10月26日に行われたプロ野球ドラフト会議。7月にアメリカの地で躍動した侍ジャパン大学代表の選手たちにも続々と吉報が届いた。
今年の7月に行われた第44回 日米大学野球選手権大会で、アメリカ開催で史上2回目(2007年以来)となる優勝を果たした代表選手の中から15選手がドラフト指名を受け、そのうち7名が1位指名を受けた。そこで今回は彼らの日米大学野球選手権での活躍を振り返る。
日米大学野球選手権で優勝の立役者となった3選手
3球団から1位指名を受け抽選の結果、西武が交渉権を得た武内夏暉(國學院大)は好救援で優勝に貢献した。
第1戦の6回から2番手としてマウンドに上がると角度のあるストレートとチェンジアップなどのコンビネーションでアメリカ大学代表の強力打線を手玉に取り4回1安打1失点という好投で勝利に貢献しチームを勢いづけた。第4戦は2番手として登板し一時逆転を許す本塁打を浴びたが「問題はメンタルだったので」と優勝のかかった第5戦では修正。3番手として登板し1回3分の1を投げて無安打無四球という完璧な内容で好救援し優勝に貢献した。日米大学野球選手権で使用された海外メーカーの球は、国内メーカーの球に比べて滑りやすいと一般的に言われているが「腕だけではなく体全体で投げるイメージで投げました」と対応力の高さも光った。
広島と楽天が競合し、抽選の結果、広島が交渉権を得た常廣羽也斗(青山学院大)も鮮烈な活躍を見せた。第3戦で先発すると打線が完封負けで黒星こそ付いたが、力強いストレートにフォーク、カーブを効果的に織り交ぜて5回3分の2を投げて3安打7奪三振、自責点1の好投を見せた。さらに第4戦、第5戦では抑えを任されて安打を許さぬ好救援で、最後は胴上げ投手となった。
そして、この大会でMVPを獲得したのは、阪神がドラフト1位で指名し一本釣りに成功した下村海翔(青山学院大)だ。強者揃いの投手陣の中で開幕投手に抜てきされると、5回6安打1失点にまとめて勝利投手に。さらに負ければ優勝を逃すことになる第4戦では5回無安打の快投を見せると、優勝のかかった第5戦では8回に中継ぎとして登板し、無失点で最終回に繋ぐなどフル回転で3勝に関わり、文句無しの受賞だった。
細野の圧巻投球や進藤の好リードも光る
彼らに続く評価を受けたのが、外れ1位で中日とロッテが競合し抽選の結果中日が交渉権を獲得した草加勝(亜細亜大)、外れ1位で楽天に指名された古謝樹(桐蔭横浜大)、外れ外れ1位指名で日本ハムに1位指名を受けた細野晴希(東洋大)、外れ外れ外れ1位でロッテに指名を受け大学生野手トップの評価を得た上田希由翔(明治大)だ。
草加は第2戦に先発。3回まで危なげなく抑えるも4回に2本塁打を浴びて悔しい敗戦。一方で第4戦では3番手として1回3分の2を無安打に抑える好救援を見せた。
古謝は層の厚い投手陣の中で2試合1イニングのみの登板、上田は3試合で5番を任されたが第3戦で牽制球を首に受け負傷欠場に追い込まれ5打数2安打と不完全燃焼に終わった。しかし、U-18代表の壮行試合では、古謝が打者2人をピシャリと抑え、上田がライトスタンドに飛び込む本塁打を放つなど高い能力を見せつけた。
細野は2試合の救援登板を経て、優勝のかかった最終戦の先発を任された。初回は四球と2つの暴投などで先制を許すが2回からは見違えるような投球を見せる。「勇気を出して軽く投げるようにしてみました」と修正を図ったところ、ストライクゾーンに力強いストレートと切れ味鋭いスライダーがどんどんと集まり、パワーある打者たちをねじ伏せ5回3分の2を投げて3安打2失点。大会最優秀投手に選出された。また、U-18代表の壮行試合では日本アマチュア球界の左腕で過去最速となる158キロを計測。大きなインパクトを残した。
日本ハムに2位指名された進藤勇也(上武大)は全5試合に先発。打者としては15打数1安打と苦しんだが、捕手としては「緩急への対応が想像以上でした」と大会中に感じ、打者の目線を上手くずらすために高低を有効に使う配球に組み変えたところ、これが功を奏し投手陣を好投に導いた。
西武から2位指名を受けた上田大河(大阪商業大)は、昨年のハーレムベースボールウィークでは守護神として活躍したが今回は2試合1イニングの登板のみに終わった。だが、チームで主将を務めている好影響か試合後のミーティングで積極的に発言するなどマウンド以外での貢献も垣間見えた。
ソフトバンクから3位指名を受けた廣瀬隆太(慶應義塾大)は初戦で本塁打を打つなどチーム最多タイの4打点で貢献。帰国後記者会見では「まだ大学生の僕らにここまでのサポートをしてくださってありがたかったです」と感謝の気持ちを殊勝に語った。
この他には2試合1イニングの登板に終わった岩井俊介(名城大)、9打数無安打に終わった辻本倫太郎(仙台大)、2打席のみの出場で三振と四球に終わった宮崎一樹(山梨学院大)、1試合1回2失点に終わった村田賢一(明治大)も代表活動期間で得た経験や悔しさを糧に秋季リーグでも活躍し、それぞれソフバンク2位、中日3位、日本ハム3位、ソフトバンク4位で指名を受けた。
そして大学代表の選手で最後に指名を受けたのが楽天6位で、今回の代表の主将を務めた中島大輔(青山学院大)だ。誰からも慕われる性格でチームを牽引。自身は打撃で苦しみ2安打のみだったが、中島が出塁した際のベンチの盛り上がりは彼の人柄の良さが表れていた。
国際試合、特に海外開催でのMLB予備軍とも言えるアメリカ大学代表との激闘の経験は変え難い貴重なものだろう。そこで味わった勝利の喜びや不本意に終わった悔しさなど、様々なものが彼らの糧となり、プロ野球の世界でも生かされていくことに期待したい。