8月2日から始まった侍ジャパン社会人野球日本代表の一次合宿は、6日まで行われた。今回の一次合宿の目的は2つあった。ひとつは、“天然芝に慣れる”こと。そして2つ目は、“意思統一”だ。
まず、アジア競技大会の会場は天然芝のグラウンドのため、それに慣れる必要があった。そのため、今合宿でも使用した山形県の鶴岡グリーンスタジアムは、天然芝のため絶好の会場であった。
“意思統一”に関しては、今回の代表メンバーは7月に決まったため、アジア競技大会開幕まで僅か1か月半の短期間で団結力のあるチームに仕上げていかなければならない。小島啓民監督はそのために、宿舎では社会人選手にとっては珍しく、個人部屋ではなく、あえて団体部屋での寝泊まりや、移動でも、常に団体での行動を求めていった。選手間のミーティングも多く、合宿初日の練習開始前から、選手全員でミーティングをするなど、選手自身もまた意思統一を図るために、効率的に時間を使ってきた。
また、合宿前には、国際大会経験者が少ないことが不安材料のひとつであった。昨年の第6回東アジア競技大会の代表メンバーからは、吉田一将(JR東日本―オリックス)、石川歩(東京ガス―千葉ロッテ)など8人がプロ入りし、代表選手の顔ぶれはガラッと変わった。今大会は、代表初選出のメンバーが多いものの、強化試合を一試合ずつ重ねるごとに、代表チームとしてのまとまりが生まれてきた。
一次合宿中に組まれた強化試合は4試合。社会人野球日本代表は、初戦のきらやか銀行戦は3対3の引き分け。2戦目のTDK戦は3対0で勝利。さらに、3戦目のJR東日本東北戦は3対4で惜敗と、3試合を1勝1敗1引き分けで終え、最終日の横浜DeNAとの強化試合を迎えた。
試合は、初回に松本 晃(JR東日本)、井領雅貴(JX-ENEOS)のタイムリーで2点を先制。その裏、1点を失ったが、7回表にも多幡雄一(Honda)が適時打を放って、3対1とリードを広げる。しかし、8回裏に逆転3ランを打たれ、3対4と逆転される。
2点目の適時打を放つ井領雅貴
それでも、9回表に田中 健(新日鐵住金かずさマジック)の同点本塁打で、追いつき、試合は4対4の引き分けとなった。
小島監督は、5日間の一次合宿を終えて、こう振り返った。
「今回は暑い中で、徹底的に追い込んでいきました。強化試合ではいろいろ試すことができて、収穫になったところがあります。ただ、暑さから、多少パフォーマンスが落ちたところはありますが、9月になれば、そのあたりは良くなっていくと期待しています」。
また、横浜DeNAとの強化試合終了後、選手ひとり一人に、小島監督から課題を直接伝える場面も。
「選手が自分の課題を自覚し、自チームに帰ってから、しっかりとその課題を克服できるか。二次合宿のスタートでは、まずそのことを再確認していきます。アジア競技大会を制するにはこの1カ月間がとても大切になってきます」。
小島啓民監督
日本のライバルは韓国、台湾と言われている。今年の韓国代表は2009年のWBCに出場したイム・チャンヨン(サムソン)、2008年北京五輪、2009年WBC出場のキム・グァンヒョンなど国際大会経験豊富な韓国プロ野球選手を集結させたドリームチームだ。
台湾は前回の第16回アジア競技大会の準決勝で日本を破って銀メダルを獲得しているだけに警戒しなければならない相手だ。
両チームの印象に対しての小島監督はこう語った。
「強い相手でありますし、とくに韓国は力の差があると思います。それでも、我々はオ・スンファン(阪神)など韓国のトップレベルの選手が多くいた2006年のドーハで行われたアジア競技大会では、サヨナラ勝ちしています。一致団結をすれば、勝てる可能性があります。国際大会の戦い方はこれまででも学んできましたし、我々にも勝つための秘策はあります」
国際大会を見据えたチーム作りは着々と進んでいる。また、「今年は投手を中心とした守り勝つ野球で勝負する」と話す小島監督が、今大会での投手のキーマンを教えてくれた。
監督が名前を挙げたのは、左腕・片山 純一(JR東日本)、若手の横田 哲(セガサミー)、加藤 貴之(新日鐵住金かずさマジック)、関谷 亮太(JR東日本)の4選手。
「片山君は経験豊富だし、期待しています。横田君、加藤君、関谷君の3人は活躍してもらわないと困る3人。その中でも関谷君は成長が著しく、投球術が上手くなっている」
その関谷は、6日の横浜DeNA戦では5回から登板し、三者連続三振とプロ選手相手に好投をみせた。
横浜DeNA戦で好投する関谷亮太
それでも、今大会では継投策で、戦っていく日本代表。4名の選手以外も、選出された8人の投手全員の活躍が求められる。
また、前回の第16回アジア競技大会も経験し、銅メダルを手に帰国したキャプテン多幡雄一(Honda)も、今大会に賭ける思いは強い。
「前回の大会は僕も経験させてもらいましたが、銅メダルに終わってとても悔しい思いをしています。今回はそのリベンジを晴らすチャンス。韓国、台湾はものすごく強いですが、アマチュアらしく一致団結して、チーム力で倒していきたいと思います」とコメント。
キャプテン・多幡雄一
無事に5日間の一次合宿を終えた侍ジャパン社会人野球日本代表。成果と課題を旨にこれからの1か月、自分のチームで腕を磨いていく。
なお侍ジャパン社会人野球日本代表は、9月12日~17日まで関東で二次合宿を行い、9月13日には千葉ロッテと強化試合を実施予定。韓国・仁川で行われる第17回アジア競技大会は、9月21日に開幕となる。