いよいよ9月9日(日本時間10日)にアメリカ・フロリダ州で「第30回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」が開幕する。初優勝を目指す侍ジャパンU-18代表は8日間の国内合宿を経て5日から渡米し、開幕戦のイタリア戦(日本時間10日4時)に向けて調整を行なっている。
今回は国内合宿期間中に行われた馬淵史郎監督のインタビューの模様を紹介する。
合宿期間や選手選考の狙い
――3年ぶりのU-18代表の結成、U-18W杯開催ということで2020年から就任されていた馬淵監督にとっても待ちに待った活動開始かと思います。
「そうですね。今年も難しいのではないかという気持ちが半分くらいあったけれど、やっとできるようになりました。“よっしゃ、やったるぞ”という気持ちと良い成績を残せるかどうか不安な気持ちもあります。でも楽しみの方が大きいですね。自分の想像していた選手を選んでいただきました」
――これまでにない長い準備期間とした狙いを教えてください。
「木製バットに慣れることもそうですし、やっぱり期間があれば細かいことをある程度やっていくことができるので、そうすれば良い戦いをできると思いました」
――普段、明徳義塾でやられている野球と、侍ジャパンU-18代表でやる野球は違いますか?
「いや変わらないですね。“だから明徳は最近の甲子園で優勝できない(※2002年夏に全国制覇)”と言われるかもしれないけど(笑)、僕は高校野球では1番打者や3番打者のようなタイプが多い方がいいと思っていて、9人中7人くらいいたら強くて理想です。今回は機動力、守備力があって小技が効くという選手が揃っているので楽しみですね」
――投手陣も実戦力が高い選手が多い印象です。
「前回大会もその前もそうですけど、先発完投型の投手がいても(大会規定の投球制限で)登板間隔が空いてしまいますし、10日間で9試合という過密日程ならば、継投が基本になります。極端に言えば投手陣には毎日投げて欲しい。現時点で先発完投は一切考えていません」
――選考について「わがまま言わせてもらった」と仰っていましたが、それはどのようなところですか?
「国際大会ではそう連打が出るわけではないので、守れて、バントもできる、機動力もある選手を要望しました。20人中7人が投手登録なので、何人かの野手は複数のポジションを守れることが大事になります。例えば捕手の3名(渡部海、松尾汐恩、野田海人)は捕手以外のポジションもできる選手ということで選んでいただきました」
エース候補と主将にかける期待
――将来性の豊さだけを基準とするよりも今回の大会で勝つためのチームを構成した印象です。
「今は粗くても3から5年後に将来有望な選手も候補には挙がっていましたが選出しませんでした。でも今回の選手たちも練習の様子を見ていると、5、6人はプロでも活躍すると思うほど良い選手がいますよ」
――予想以上に良い選手はいましたか?
「広陵の内海優太くんはかなりのレベルの選手だとあらためて思いました」
――唯一の甲子園未出場選手では光弘帆高選手(履正社)が選出されていますが、彼についてはどのように評価されていますか?
「大型遊撃手で守備力の高い選手と聞いていて複数の方が推薦されていたので、1回観させていただいたのですが、肩の強さが魅力ですね」
――高い評価をされている香西一希投手(九州国際大付)は球速120キロ台の技巧派投手です。140キロを超える高校生投手が珍しくなくなった現代にあって異色の投手のように思います。
「投げ間違いが高校生レベルでいうとかなり少ない。球種も豊富ですし、かなり面白い存在です。最近では珍しいタイプの投手ですよね。海外に行くと、150キロくらい出ても甘い球がいくとかえって打ちやすいこともあるでしょうし、あえて香西くんを選びました。かなり戦力になるのではないかと思います。捕手陣も口を揃えて、香西が一番良いと言うのです。投手はスピードではない。打たれない投手が良い投手です。今はマシンがあるからどこも速い球は打つのです。でも香西くんの球はマシンで練習して打てない球なのです。打者には打てないコースというのが絶対にあるので、そこに投げられれば120キロ台でいいのです。でもベース上に来る球の強さは140キロくらい超えているようなボールですね。素晴らしいですよ」
――聖光学院の2人(赤堀颯、安田淳平)も気持ちの面含めて良い選手ですね。また、野手陣はどのように起用していく方針ですか?
「彼らはいいキャラというかチームに欠かせない存在になりつつありますね。そして大会は10日間で9試合ですからね。これだけ試合が詰まっていると投手より野手がきついかと思います。負けたらダメという緊張感でも疲労は相当溜まるので、上手く回していかないといけません」
――お話を聞いたり練習を見ていたりすると「戦い方の選択肢がとても多いチーム」に感じます。
「やっぱり試合が接戦になると後半には代打や代走も送る必要が出てくるので、選択肢が多ければ多いほど良いですね」
――細かいプレーの確認が国内合宿を通して印象的でした。
「アメリカ行ってからはああいう練習できないのでね。1回やっておくかどうかで全然違いますよ」
――どの選手にでもバントやスクイズのサインはあり得ますか?
「大体、野球の試合は7回まで僅差で、8回や9回で勝負がつきます。でも今回は7イニング制ですから、僅差の試合が多くなると思います。そうなると打順にかかわらずバントを使うケースが増えるのではないかなと思っています」
――7イニング制ということで「後半勝負という考えは無い」と合宿初日にも仰っていましたね。
「後半勝負はあり得ないですね。だから投手陣が踏ん張って5回でリードしていればすごく有利に進められると思います。だから山田陽翔くん(近江)には“毎試合抑えで、投げるつもりでおってくれ”とは言っています。試合終盤の1イニングか2イニング、できれば1イニングを抑えてもらいたいです。彼のツーシームやカットボールを投げられたら相手も嫌なんじゃないかなと思うのです」
――そんな山田選手を主将に任命した理由はどのようなものですか?
「やっぱりハートが強いですし、引っ張っていく力も惹きつける力もありますね」
主砲・浅野にかける期待
――攻撃については、本塁打が出れば理想ですが、細かい野球を志向していきますか?
「打てれば儲けものくらいに考えています。国内合宿で意識したのは、打てない時にどうやって勝つかの訓練です。国際試合ですから向こうの審判との相性もある。海外の良い投手が審判にもハマった場合にどう勝つかというと、点を取られずに少ないチャンスで勝つことです」
――浅野翔吾選手(高松商)にかける期待はどのようなことになるでしょうか?
「あれだけ飛ばせる選手はいないですね。私が見てきた中で。今までいろんな選手を見てきましたけど、おそらくナンバーワンじゃないかと思います。本人に言ったら力入りすぎるから言わないですけど(笑)」
――松井秀喜選手よりも上ですか?
「松井は打たせなかったから、どこまで飛ばすか分かりませんけどね(笑)浅野は合宿初日の練習で、木のバットで145メートルくらい飛ばしましたからね。彼には飛ばそう飛ばそうと思うなよ、とは言っていますが、当たった時の破壊力はモノが違いますね。がっちりしていて手の短い選手が一番バットも使えて良いですよ。馬力があります。力負けはしないでしょう。あとは海外投手特有の動くボールにどう対応するかでしょうね。金属のバットだったら先っぽで当てたり詰まったりしても打てましたけど、木製バットではなかなか難しいですからね」
――国際大会での戦いは何が大事になってきますか?
「海外のストライクゾーンに慣れることが一番ですね。アウトコースがボール1個か1個半くらい日本より広いですからね。だから、ここぞの時には絶対内角には来ない。だから(海外の打者は)みんな踏み込んで打つのでしょうね。あんまり疑心暗鬼になって自分の打撃を崩すのもいけませんけど、ある程度頭の片隅には普段と違うストライクゾーンを入れておいた方がいいでしょうね。しかも速くて動く球が来るわけですから」
――天然芝の内野守備の対策はどのように考えますか?
「難しいと思いますけど条件は相手も一緒ですからね。ただ向こうは慣れている。スコールもあるらしいからナイターの試合は芝が濡れてボールも湿っているかもしれない。それを頭に入れておいた方がいいでしょうね」
――先手先手が大事になってくると思いますが、早いイニングでの敬遠や大胆なシフトもあり得ますか?
「海外チームのデータを何も持っていませんから極端なことはしません。短期間の大会なのであんまり意識しすぎない方がいいと思いますね。スイングの形を見て、守備位置を変えるくらいですかね。外野手はみんな脚力があるので、ある程度の打球は追いついてくれると思います」
――最後に、あらためて目標とそのために重要となることはどのようなことですか?
「やっぱり日の丸をつけて代表選手としてやるわけですから、代表監督として行く以上は頂点を目指します。とにかく死力を尽くして戦います。とにかく勝てれば内容はどうあれ良いと思っています」
第30回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ
大会期間
2022年9月9日~9月19日
オープニングラウンド
2022年9月10日(土)4:00 イタリア 0 - 6 日本
2022年9月11日(日)8:00 メキシコ 1 - 4 日本
2022年9月12日(月)8:00 日本 5 - 4 パナマ
2022年9月13日(火)8:00 日本 10 - 0 オーストラリア
2022年9月14日(水)8:00 日本 2 - 9 チャイニーズ・タイペイ
※開始時刻は日本時間(フロリダ:時差-13時間)
スーパーラウンド
2022年9月16日(金)5:00 韓国 8 - 0 日本
2022年9月17日(土)5:00 日本 1 - 0 オランダ
2022年9月18日(日)22:30 アメリカ 4 - 3 日本
※開始時刻は日本時間(フロリダ:時差-13時間)
3位決定戦
2022年9月19日(月)4:00 韓国 2 - 6 日本
※開始時刻は日本時間(フロリダ:時差-13時間)
開催地
アメリカ(フロリダ)
出場する国と地域
グループA
アメリカ、韓国、オランダ、カナダ、ブラジル、南アフリカ
グループB
日本、チャイニーズ・タイペイ、メキシコ、オーストラリア、パナマ、イタリア