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"世界の野球"【第5回】清水直行 ニュージーランド野球の世界挑戦記「日々の練習」

2015年4月6日

文・写真=元 野球日本代表 清水直行

 学校の授業を終えた子供たちが、バットやグラブを手に集まってきた。オークランド近郊にある地元の野球クラブ。ここでは夏のこの時期、毎週火曜日と木曜日に2回の練習が行われる。
 ニュージーランドの夏は日照時間が驚くほど長い。日没は午後9時を過ぎるくらいだ。午後4時ならまだ太陽が高い。強い日差しに、この地では日焼け止めが欠かせない。

 キャッチボールやノックなど、指導の担い手は地元のボランティアだ。代表チームの活動とは関係しないが、私も時間を見つけてはこのクラブの練習に駆けつけている。
 内野や外野にノックを打ち、連携プレーの指示も飛ばす。現役を離れても、白球と戯れるのは本当に楽しい。練習時間の2時間はあっという間に過ぎていく。
 学校や仕事に追われ、余暇を楽しむ文化に乏しいに日本に比べ、ニュージーランドの人たちはとてもアクティブだ。

 世界的に有名な大自然がたくさんあることも影響しているのかもしれない。海もきれいだ。私が住むオークランドにも、ミッションベイやムリワイビーチなど名前のあるビーチがいくつもある。学校が終わり、仕事が終わり、住民たちはそれぞれに時間を有効に使って趣味を楽しむ。海で泳ぐ人もいれば、マリンスポーツを満喫している人もいる。所有する船やヨットで沖へと繰り出し、友人や家族とディナーを楽しむ人たちもいる。

 子供たちはというと、学校の授業が終わる午後3時以降は放課後の自由時間だ。学校によって多少異なることはあっても、だいたいは「放課後の部活動」が多くない。その代わりアフタースクールが用意されている。和訳がむずかしいが、塾のような存在だ。塾といっても勉強だけではないところが日本と違うのだが。では何をするかというと、スポーツやアートなのだ。その中に、野球もある。冒頭は、そんな時間を使って野球を楽しんでいる子供たちの様子なのだ。

 野球の練習が終わると、子供たちはスパイクやシューズを脱いで柔らかい芝生の上でくつろぐ。ゆっくりと流れる時間。ほのぼのとした雰囲気は何ともいえない。こんな環境だからこそ、「もっと強化を」と焦るよりも、「ゆっくりやっていこう」と大きな可能性を感じつつ、現地の雰囲気に溶け込むことから始めえている。私も芝生に横たわる。相変わらず日差しは強い。そして、空はまだ透き通るほどに青い。

清水直行 ニュージーランド野球の世界挑戦記
著者プロフィール
清水直行(しみず なおゆき)
1975年11月24日生まれ 京都府出身。日大、東芝府中を経て、99年にドラフト2位でロッテに入団。2002年から5年連続で規定投球回、2桁勝利を継続し、エースとして活躍。05年は31年ぶりの日本一にも貢献した。04年のアテネ五輪、06年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に日本代表として出場。10年から横浜(現:横浜DeNA)。プロ12年間で通算105勝、防御率4.16。現役引退後は、ニュージーランド野球連盟ゼネラルマネジャー補佐、同国の代表統括コーチを務める。

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