9月18日(日本時間19日)、アメリカ・フロリダ州で開催されている「第30回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」が閉幕。決勝戦は前回大会(2019年)と同じ組み合わせになったが、前回の決勝戦に加え今大会のスーパーラウンドでもチャイニーズ・タイペイに敗れていたアメリカが雪辱を果たし、地元開催で2大会ぶり10回目の優勝を果たした。これでアメリカは今年、U-12、U-15に続くワールドカップ制覇を果たした。
修正・適応し熟成していったチーム
初優勝を目指した侍ジャパンU-18代表は韓国を3位決定戦で下し、2017年の第28回大会以来2大会ぶりとなる3位、銅メダル獲得となった。
開幕4連勝の後のオープニングラウンド最終戦のチャイニーズ・タイペイ戦に2対9で敗れると、スーパーラウンド初戦の韓国戦では主将の山田陽翔(近江)を先発に起用するも早々とノックアウトされ、打線も沈黙。0対8の完敗を喫した。
この連敗によって重い空気が流れたが、それを払拭したのは、今大会最多タイ・チーム最多の3勝を挙げた川原嗣貴(大阪桐蔭)の気迫あふれる投球だった。国内合宿期間中は精彩を欠いた投球が目立って心配されたが、大会が始まってみると連敗後のオランダ戦で先発し5回無失点に抑える好投で白星をもたらすなど、4試合13回無失点の内容で大会最優秀投手にも選ばれた。
際立ったのは高い適応力だ。「海外のマウンドは硬くて体を沈み込ませることができないので、リリースポイントを意識的に下げました」と修正。もともと力強さのあったストレートとその軌道から鋭く曲がるカットボールやスライダーという武器に、制球力も加わり他チームは対抗できなくなった。投手陣はこの川原に加え、生盛亜勇太(興南)も防御率1.27と活躍。球審の特徴によってストライクゾーンがまちまちになる国際大会では、きめ細かな制球力を擁する投手よりも球威で押していける投手の活躍が大会全体を通して目立った。
その他の日本選手たちも、なかなか安打が出ない試合や、バントや走塁のミス、失策が要所で出る試合もあったが、最終戦となった3位決定戦・韓国戦では打線が繋がり好守も連発。最後までバントの成功率は高いと言えなかったが、11安打6得点、被安打4本・無失策の内容で6対2と雪辱を果たし、銅メダルを獲得した。
文化や食事が普段とは異なる生活、内野天然芝の球場、頻繁にあった雨天中断などを乗り越えチームとして熟成していった。
主将を務めた山田陽翔主将(近江)は「すごくまとまったチームでまとめやすかったですね。みんなに支えてもらったなという印象が一番強いです。本当に仲の良い終始笑顔のあふれるチームになったかと思います」と仲間たちに感謝した。
悲願の初優勝を飾るために
馬淵史郎監督も初めてU-18ワールドカップで指揮をしたことで感じたこともあったという。まずはU-18世代では初めて採用された7イニング制に触れ「3回までが勝負。先手必勝のオーダーなど、もっとその中での戦いを考えていかなくてはいけません」と語った。また普段指揮を執る明徳義塾で戦うトーナメント制の国内公式戦とは違い、10日間で9試合を行うリーグ戦のため、先を見据えた起用法や戦術の必要性についても語っていた。
他国に目を向けるとアメリカの投打にわたるパワーや技術力の進化がさらに続いていることに加え、同じアジアのチャイニーズ・タイペイや韓国もアメリカに負けないようなパワーを兼ね備えてきていることも印象的だった。
打撃の数値で見ても、特にアメリカ(9本塁打、長打率.487)と韓国(4本塁打、長打率.413)の長打力は、日本(1本塁打、長打率.301)と比べると明らかに上回っている。
そうした列強を相手に今回、野手は機動力や守備力、小技ができる技術力の高い選手を中心に選び、投手は制球力の良い選手を中心に選んだ。次回大会(2023年開催予定)は、そうした相手だからこそ今回の選考基準の精度を上げていくのか、それとも異なる基準で選考していくのか注目だ。
そして、今回の代表選手たちは来年からプロや大学などに進む。山田が「次の世代でまた侍ジャパンに選んでいただき、今回叶えられなかった世界一の目標を叶えたいです」と抱負を語ったように、今回の経験を糧にさらなる飛躍を遂げ、再び侍ジャパンのユニホームを纏い、今回届かなかった世界の頂を掴んで欲しい。
選手コメント
川原嗣貴(大阪桐蔭)
3勝0敗、防御率0.00の活躍で最優秀投手とベストナイン(救援投手)獲得
「素直に嬉しいです。守ってくれた野手の仲間に感謝です。すごく濃い時間になりました。パワーで上回る海外の選手相手に結果を残せたことは自信になります。これからも感謝を感動で返していけるように信念を貫いていきたいです」
松尾汐恩(大阪桐蔭)
打率.321、6打点の活躍でベストナイン(捕手)を獲得
「優勝できなかったのは悔しいですが、3位になれて嬉しい気持ちです。上手くいかないことが続いたのですが、試合を重ねていくうちに自分たちの野球を信じることができました。今日は(継続試合の)アメリカ戦で打撃が硬くなっていたので、もっとリラックスしようと脚をロックさせない打ち方を試すなどいろいろ試しながらやることができました。ここで経験したことをチームに持ち帰って次の公式戦である国体に生かしていきたいです」
第30回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ
大会期間
2022年9月9日~9月19日
オープニングラウンド
2022年9月10日(土)4:00 イタリア 0 - 6 日本
2022年9月11日(日)8:00 メキシコ 1 - 4 日本
2022年9月12日(月)8:00 日本 5 - 4 パナマ
2022年9月13日(火)8:00 日本 10 - 0 オーストラリア
2022年9月14日(水)8:00 日本 2 - 9 チャイニーズ・タイペイ
※開始時刻は日本時間(フロリダ:時差-13時間)
スーパーラウンド
2022年9月16日(金)5:00 韓国 8 - 0 日本
2022年9月17日(土)5:00 日本 1 - 0 オランダ
2022年9月18日(日)22:30 アメリカ 4 - 3 日本
※開始時刻は日本時間(フロリダ:時差-13時間)
3位決定戦
2022年9月19日(月)4:00 韓国 2 - 6 日本
※開始時刻は日本時間(フロリダ:時差-13時間)
開催地
アメリカ(フロリダ)
出場する国と地域
グループA
アメリカ、韓国、オランダ、カナダ、ブラジル、南アフリカ
グループB
日本、チャイニーズ・タイペイ、メキシコ、オーストラリア、パナマ、イタリア