文・写真=野中寿人
野球ファンのみなさま初めまして。インドネシア代表ナショナルチームの監督の野中寿人と申します。私は現在9月16日から台湾の台中市で開催される「第27回BFAアジア選手権」出場に向けて、インドネシアの首都ジャカルタにて参戦用の資金獲得活動並びにチーム編成を行っています。
まず、読者の皆様に「アジア野球“後進国”」と位置付けされているインドネシアが国際大会に参戦するにあたって直面する実情を知ってもらうべく、この部分からお話をさせていただきます。
日本、韓国、台湾、中国の“アジア4強”に続くアジア第2グループに位置するインドネシアが国際試合に参戦するにあたり、国から資金が投下される国際大会と、資金が投下されない国際大会とに分類されています。 アジア競技大会やWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)などといったアジア野球ランキングやWBSC世界野球ランキングによって出場が左右される国際大会への「登龍門」といえるアジアカップ(現在は東アジアカップと西アジアカップに分かれています)、そして、アジアカップを勝ち抜くことで出場できる「BFAアジア選手権」などの国際大会は野球競技単体の国際大会であり、この野球競技単体の国際大会に対しては国からの資金投下がされません。しかし、東南アジア競技大会やアジア競技大会などの、複合競技による国際大会に際しては国からの資金が投下されるシステムとなっています。
インドネシアでは、まず、アジアカップへの参戦に必要な資金をどのようにして調達をするかが最大の問題になってきます。2009年当時はスポンサー獲得によってアジアカップへの参戦を可能にし、BFAアジア選手権出場へとつながっていきました。しかし、この2009年を最後として、2010年、2012年のアジアカップは資金難の為に出場を辞退しているというのが実情です。2015年に開催された東アジアカップについては、2009年時と同様に、スポンサー獲得の動きを経て3大会振りに出場することができました。
一口にスポンサー獲得といっても容易なことではありません。まして、野球というスポーツのステータスが、未だ「マイナー競技」とされているインドネシアでは、現地企業のスポンサー獲得は非常に困難となります。従って、野球というスポーツに理解のある日系の企業、団体、サークル、個人の皆様からのご協力を仰ぐことでスポンサー獲得という難問を打破しています。今年の2月より、首都ジャカルタの日系企業を個別に訪問し、現在約60社様強、他、多くの個人の方がスポンサーとなりインドネシア代表ナショナルチームへ支援をして頂いています。先の5月にジャカルタで開催された東アジアカップ、そして、今月開催されるBFAアジア選手権への参戦は、その必要とされる費用の95%が日系の方々からの支援によって賄われています。
日本の野球選手もインドネシアの野球選手も気持ちは同じです。各国際大会に出場をし、良い成績を収めて、次の国際大会に出場をしたいというのが本音です。
インドネシアという国の代表監督には、各国際大会における野球としての結果はもちろん、各国際大会に参戦するための(特に国からの資金が投下されない国際大会参戦において)スポンサーの獲得という任務も自動的に含まれることになります。国籍は違っても同じ野球人としての後輩達に野球を行う上での夢や希望、そして道筋などを、一つでも多く提供をしてあげたいと思う次第です。
まずは、コラム連載のご挨拶として、「野球後進国」が各国際大会に参戦する内情を知って頂ければ幸いです。 インドネシア代表ナショナルチーム スポンサード頂いた企業の皆様に、この場を借りて感謝申し上げます。
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著者プロフィール
- 野中 寿人(のなか かずと)
- 1961年6月6日生。日大三高野球部在学3年の夏に西東京代表にて全国高等学校野球選手権大会に出場。
その後、日本大学体育会硬式野球部へ進学。日本大学では1年の秋から体調を壊し2年間の休部をし、現役野球人生を終える。大学卒業後は、フィリピン、サイパンなどで仕事をし2001年にインドネシアのバリ島へ移住。2004年からバリ島の子供達に野球を教え始め2005年にリトルリーグを発足。2006年にはバリ州代表監督に就任、また、クラブチームを発足。2007年にはインドネシア代表ナショナルチームの監督に就任。2007年のSEAゲームスで銅メダル、2009年のアジアカップで優勝、同年のアジア選手権大会へ出場。その後、インドネシア代表ナショナルチームの監督を辞任し、地方州底上げの為に、東ジャワ州代表監督に就任。2011年のインドネシア国体予選で準優勝、2012年のインドネシア国体前哨戦で優勝、同年のインドネシア国体決勝大会で銅メダル。そして2014年からインドネシア代表ナショナルチームの監督に復帰をし、2015年の東アジアカップで準優勝。
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