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"世界の野球" 南の楽園フィジーのHAPPYベースボール通信 第1回「グラウンドに潜む謎」

2020年5月28日

文・写真=西尾高広

 Bula(日本語で「こんにちは」という意味)!!
 JICA海外協力隊・フィジー野球ソフトボール協会の西尾高広と申します。前任の大嶋さんからバトンを引き継ぎ、昨年の8月よりフィジーに赴任していましたが、新型コロナウイルスの関係で3月末から日本へ一時帰国しています。今回、現地に赴任していた間に感じたことなどを報告させていただきます。

 突然ですが、皆様はフィジーと聞いて何をイメージするでしょうか?青い空?それとも青い海?そもそもあまり聞いたことがない人もいるのではないでしょうか?最近は日本から直行便を利用して行けるリゾート地として人気が高まっており、テレビや雑誌で取り上げられる機会も多くなってきています。少し前の話ではありますが世界一幸せな国といわれたこともあるくらい魅力がいっぱいの国。それがフィジー共和国です。この魅力たっぷりの「南の楽園」フィジーの野球事情についてお伝えできたらと思います。

 このコラムを執筆するにあたって私のフィジーに赴任するまでの経緯を説明させていただきます。私は大学を卒業後、2018年10月から南アジアのスリランカ民主社会主義共和国にJICA海外協力隊野球隊員として派遣されました。二年間の任期を全うする予定だったのですが、2019年4月21日に起きたスリランカ同時多発テロの影響を受けて日本へ一時帰国しました。その後、スリランカへの帰任不可ということになりました。テロのことをシンプルに書きましたが、一生懸命生きる人々の幸せな尊い日常を奪ったことは許されることではありません。テロが起きた当時のことを思い出すだけで憤りや無力感というものが今でもフラッシュバックします。幸か不幸か私は同任期中に二か国目での野球隊員としての活動をすることになり、2019年8月よりフィジー共和国へ赴任していました。

 長い前置きはこのあたりまでにして、記念すべき第1回の投稿はグラウンドに潜む謎??についてお話ししたいと思います。

 フィジー共和国は言わずと知れたラグビー大国です。リオ五輪の七人制ラグビーでは金メダルを取るほどの実力!!昨年日本で行われたラグビーワールドカップでも非常に盛り上がりました。タクシーの運転手との会話でも「昨日の試合は見た?」、「日本はよくやった!」、「あの判定は違うだろ!」などラグビーに関することが多く、国民に根付いています。ということは私のミッションであるフィジーで野球を教える、普及させるということは非常に難しいのではないだろうかと、赴任してすぐの私は不安になりました。

 そして、実際に巡回指導の初日。緊張しながらグラウンドに到着すると、子供たちがいました!最終的には20人を超える程でした。この人数が多いのか少ないのか客観的に見たらどうか分かりませんが、私はこの現状に希望を抱かずにはいられませんでした。

 なぜこの国で野球をしようとしてくれたのだろう?どうしてラグビーではなく、野球を選んでくれたのだろう。理由を考えれば考えるほどわからなくなっていき、謎が深まるばかりでした。

 日本だとテレビでプロ野球などの映像を目にします。そして少年少女たちはその姿に憧れて野球を始めるケースも多いはずです。

 ただ、フィジーでは日本のように身近に野球を感じることができる機会はほとんどなく、ゼロといっても過言ではありません。ですが、大人も子供もスポーツを楽しむということが根付いています。どうしてこの子たちはグラウンドに来てくれたのだろうという私が感じていた謎の正体とは、純粋なまでの野球が好きだという気持ちや、仲間と一緒にスポーツがしたいという気持ちだと思います。

 私も実際プロ野球に、そして甲子園に憧れ、中学卒業と同時に親元を離れ生活した元野球少年でした。いつしか楽しむということを忘れ、競技性の高い野球に大学卒業まで触れていたため、忘れかけていた「楽しむ」という気持ちにフィジーで気づきました。

 子供たちが純粋に野球を楽しんでくれて、年上の子供が年下の子にレクチャーしてあげて、試合になったら手加減なく容赦なく一緒に楽しんで。フィジーのグラウンドには溢れんばかりの笑顔がいっぱいです。これまでフィジー野球に情熱を注がれた先輩コーチ、その情熱を受け継いで何とかこの国で野球を広めるんだ!という強い意志を持ったわが相棒であるイノケさん、現地コーチの方たちが何年もの時間と愛情を注いでできた空間だったのだと感じました。

 新型コロナウイルスの関係で、最近は子供たちが集まって練習することもままならない状況ですが、日本にいる私に対し、子供たちから「Don’t worry coach」、「We are doing our best」といったような力強いメッセージ、トレーニング中の写真をもらいました。彼らは私が思っている以上に逞しく、そして野球を愛してくれているのだと感じました。日本に一時帰国してからは気持ちの整理ができていなかったのですが前向きな気持ちでいることの大切さを彼らから学ばせてもらいました。
 現状、フィジーへ再赴任する日は分かりませんが、新型コロナウイルスが終息し、一日でも早くフィジーに戻りたいです。そして、私の任期も残り短い期間ですが、野球というスポーツを通じてフィジーの子供たちの笑顔を守り、彼らとまたグラウンドで笑い合いたいと心の底から思っています。

 拙い文章ではありますが最後までお付き合いしていただき誠にありがとうございました。引き続き温かい目で見守ってください。

 フィジーの、そして世界中の野球小僧たちに幸あれ。

南の楽園フィジーのHAPPYベースボール通信
著者プロフィール

西尾高広
1994年9月28日生
福井県出身
福井県立福井商業高等学校卒業後→日本体育大学へ進学。大学在学中は女子野球部の指導者として活動。
2018年10月から青年海外協力隊野球隊員としてスリランカへ派遣。2019年 8月25日よりフィジー野球・ソフトボール協会へ配属。主な活動は地域巡回指導、ナショナルチームの編成、強化
好きな言葉は日々是好日。

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