9月10日、「カーネクスト presents 第9回 WBSC女子野球ワールドカップ・グループB」(広島県三次市で9月13日から17日)に向けた侍ジャパン女子代表の強化合宿3日目が、愛媛県松山市内で行われた。
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
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


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三次市への移動前の最後の練習となったこの日は、移動中こそ雨がパラついたもののグラウンドでは日差しが降り注いでいた。
まずウォーミングアップではこれまで同様、明るい雰囲気の中で体をほぐした。途中、泰美勝(ZENKO BEAMS)が指示をする投手役となり、泰の動きが投球、けん制のいずれかを見極めた選手たちがリードを取った状態からダッシュ、もしくは帰塁するメニューが組まれた。泰のうまいけん制に惑わされる選手が現れると、選手たちには笑顔がこぼれるシーンも。
その後はサインを確認しながらの投内連係や挟殺プレーを丁寧に行った。選手たちはワンプレーが終わると、互いに「あの場所だったら行ける」など守備範囲を確認しあい、またいいプレーには「ナイスピー!」など声を出し、士気を高めていった。
ケースバッティングでは実際に選手がランナー役も務め、想定した状況から実戦に近い形で打席に立った。また選手自身が練習したい状況を各自で申告してのバッティングも行い、不安解消に努めた。
そしてフリーバッティングなど打撃練習を終えると、前日に引き続き特別ルールの下、松山市中学生選抜チームと練習試合が行われた。
小雨が降る中開始した一戦、先制したのは侍ジャパン女子代表だった。初回、先頭の小島也弥(九州ハニーズ)が四球で出塁し、犠打とライトフライで2死三塁とすると、川端友紀(九州ハニーズ)のタイムリーで先制。無死一、二塁のタイブレークで迎えた2回は、犠打と申告敬遠で1死満塁とすると岩見香枝(埼玉西武ライオンズ・レディース)の犠飛で2点目を挙げた。さらに同点の4回には2死一、二塁から代打・泉由希菜(淡路BRAVE OCEANS)がレフトへ2点タイムリー二塁打を放ち、勝ち越しに成功した。
侍ジャパン女子代表の先発バッテリーは里綾実(埼玉西武ライオンズ・レディース)と英菜々子(埼玉西武ライオンズ・レディース)。3大会連続MVPの里は立ち上がり、テンポよく2死を奪うが2連打で2死一、二塁のピンチを招く。続く打者にレフト前へヒットを打たれるが、ホームを狙った二塁走者を三本間の挟殺プレーで刺し、無失点で切り抜ける。だがタイブレークの2回に、四球などで1死満塁とすると、タイムリーヒットと押し出し四球で同点に追いつかれた。
前日に合流したばかりの泰は2番手として登板。「選ばれた時は正直、不安な部分もあったんですけど、自分にできることをやろうと思って来ました。みんな温かく迎えてくれてチームに入りやすかったです」と仲間が作り出す、温かい雰囲気のよさでチームに溶け込みながら短期間の調整で迎えたマウンドは、2死から二塁打と2死球で満塁のピンチを招いたものの後続を打ち取って無失点に抑えた。
4回からは田中露朝(ZENKO BEAMS)が登板し、得点圏へ走者を背負ったがこちらも粘りのピッチングで無失点に切り抜け、タイブレークとなった5回は1失点と最少失点で凌いだ。 6回からは特別ルールにより再び里が登板。「追い込んでから変化球で打ち取りにいったボールが甘く入ってしまったので、しっかり腕を振ることを意識した」と先発マウンドを反省。飛び出した三塁走者を封殺できずに生還を許して同点とされたが、見事修正。中島監督も「丁寧に行きすぎるところが見られたので、『大胆に思い切って、テンポよく』と2回が終わって話をしました。その意識をしていいピッチングをしてくれたのでよかった」と評価した。
再び同点とされた侍ジャパン女子代表だったが直後の7回、2死二塁から途中出場の星川あかり(淡路BRAVE OCEANS)が勝ち越しタイムリーを放ち5対4。途中から強い雨に見舞われた試合も、最後は堀田ありさ(東海NEXUS)が三者凡退に抑えて勝利した。

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
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3日間の強化合宿を終えた中島梨紗監督は「こちらのわがままで変則的な流れにさせていただき、それを快く承諾してくださった選手と監督さんには感謝の気持ちしかありません」と練習試合に触れ、「どんな形であれ、最後の最後に勝ち切れたことはすごく大きかったと思います」と手応えを述べた。さらに大会に向けては「日本の女子野球のレベルの高さや、海外の選手のパワーやスピードといろんな魅力が詰まった大会になると思いますので、一人でも多くの方に見ていただいて女子野球を応援していただけるように頑張りたいと思います」と意気込んだ。
チームは明日11日に大会が行われる三次市へ移動。大会7連覇へ向け、13日から全5試合を戦うグループステージBに挑む。
監督・選手コメント
中島梨紗監督
「充実した3日間を過ごせました。挟殺プレーでは昨日ミスが出ましたし、相手のミスで始まる挟殺なので、こちらが焦らずきっちりアウトが取れるように、試合の中でできたことがすごく大きかったです。先制点は必ずこちらが取って流れを掴んで離さないということをずっとやってきている中で、いい形で先制できたことは収穫だと思います」
里綾実(埼玉西武ライオンズ・レディース)
「ピッチング自体はそんなに悪くなかったと思いました。ただこの合宿ではサインプレーを多く練習していたので、それを意識しすぎた部分がありました。海外の選手やW杯を目指す選手からは、3大会連続MVPとして見られていると思うのでプレッシャーがかかる部分ですが、自覚を持って、プレー内外でそういう姿勢を見せられたらなと思います。プレッシャーはあるのですが、私もたくさん経験をしてきた分怖さも知っているので、そういうところを共有、準備をしてみんながベストを出せるように。そして女子野球で皆さんを感動させられるように精一杯頑張りたいと思いますので、応援よろしくお願いいたします」
泉由希菜(淡路BRAVE OCEANS)
「(代打出場の心構えとして)なるべく緊張をしないという意識は常に持っています。自分のスイングができるように準備はしているのですが、なかなかうまくいかないところも多いのですが、1回のスイングで決められるように意識しています。一戦一戦、日本らしく戦っていきます。そして私の持ち味である長打力、打球の速さを皆さんに見せたいと思うので、熱いご声援をお願いいたします」
星川あかり(淡路BRAVE OCEANS)
「レベルの高い選手とできることが自分自身のレベルアップにつながりますし、大会中も学べることがたくさんあるので、いろいろ吸収してレベルアップしていきたいです。前回の合宿はサインプレーが本当に多かったのですが、今日は緊迫した状態で試合の中でもサインプレーができたので、しっかり確認ができました。(前回の合宿から)期間が空いてしまったので初日はよそよそしい部分が全体的にあったかなと思いますが、3日目はしっかり試合も重ねてチーム力も上がっていると思います。いい状態で本大会に臨めると思います」