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バントやシートノック無しで世界一 社会人野球の若き精鋭たちが見せた「新しい侍ジャパンの野球」

2022年10月25日

 10月13日から10月23日まで台湾で行われた「第4回 WBSC U-23ワールドカップ」は侍ジャパンU-23代表の3大会ぶり2回目の優勝で幕を閉じた。第1回大会(2016年/メキシコ開催)ではプロアマ混成チームでの栄冠だったが、今大会は社会人野球の若手選手のみで果たした快挙だった。
 他チームにはプロ選手が多く揃う中、チームの共通テーマに掲げた『チャレンジ』という言葉通り、積極果敢に戦った結果が最高の形となって表れた。

「日本の野球」でイメージされるものと言えば、高い投手力を生かした「1点を守り抜く野球」というものが真っ先に挙がるだろう。また得点パターンも機動力や小技を生かすことを重要視することが多い。
 だが、侍ジャパン社会人代表の指揮も執る石井章夫監督は、国際大会での経験や海外視察を重ねる中で「堅実な野球だけでは通用しない。大胆さも必要」「新しい侍ジャパンの野球を示す必要がある」と考えた。

 まず攻撃面に関しては、パワーのある選手を中心に選考を行い「内野ゴロはいらない。外野に打球を飛ばそう」と長打を意識した打撃を心がけることを求め、低めの変化球は見逃し三振OK、高めの球を外野に飛ばすことを意識させた。
 さらに、今大会でバントのサインは一度も出なかった。追い込まれてからも力強いスイングをする選手たちを見て、他チームの監督は「日本の野球のイメージが変わった」と驚いたという。

 投手陣にも打者に向かっていくことを最も重要視させた。各投手は思いきり腕を振ってキレの良いストレートを投げ込み、かわす投球ではなく強気に攻めていった結果、9試合をわずか10失点に抑えた。
 また、個々で課題を持つことを大事にし、全体練習は極力少なくして、個別練習に多くの時間を充てた。アップを各自で行うことだけでなく、シートノックも一切行わず、試合前ですらも各選手たちが決めた練習をコーチたちとともに行う形を取った。
 所属チームとは違う練習および調整スタイルだっただろうが、選手たちは自己判断能力を高めていった。大会を通して守備のミスは数えるほどで、三塁手でベストナインを獲得した中川拓紀(Honda鈴鹿)や遊撃手を務めた中村迅(NTT東日本)の三遊間や3人を満遍なく起用した捕手陣を中心とした好守が目立った。

 加えて、スポーツサイコロジスト(スポーツ心理学博士)の布施努氏やクオリティコントロール(計測によるデータ分析を担当)の島孝明氏をスタッフに登用するなど、選手たちをあらゆる面からサポートできる体制を整えた。
 接戦となる試合がほとんどだったが、選手たちはブレることなくやるべきことをやり、日替わりでヒーローが生まれ、誰かに依存することなく全員の力で勝ち切った。

 石井監督は10月24日の解団式で「皆さんのゴールは昨日の勝利じゃない。これからもチャレンジし続けていってください」と選手たちにエールを送った。23歳以下の若い選手たちだけに、その可能性はより無限大に広がる。この国際大会で得た経験や挑戦の成果を発揮し、さらなる大きな舞台での活躍を心から楽しみにしたい。
 また社会人代表で戦う第19回アジア競技大会(2023年9月23日~10月8日で中国・杭州にて開催予定)も来年に控え、今回の代表から複数の選手が選出される可能性が高い。今回の優勝と果敢に世界に挑んだ経験を知る選手の加入は、さらなる活力をもたらしてくれるだろう。
 今年の侍ジャパン各世代で初の世界大会優勝になったことだけでなく、「新しい侍ジャパンの野球」を存分に見せた侍ジャパンU-23代表の挑戦がもたらしたものは実に大きい。

優勝記者会見コメント

石井章夫監督

「“海外でいかに日本人がダイナミックにプレーできるか”というチャレンジをした結果だと思います。勝つために、日本の野球をさらに高めるためにチャレンジしようと伝えました。チャレンジする中で失敗はするかもしれないけど、そこはチームでカバーしていこうとチーム作りをしてきました。今後もパワーやスピードはもっともっと高めていきたいと思っていますし、期待をしています」

中村迅(NTT東日本)主将

「世界一を目標にやってきたので、それが実現できて嬉しいです。チームとして1つになることができました。こういう野球をしようというものが明確にあったので優勝できたと思います。世界のすごい選手、チームと戦ってきたので自チームでもこの経験を生かして日々成長できるように頑張ります」

権田琉成(TDK)

MVP、ベストナイン(救援投手)
「周りのサポートのおかげです。大会期間中はストレートで押していくことにチャレンジしました。打者に立ち向かうことができました。自分自身もすごく成長できたので、今後もやらなければいけないと感じたことをしっかりとやっていきたいです」

富田蓮(三菱自動車岡崎)

最優秀投手、ベストナイン(先発)
「自信のあるストレートをしっかり投げきることができて、どれだけ通用するかを世界相手に試すことができました。実際にストレートで押すことができましたし、緩急を使って圧倒することもできたので自信になりました」

大西蓮(JR東日本東北)

首位打者、ベストナイン(指名打者)
「チャレンジの気持ちを忘れずに積極的にバットを振っていった結果だったと思います。ストレートに振り遅れないことを意識してきました。成長できたことを自チームに持ち帰って貢献していきたいです。社会人の良い投手のストレートも弾き返していきたいです」

中川拓紀(Honda鈴鹿)

ベストナイン(三塁手)
「これまでやったことがなかった三塁手でベストナインを獲ることができたので、今後に繋がる良い機会になりました。来年の都市対抗や日本選手権、目標としているプロ入りに向けてレベルアップしていきたいです」

第4回 WBSC U-23ワールドカップ

大会概要 出場選手 放送予定

大会期間

2022年10月13日~10月23日

オープニングラウンド

10月14日(金)18:00 ドイツ 0 - 6 日本
10月15日(土)15:30 ベネズエラ 2 - 5 日本
10月16日(日)20:00 日本 1 - 3 チャイニーズ・タイペイ
10月17日(月)15:30 日本 4 - 1 コロンビア
10月18日(火)15:30 南アフリカ 0 - 9 日本

スーパーラウンド

10月20日(木)15:30 日本 2 - 1 オーストラリア
10月21日(金)15:30 韓国 1 - 2 日本
10月22日(土)14:00 日本 4 - 2 メキシコ

決勝

10月23日(日)20:00 日本 3 - 0 韓国

※開始時刻は日本時間(台北:時差-1時間)

開催地

台湾(台北)

出場する国と地域

グループA
日本、チャイニーズ・タイペイ、コロンビア、ドイツ、南アフリカ、ベネズエラ

グループB
オーストラリア、キューバ、メキシコ、オランダ、プエルトリコ、韓国

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