ライン川沿いの干拓地に広がる風車とチューリップ。そしてヨーロッパにおける野球の発祥国。それがオランダである。野球・ソフトボールを統括する「オランダ王立野球・ソフトボール協会」は1912年創設。現在も続く国内リーグ「フーフト・クラッセ」は1922年からスタートしている。
また、1961年からはオランダ王立野球・ソフトボール協会主催の国際大会「ハーレムベースボールウィーク」もおおよそ2年おきに開催。中南米カリブ海に浮かぶオランダ領・キュラソー島出身選手などの力も貯えながら選手たちの実力を向上させてきた。
それらの強化策は、近年めざましい形で表れている。「WORLD BASEBALL CLASSIC™」(以下、WBC)」においては2006年の第1回大会でパナマから1勝。2009年の第2回大会ではドミニカに連勝して2次ラウンド進出。2011年の「第39回IBAFワールドカップ」ではついに国際大会初優勝。そして2013年の前回WBCでは1次ラウンドでオーストラリア、韓国を下し、2次ラウンドでもキューバに連勝。決勝トーナメントでは優勝したドミニカに1対4で惜敗したが、オランダ野球の着実な躍進を強烈に印象付ける結果となった。
R.バンデンハーク
今大会の選手たちは、そのベスト4メンバーが中心。MLB勢に加え、日本プロ野球の実力者たちも爪を研いでいる。一例は1次リーグプールA・韓国戦で先発4回無失点の柱・バンデンハーク。WBCは2大会ぶりの出場となるがMLBでも50試合の登板経験があり、福岡ソフトバンクの2年間でも16勝3敗。150キロをゆうに超えるストレートと、宝刀ナックルカーブ、チェンジアップなどの多彩な変化球は対戦相手に脅威を与える。
また、216センチの長身から角度のあるボールを投げおろすクローザーのファンミル(キュラソー・ネプチューンズ)は2014年に東北楽天で7試合登板に終わった日本の地での凱旋登板を志す。
W.バレンティン
打者はなんといっても4番のバレンティン。2013年に日本プロ野球新記録となる60本塁打。東京ヤクルトでの6年間で30本塁打5度、本塁打王3度を獲得した長打力と日本投手への対応力は東京ドームでもチームを鼓舞する材料となるはず。また、プロファー(レンジャーズ)は守備範囲の広い中堅手としてばかりでなく、2番として戦術理解力も高い。
A.シモンズ
今大会はやや不振ながら、シモンズ(ブレーブス)、ボガーツ(レッドソックス)、J.スクープ(オリオールズ)はいずれもMLBの実績十分。6番に座るグリゴリアス(ヤンキース)は1次リーグプールAでの好調を維持したまま東京ドームに乗り込む。
ベンチにも日本の野球ファンにとっては懐かしい顔が居並ぶ。ジャイアンツでコーチを務め、WBC前回大会からオランダの監督を務めるミューレンスは、1994年に日本初のオランダ人選手として千葉ロッテに入団。1995年から2年間はヤクルト恐怖の8番打者として1995年のチーム日本一に関わっている。
また、今大会はコーチとしてベンチ入りのアンドリュー・ジョーンズはMLB17年間で2196試合出場。2013年から2年間は東北楽天でプレーし2013年にはチーム初の日本一に大きく貢献。「A.J」の愛称で東北に夢と希望を与えてくれた。
目指すのは縁が深い日本の地を勝ち抜いてのアメリカ再上陸。そして初のWBC頂点。着実に石垣を積み上げたオランダには、その資格が十二分にある。