11月16日から19日まで東京ドームで行われた「カーネクスト アジアプロ野球チャンピオンシップ2023」は、侍ジャパンが僅差の試合も多かった中で勝ち切り、2017年の第1回大会に続く全勝優勝による連覇を達成。第1回大会に続き韓国が準優勝、チャイニーズ・タイペイが3位、初参加のオーストラリアが4位で幕を閉じた。
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初選出者ばかりでも見えた高い意識
参加資格が「24歳以下(1999年1月1日以降生まれ)または入団3年目以内。オーバーエイジ枠は29歳以下(1994年1月1日以降生まれ)で3名まで」となっているこの大会。ほとんどの選手が侍ジャパントップチーム初選出であり、トップカテゴリーでの世界一経験者は2019年のプレミア12優勝メンバーである田口麗斗(ヤクルト※オーバーエイジ枠)と、今春のWBC優勝メンバーである牧秀悟(DeNA)のみだった。
それでもチームの結束力の強さと向上心の高さは顕著なものだった。
田口や牧がグラウンド内外で積極的に声をかけ、各選手が勝利に向けて集中し、役割に徹した。決勝戦の延長10回のタイブレーク(無死一、二塁からの再開)で代打に送られた古賀悠斗(西武)が1球で犠打を決め、ベンチから選手全員が飛び出して祝福したシーンはその象徴だった。
また、選手たちの後押しによって主将役となった牧が「監督から言われなくても自発的に率先してやるチームでした」と振り返ったように、キャンプ中から選手たちの高い意識が随所に垣間見られた。
2日目には小園海斗(広島)と門脇誠(巨人)が守備の名手としても鳴らした井端弘和監督に直接指導を志願。個別指導は約1時間にも及んだ。そして、「教えていただいたことに自分の考えも入れて試行錯誤しています」と小園が振り返ったように、ただ聞くだけではなく、自分のものとなるように思考しながら吸収しようという姿勢を感じさせた。
こうした選手たちの行動に、井端監督は頼もしさを感じたという。
「初日は選手たち同士で様子を見ている感じがありましたが、2日目には打ち解けていましたし、居残りで練習する向上心もあった。何をするにしても、1つの目的を持って行動していて、日本のプロ野球の未来は明るいなと思いました」
そして「失敗した選手も成功した選手も、この経験をレギュラーシーズンに生かしてもらい、“日の丸を背負って勝つ”ということを頭の片隅に置いてくれれば、もっともっと強い侍ジャパンになっていくと思います」と言葉を続けて、選手たちのさらなる飛躍に期待した。
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肌で感じた他国のレベル向上
この大会は侍ジャパンだけでなく、韓国、チャイニーズ・タイペイ、オーストラリアの若手選手たちの台頭や、特に投手を中心とした守備のレベルアップが目立った。チャイニーズ・タイペイ戦は8回まで1得点、韓国戦は合計2得点のみに抑え込まれた。オーストラリア戦は10対0の8回コールドとなったが、そのオーストラリアは韓国、チャイニーズ・タイペイと2試合続けてロースコアで延長タイブレークに持ち込む接戦を展開した。
井端監督は「球速の速い投手がどのチームも出てきて、簡単には打てないなと感じました。接戦で細かいことをやる必要もあると感じましたし、アジアが世界に近づいたと感じました。どう太刀打ちするか考えなくてはいけません」と振り返った。
これまで日本野球の特長となっていたスピードも、今大会は盗塁を刺される場面が目立ち「捕手のスローだけでなく投手のクイックも向上していると分かりました。走塁が課題ですね。これまでできていた盗塁ができなくなると、これだけ苦しくなることを感じたので、対策を練って考えていきたいです」と課題に挙げた。
また、選手たちも収穫と課題それぞれを手にしただろう。大事になっていくのは、この大会の結果ではなく今後の姿勢だ。井端監督は「今回の結果が良かった選手を今後呼ぶ、悪かった選手を呼ばない、というわけではありません。悪かった選手も必ず何か技術や精神力を向上させてくれると思います」と強調する。
今後、2024年にプレミア12、2026年にWBC、2028年にロサンゼルスオリンピックと世界一を争う国際大会が続く。それだけに、若手中心の選手たちがこの大会で得たものは、侍ジャパンが世界の頂点に立ち続けるための大きな糧となったことは間違いない。
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