文・写真=元 野球日本代表 清水直行
スポーツには全く同じシチュエーションが存在しないといっていいだろう。もちろん野球もそうだ。
野球は、いわば”常に移り変わる状況の変化”に対応するゲームである。点差であったり、アウトカウントであったり・・・。もっと言えば、心理状況や試合展開もその範囲になるだろう。そこにイニングや点差であり打順や選手の調子などが組み込まれるから、野球というゲームはとても面白い。
この”常に移り変わる状況の変化”の対応は、守備をする場面で多く必要になると私は考えている。ひとつのボールを全員で追いかけるまではいかなくとも、その打球によってそれぞれの役割を果たしていくことが守備に求められる。
サッカーやバスケットボールは決められたコート内からボールが外に出るとボールデッドになるが、野球はインプレー中にスタンド内やベンチ内あるいは特別ルール対応(球場による)にならない限りボールデッドにはならない。プレーは続く。練習ではそういったケースへの対応や、試合を想定しておかなければならないのだ。打球処理をする選手だけではなく次を予測しておくことがそうであるように、全てのプレーが成功するとは限らないから準備とバックアップが必要なのだ。
野球は”ミスのあるスポーツ”でもある。仲間が守備でエラーであり暴投などのミスをしたときに必要以上の失点や進塁を防がなければならない。そのことを予測し処理をしている選手に対し、重要になってくるのが聞こえる声で送球するベースであり相手を示す「声」であり「指示」だろう。
「大きな声をだしなさい」「大きな声で次を指示してあげなさい」。ニュージーランドのナショナルチーム12Uの練習中、私は子供たちに繰り返し指導をする。皆さんの想像通り、すぐに大きな声は出ない。自分のプレーで精一杯で、まだ周りを見る余裕がないからだ。無理もない。これまで習慣的に声を出さなければならないシチュエーション練習に時間を費やしてこなかっただろう。試合などで歓声で声がかき消されるような経験もなく進塁されることの危機感も少ない。そして、子供たちはみなシャイなのだ。そこにどうやって入り込んでいくか…。これからの私の大きな課題である。
まずは簡単なことから始めたい。小さい声でもいいから声に出して指示すること。みんな連動して守っているのだということ。野球は「準備」「確認」することがいかに重要なのかということを12Uや15U世代には特にしつこく指導していきたい。彼らは、10年先、20年先のニュージーランド野球を築きあげていく世代なのだから。
- 【第38回】2017年12月11日 「踏み出す勇気と、最初の一歩」
- 【第37回】2017年9月26日 「野球人口のすそ野拡大へ」
- 【第36回】2017年7月10日 「中国野球へ」
- 【第35回】2017年6月27日 「首相官邸 晩餐会」
- 【第34回】2017年6月15日 「ワールドマスターズゲームズ2017」
- 【第33回】2017年4月13日 「ニュージーランドから日本へ」
- 【第32回】2017年3月30日 「恩師に感謝」
- 【第31回】2017年3月24日 「WBCから考える国際大会の運営」
- 【第30回】2017年2月17日 「WBSC U-18 ワールドカップ オセアニア予選 vol.2」
- 【第29回】2017年2月13日 「WBSC U-18 ワールドカップ オセアニア予選 vol.1」
- 【第28回】2017年2月8日 「日本野球教室 in NZ 2017」
- 【第27回】2016年11月17日 「ワールドマスターズゲームズ 2017 in Auckland」
- 【第26回】2016年9月30日 「NZ代表U-15 ワールドカップ 後記 Vol.2」
- 【第25回】2016年9月21日 「NZ代表U-15 ワールドカップ 後記 Vol.1」
- 【第24回】2016年7月20日 「NZ U-15代表チーム 強化練習 Vol.2」
- 【第23回】2016年6月22日 「NZ U15代表チーム 強化練習 Vol.1」
- 【第22回】2016年5月23日 「オークランド Japan Day 2016」
- 【第21回】2016年5月12日 「WBC予選大会 現地最終レポートと、ボス選手」
- 【第20回】2016年4月15日 「WBC予選大会 現地レポート vol.4」
- 【第19回】2016年3月18日 「WBC予選大会 現地レポート vol.3」
- 【第18回】2016年3月9日 「WBC予選大会 現地レポート vol.2」
- 【第17回】2016年3月4日 「WBC予選大会 現地レポート」
- 【番外編】2016年2月24日 「第4回WBC予選大会・総括インタビュー」
- 【番外編】2016年2月5日 「第4回WBC予選大会直前インタビュー」
- 【第16回】2016年1月27日 「挑む」
- 【第15回】2015年11月24日 「WBC予選」
- 【第14回】2015年10月13日 「プロジェクト」
- 【第13回】2015年8月24日 「挑戦」
- 【第12回】2015年8月3日 「融合」
- 【第11回】2015年7月9日 「意識してほしいこと」
- 【第10回】2015年6月24日 「活動とは」
- 【第9回】2015年6月9日 「野球よりソフト?」
- 【第8回】2015年5月22日 「トライアル(12U NZ)」
- 【第7回】2015年5月11日 「指導者」
- 【第6回】2015年4月23日 「NZ National Championship」
- 【第5回】2015年4月6日 「日々の練習」
- 【第4回】2015年3月18日 「防御力」
- 【第3回】2015年2月27日 「ニュージーランドで日本の野球教室を。」
- 【第2回】2015年2月6日 「オセアニア予選」
- 【第1回】2015年1月22日 「日本野球をニュージーランドに伝えよう」
著者プロフィール
- 清水直行(しみず なおゆき)
- 1975年11月24日生まれ 京都府出身。日大、東芝府中を経て、99年にドラフト2位でロッテに入団。2002年から5年連続で規定投球回、2桁勝利を継続し、エースとして活躍。05年は31年ぶりの日本一にも貢献した。04年のアテネ五輪、06年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に日本代表として出場。10年から横浜(現:横浜DeNA)。プロ12年間で通算105勝、防御率4.16。現役引退後は、ニュージーランド野球連盟ゼネラルマネジャー補佐、同国の代表統括コーチを務める。
- 世界の野球 可能性を秘めたコロンビア野球
- 世界の野球 力戦奮闘ブラジル野球!~日系移民が紡いできた夢~
- 世界の野球 東欧ブルガリア -野球事情とその展望-
- 世界の野球 ヒマラヤを北に臨む国 ネパールの野球
- 世界の野球 清水直行 ニュージーランド野球の世界挑戦記
- 世界の野球 アジア選手権 日本人監督の挑戦 インドネシア編
- 世界の野球 アジア選手権 日本人監督の挑戦 パキスタン編
- 世界の野球 アジア選手権 日本人監督の挑戦 番外編 タイ野球の歩み
- 世界の野球 日本人指導者の挑戦 香港野球編
- 世界の野球 フランス通信~フランス野球・ソフトボール連盟より~
- 世界の野球 南の楽園フィジーのHAPPYベースボール通信
- 世界の野球 "アフリカからの挑戦・赤土の青春" ウガンダベースボール
- 世界の野球 パラオ共和国 よみがえれ南洋の「ヤキュウ」魂
- 世界の野球 アフリカ球児の熱い青春!タンザニア野球“KOSHIEN”への道"
- 世界の野球 受け継がれるSri Lanka野球の物語~光り輝くスリランカ野球の夢~
- 世界の野球 セルビア野球の挑戦と葛藤 バルカン・ベースボール事情あれこれ
- 世界の野球 ケニア野球、一歩一歩 元独立リーガー日本人青年監督の奮闘!
- 世界の野球 欧州の野球事情
新着記事
ジャパン 関連記事
世界の野球 関連記事
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「ネパール野球25周年日本ネパールスポーツ交流プログラム2024-2025」2024年9月2日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「学校スポーツ連盟との協定」2024年4月12日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「1st National Baseball5 Championship 2024」2024年1月15日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「目指せ!体験から広がる笑顔の輪」2023年11月28日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球 「福島県×ネパール シャクナゲ交流」2023年10月2日 |