7月7日、第9回 WBSC 女子野球ワールドカップ グループステージB(広島県三次市で9月13日から17日)に向けた侍ジャパン女子代表の強化合宿の2日目が行われた。大会の開催地である広島県三次市に場所を移し、関係各所への表敬訪問や交流事業を実施した後、同市にある三次きんさいスタジアムで公式練習を行った。
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
合宿2日目は、女子野球をシティプロモーションとして活用し、地域活性化を目指す自治体「女子野球タウン」に認定されるなど、女子野球を旗印とした町おこしに力を入れる三次市役所を訪問。中島梨紗監督をはじめとしたスタッフ陣と選手全員で、福岡誠志市長らと挨拶を交わした。
その後は「交通安全七夕まつり」に参加し、地元の三次中央幼稚園の園児たちとの交流事業を実施。それだけでなく、チームを3班に分け、三次市立八次中学校、三次市立青河小学校、専法寺保育園へ訪問して交流を行い、生徒や園児に女子野球と来たる大会を熱烈にアピールした。
交流事業終了後は、各訪問先から三次きんさいスタジアムに移動。練習に先立ち、広島県出身のシンガーソングライター・HIPPY氏がグラウンドに登場し、自身の代表曲である『君に捧げる応援歌』を熱唱、代表選手たちとの合唱も披露した。
公式戦の登場曲に採用するプロ野球選手も多くいるなど、ストレートで熱い歌詞が特徴の同曲を聴き、出口彩香(埼玉西武ライオンズ・レディース)は「鳥肌が立ち、『よし、やるぞ!』という気持ちになった」、同氏のライブに訪れたことがあるという村松珠希(はつかいちサンブレイズ)も「とても熱い歌で歓迎していただいてうれしかった」と語るなど、多くの選手が心揺さぶられたようだった。
その後、昼食休憩を挟み、14時から公式練習がスタート。この日は午後から小雨が降り始め、時折強い雨も降る中での練習となったが、全面人工芝で悪天候に強い三次きんさいスタジアムの環境にも助けられ、シート打撃と投内連携を中心としたメニューをこなした。
シート打撃での守備や投内連携で想定したプレーができなかった際には、すかさず中島監督がミスの原因を鋭く指摘。合わせて、求めているプレーを明確に伝え、目指す野球の浸透に力を注いだ。
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
投内連携終了後は、野手陣が室内練習場で追加の打撃練習を行い、公式練習が終了した。報道陣の前に現れた中島監督は「雨が心配だったので、あらかじめ決めていた(メニューから)少し順番を入れ替えたりしましたが、一通りできたのがよかったと思います」と安堵の表情。そして、「人工芝だからできたなというところがあったので、このスタジアムでやらせていただけてよかったです」と三次きんさいスタジアムと、この環境を用意してくれた三次市への感謝の言葉を続けた。
本格的な合宿スタートの一日を終え、目立っていた選手を投手、野手それぞれ聞かれた中島監督は「(先月まで戦った)アジアカップでは投手のインコースの攻め方に課題がありましたが、そこを意識して取り組んでくれて、全体的によくなってきています」。続いて野手については、「(雨で守備練習に大きく時間を割けず)守備は明日以降見ていけたら。打撃はやはりベテランの川端(友紀、九州ハニーズ)。アジアカップでも調子がよかった只埜(榛奈、東海NEXUS)もしっかり振れていた印象でした」と語った。
練習中に印象的だったのは、選手間での意見交換やアドバイスも積極的に行われていた点。アジアカップで大会MVPを獲得した田中露朝(ZENKO BEAMS)は、シート打撃前のキャッチボールの相手だった堀田ありさに、スライダーの感覚を熱心に質問していた。田中の決め球でもあるスライダーは「手元で切って」リリースするというが、堀田からは「(指をボールの)裏まで回して投げる」感覚を伝授された。早速キャッチボールから試行した田中は「まだ感覚がわかっていないんですが、掴むことができれば、また新しいスライダーになると思います」と、自分自身の新たな可能性に目を輝かせた。
逆に投内連携では、田中が代表歴の浅い選手たちにフィールディングをレクチャーするなど、各選手が成長のヒントを貪欲に探し続けた。
アジアカップの3大会連続制覇に満足することなく、練習初日にも高い意識を見せた侍ジャパン女子代表。合宿3日目となる8日は、公式練習と阪神タイガースWomenとのエキシビションマッチが三次きんさいスタジアムで予定されている。
監督・選手コメント
中島梨紗監督
「(前日の出陣式や今回の交流事業などで)応援していただいていると感じたし、これを機に女子野球が広がっていってほしいと思っています。プレーに関しては、まだまだ細かいサインプレー、内野の連携、投内、内外野の連携など詰めていかないといけない。守備から流れをつくっていく野球をしていきたいので、ミスなく、練習で100%できるように突き詰めていきたいです。選手たちはいい状態で入って来てくれていると感じています。実戦を通じて、チームとしての課題、個々の課題それぞれをクリアにしていきたいです」
川端友紀(九州ハニーズ)
「実戦があるので、チームで確認しないといけないところを細かく確認して、大会本番でミスをしないようにしたいです。(三次きんさいスタジアムは)すばらしい球場で、これだけ雨が降っても問題なくプレーができて、感謝しています。雨が降った際の球場の状況の確認もできて、大会も同じ環境でプレーできるのでプラスになると思います。練習までに色々なイベントに参加させていただいて、三次市の温かさ、子どもたちの笑顔に振れることができて、三次市でワールドカップができる喜びを実感しました。関わった方々の顔を思い浮かべながらプレーしたいです」