできることは何だと考えているのか。もちろん彼らの意見に耳を傾けているだけでは、彼らの中にしかないアイデアしか出てこないのでこちらからも意見は出します。しかしそれはあくまでアイデアであって、実施方法は現地主体で決めようよということです。
 野球の技術のみならず、マネジメントに関わるワークショップをもっと主催する必要があったのかもしれません。

 私事ですが今後は大阪大学大学院にて「スポーツ×開発援助」という分野で勉学に励むことに致しました。特に野球界において東京五輪は通過点であり、その後も世界各国で強化・普及活動が継続していくことと思います。その前に海外での強化・普及活動において現場で生じる目に見えにくい効果、問題点を再考することに意味があるように思い進学をしました。また、IT機器を活用しキャリア支援とスポーツを結びつける活動を展開したいと思っています。

今後は国内にて皆さんと意見交換ができること楽しみにしております。ぜひご一報ください。
「開発と平和のためのスポーツ研究会のHP」

 最後になりますが全10回に渡る貴重な執筆機会をいただきありがとうございました。多くの分量を書きましたが、私の声のみでなく、選手、協会スタッフ、そして日本の大学生などあらゆる視点から様々な情報を掲載することができました。
 また本コラムにおいては英訳ページもあり、ウガンダにも多くの声を届けることができました。改めて感謝申し上げます。ウガンダで、そして世界で野球に夢中になる選手が幸せな人生を歩めることを祈っています。

著者プロフィール
長谷 一宏
1987年10月6日生
2014年10月より青年海外協力隊員としてウガンダ野球協会へ、選手の指導及び指導者育成のためナショナルコーチとして派遣されている。「ウガンダ野球の自立的・持続的な発展」を目標とし、各チームへの技術指導に加え、リーグ戦の運営、学校への普及などを行っている。

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