文・写真=元 野球日本代表 清水直行
ニュージーランドでは、3月に行われた全国大会の閉幕とともに国内の野球シーズンが終わりを告げた。しかし、今年は大きな大会が一つ、残っている。7月に行われるU15野球ワールドカップだ。そう、日本の福島で開催される15歳以下の国際大会にニュージーランドも参加する。
U15練習スケジュールについては「スクールホリデー期間」を事前に決めていた。オークランドでは学生のターム(学期)が4つに分かれており、タームとタームの間にある2週間の休日がある。この休日のことをスクールホリデーと呼んでいる。ちなみに、学年が切り替わる2月前、12月中旬から2月はじめまでの1か月半のホリデー期間を、サマーホリデーとも呼ぶ。そういうスケジュールがあるため、チーム全体でのまとまった練習期間を4月中旬の1週間になった。スクールホリデーに全体練習を行わなければならないのにはもうひとつ理由がある。それは、代表チームに選ばれている選手の半分が普段はオークランドにおらず、オークランドから離れた主要都市のウェリントンやクライストチャーチ、それからお隣のオーストラリアで生活をしているからだ。そういった選手がオークランドに集まれる時間であり、選手同士のご家庭で短期ホームステイとして受け入れがしやすい、学校登校のないスクールホリデー期間が望ましいということもあるのだ。
練習時間は、午後12時から午後4時までの4時間。まずは倉庫からボールやベース、ネットなどの用具を出して全員で設置し準備をする。チームには私を含めコーチが4人。練習メニューの確認も自分たちの仕事だ。中でも練習メニューを考えるのは私の重要な責任だ。ウォーミングアップからはじめ、体が温まるとダッシュへと移る。ダッシュの前には、走りながらのステップ動作などで運動神経を刺激させている。ダッシュでは、シチュエーションを想定させて、ストップ動作でありシャッフル動作をミックスさせて、試合中に起こる可能性がある走りで鍛える。次はキャッチボール。動きながらのキャッチボールを取り入れている。ワールドカップに出場するU15チームでは、硬球を使用しているため、一日に多く投げすぎることや長い距離での遠投はさせていないため、数より質を考えているからである。ただ、ある程度数多くは投げる動作をやらなければ、肩や肘、体幹や下半身に、投げる筋力がついてこない。その強化とケアーのバランスが今でもいつも難しい。
守備練習は、コーチ全員で取り組む。これまでは使えるボールの数も少なく、すぐにノックのボールがなくなってしまった。練習を中断してのボール集めは効率も悪かった。しかし、今年からは使用球の在庫が豊富になった。私の古巣である千葉ロッテマリーンズが使用済みボール100ダースを、ニュージーランドのオークランド総領事館の発案により、外務省のSports For Tomorrowというプログラムの活用で届けてくれたからだ。ナショナルチームの練習にはこれまで以上のたくさんのボールを使用することができ、子供たちと一緒に大切に使わせていただいている。遠く離れた日本からの支援によって、まだまだ守備のエラーは多いが、これまで以上に守備練習すること時間が増えているため少しずつではあるが上達しているように感じている。(続く)
- 【第38回】2017年12月11日 「踏み出す勇気と、最初の一歩」
- 【第37回】2017年9月26日 「野球人口のすそ野拡大へ」
- 【第36回】2017年7月10日 「中国野球へ」
- 【第35回】2017年6月27日 「首相官邸 晩餐会」
- 【第34回】2017年6月15日 「ワールドマスターズゲームズ2017」
- 【第33回】2017年4月13日 「ニュージーランドから日本へ」
- 【第32回】2017年3月30日 「恩師に感謝」
- 【第31回】2017年3月24日 「WBCから考える国際大会の運営」
- 【第30回】2017年2月17日 「WBSC U-18 ワールドカップ オセアニア予選 vol.2」
- 【第29回】2017年2月13日 「WBSC U-18 ワールドカップ オセアニア予選 vol.1」
- 【第28回】2017年2月8日 「日本野球教室 in NZ 2017」
- 【第27回】2016年11月17日 「ワールドマスターズゲームズ 2017 in Auckland」
- 【第26回】2016年9月30日 「NZ代表U-15 ワールドカップ 後記 Vol.2」
- 【第25回】2016年9月21日 「NZ代表U-15 ワールドカップ 後記 Vol.1」
- 【第24回】2016年7月20日 「NZ U-15代表チーム 強化練習 Vol.2」
- 【第23回】2016年6月22日 「NZ U15代表チーム 強化練習 Vol.1」
- 【第22回】2016年5月23日 「オークランド Japan Day 2016」
- 【第21回】2016年5月12日 「WBC予選大会 現地最終レポートと、ボス選手」
- 【第20回】2016年4月15日 「WBC予選大会 現地レポート vol.4」
- 【第19回】2016年3月18日 「WBC予選大会 現地レポート vol.3」
- 【第18回】2016年3月9日 「WBC予選大会 現地レポート vol.2」
- 【第17回】2016年3月4日 「WBC予選大会 現地レポート」
- 【番外編】2016年2月24日 「第4回WBC予選大会・総括インタビュー」
- 【番外編】2016年2月5日 「第4回WBC予選大会直前インタビュー」
- 【第16回】2016年1月27日 「挑む」
- 【第15回】2015年11月24日 「WBC予選」
- 【第14回】2015年10月13日 「プロジェクト」
- 【第13回】2015年8月24日 「挑戦」
- 【第12回】2015年8月3日 「融合」
- 【第11回】2015年7月9日 「意識してほしいこと」
- 【第10回】2015年6月24日 「活動とは」
- 【第9回】2015年6月9日 「野球よりソフト?」
- 【第8回】2015年5月22日 「トライアル(12U NZ)」
- 【第7回】2015年5月11日 「指導者」
- 【第6回】2015年4月23日 「NZ National Championship」
- 【第5回】2015年4月6日 「日々の練習」
- 【第4回】2015年3月18日 「防御力」
- 【第3回】2015年2月27日 「ニュージーランドで日本の野球教室を。」
- 【第2回】2015年2月6日 「オセアニア予選」
- 【第1回】2015年1月22日 「日本野球をニュージーランドに伝えよう」
著者プロフィール
- 清水直行(しみず なおゆき)
- 1975年11月24日生まれ 京都府出身。日大、東芝府中を経て、99年にドラフト2位でロッテに入団。2002年から5年連続で規定投球回、2桁勝利を継続し、エースとして活躍。05年は31年ぶりの日本一にも貢献した。04年のアテネ五輪、06年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に日本代表として出場。10年から横浜(現:横浜DeNA)。プロ12年間で通算105勝、防御率4.16。現役引退後は、ニュージーランド野球連盟ゼネラルマネジャー補佐、同国の代表統括コーチを務める。
- 世界の野球 可能性を秘めたコロンビア野球
- 世界の野球 力戦奮闘ブラジル野球!~日系移民が紡いできた夢~
- 世界の野球 東欧ブルガリア -野球事情とその展望-
- 世界の野球 ヒマラヤを北に臨む国 ネパールの野球
- 世界の野球 清水直行 ニュージーランド野球の世界挑戦記
- 世界の野球 アジア選手権 日本人監督の挑戦 インドネシア編
- 世界の野球 アジア選手権 日本人監督の挑戦 パキスタン編
- 世界の野球 アジア選手権 日本人監督の挑戦 番外編 タイ野球の歩み
- 世界の野球 日本人指導者の挑戦 香港野球編
- 世界の野球 フランス通信~フランス野球・ソフトボール連盟より~
- 世界の野球 南の楽園フィジーのHAPPYベースボール通信
- 世界の野球 "アフリカからの挑戦・赤土の青春" ウガンダベースボール
- 世界の野球 パラオ共和国 よみがえれ南洋の「ヤキュウ」魂
- 世界の野球 アフリカ球児の熱い青春!タンザニア野球“KOSHIEN”への道"
- 世界の野球 受け継がれるSri Lanka野球の物語~光り輝くスリランカ野球の夢~
- 世界の野球 セルビア野球の挑戦と葛藤 バルカン・ベースボール事情あれこれ
- 世界の野球 ケニア野球、一歩一歩 元独立リーガー日本人青年監督の奮闘!
- 世界の野球 欧州の野球事情
新着記事
ジャパン 関連記事
世界の野球 関連記事
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「カラダを動かす楽しさを伝えよう!」2024年11月25日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「ネパール野球25周年日本ネパールスポーツ交流プログラム2024-2025」2024年9月2日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「学校スポーツ連盟との協定」2024年4月12日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「1st National Baseball5 Championship 2024」2024年1月15日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「目指せ!体験から広がる笑顔の輪」2023年11月28日 |