2021年9月30日、この日をもって任期満了となる侍ジャパントップチーム・稲葉篤紀監督の退任会見が行われた。
稲葉監督は冒頭のあいさつで2017年に就任してからの日々を振り返り、「野球日本代表に関わったすべての皆さまのおかげです。感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました」と話すなど感謝の言葉を多く並べた。また、支えてくれた家族の存在に言及すると、溢れる涙を抑えることができず声を震わせた。
そして、金メダル獲得後に住まいのある北海道へ戻ると、野球日本代表の帽子をかぶった少年・少女の姿を見かけ、「本当に嬉しかったですし、やってきてよかったなと、言葉にならない充実感を覚えました」と感慨深く話し、「引き続き、野球に興味を持つ子供を増やすような活動ができればと考えています」と今後の抱負を語った。
質疑応答では、印象に残る試合を問われプレミア12を前にして行われた2019年10月31日のカナダ戦を挙げた。2回に6点を失いながら最終的には5対6まで追い詰めた試合で、「1点をコツコツと取って、1点を防いでいくという日本代表としての芯が見つかった試合でした」と振り返った。また、この4年間で多くの試合・大会を戦っていく中で選手の理解も深まり、選手から「こうしていいですか?」という提案が増えたことも明かし、「選手との良い関係性を築くことができました」と充実の思いを語った。
難しかったこととしては、新型コロナウイルスの感染拡大による東京オリンピックの開催延期や感染対策の中でコミュニケーションを取ることの苦労を挙げたが、「今年に入ってからは各球団の選手やスタッフの方にグラウンドでいろんな話をさせていただきましたし、4年間を通して金メダルのために必要なことはすべてやらせていただきました」と、ここでも感謝の思いが溢れた。
会見前の午前中には現役時代の恩師である故・野村克也さんの墓前にて東京オリンピックでの金メダル獲得を報告。「いち社会人としての人間性を学ばせていただきました。すごく心配もしてくださったようなので、感謝の気持ちを伝えました」と語った。
さらに会見の後半では、4年間を振り返る映像や坂本勇人(巨人)、山田哲人(ヤクルト)、甲斐拓也(ソフトバンク)、秋山翔吾(レッズ)からのビデオメッセージ、山﨑康晃(DeNA)からの花束贈呈といったサプライズの数々には、目頭を抑えての号泣や弾ける笑顔を見せた。
監督経験の無い中での代表監督就任となったが、稲葉監督が4年間最も大切にしてきた選手との信頼関係の構築や野球の普及・発展に対する貢献は最高の形となって実を結んだ。そのことがあらためて感じられる退任会見だった。