文・写真=野中寿人
2018年9月にインドネシア・ジャカルタでの開催予定がされる「アジア競技大会」を控え、2017年のインドネシア代表チームの展望を、記させて頂きたいと思います。
まず、代表トップチームに関してですが、今年度は東アジアカップ、そして、アジア選手権大会という重要な国際大会が予定されております。2018年のアジア競技大会から2019年の東南アジア競技大会への参加を、インドネシア野球向上の起爆剤とし、アジア野球途上国での頂点を獲得し、中国代表の背中を掴む為には、今年の東アジアカップでの成果を出して、アジア選手権大会への出場権を獲得することが大事と考えます。
また同様に、2017年は代表チームの選手個々の海外での野球修行や、チーム全体としての海外への遠征トライアウトなども絡めた、内容の濃い年度としなくてはなりません。
しかし、前項にも記した様に、未だに東アジアカップ開催の目途がたっていない状況であり、この問題が、どの様な形で、今年度の目標と全プログラムへ影響を与えるかをも、念頭に入れながら、情勢を判断する必要がありましょう。
さしずめ予想されることは、仮に、東アジアカップが未開催のままアジア選手権大会を迎えた場合、昨年度のアジア/世界ランキングよる出場枠が予想される為、アジア野球途上国からは5位のパキスタンと6位の香港が、アジア選手権大会へ出場する可能性があります。インドネシアにとっては、2018年のアジア競技大会から、2019年の東南アジア競技大会に向けた全チーム編成で、最も重要と位置づけされている、国際大会への参加が想定できなくなってしまいます。
また、それだけではなく、代表チーム編成以前に、選手達の野球継続意欲に大きな影響を及ぼすことは間違いがなく、レギュラー陣の代表入り辞退者が続出する可能性をも含んでいます。東アジアカップ大会開催不能という、自力では成す術のない状況による野球低下は、インドネシア野球にとって大きな痛手として圧し掛かってくることが予測されます。
更に、来月2月には、インドネシアアマチュア野球連盟の人事改正選挙が行われます。この後の項でも記させて頂きますが、この新人事の決定と運営の志向性は、2018年のアジア競技大会から2019年の東南アジア競技大会もさることながら、この2大会を起爆剤としたインドネシア野球の向上にとって、非常に大きなポイントとなりましょう。
また、各年代のカテゴリーのU-12,U-15,U-18,U-23については、(現状、昨年度のアジア/世界ランキングが発表されておらず確実な予想はできませんが)通常アジア/世界ランキング8位までが参加することから、昨年と同じくアジア/世界ランキング8位以内国の出場辞退による枠の繰り上げに依存するしかありません。
加えて、代表トップチームのアジア/世界ランキング査定対象である、東アジアカップ大会が開催されなかった場合においては、ランキングを上昇させることが全く出来ないことから、来年度の参加枠確保がどうなるのか想像が出来ません。最悪の場合、各年代別カテゴリーの活動は、国内だけの狭い領域になります。
肝心となる代表トップチームのインドネシア国内での強化練習について。本来推進していくべきインドネシア野球協会に関しては過去ほとんど行われなかったことから期待できません。次に期待できるのは国家スポーツ省からの予算による強化練習ですが、2018年アジア競技大会参加に際する強化練習資金は、2018年に入ってから助成させると思われます。通常、複合競技大会についての資金は1年弱の期間で補助されますが、2018年のアジア競技大会では上位3位以内を望める可能性が低い競技に対しては、最小期間かつ最小予算での資金補助となるのです。
従って、国家スポーツ省からの資金による強化練習も望めない状況となり、代表トップチーム所属の選手たちは、各自が所属するクラブチームでの練習や、自主練習を余儀なくされます。各年代別カテゴリーの代表チームについても同様な状況です。
もう1点、インドネシア国内の問題として、代表トップチームの選手たちが多いジャカルタの、スナヤングランドが2018年のアジア競技大会開催に向けて全面改装の工事期間となっていることが挙げられます。
現状、クラブチーム等の練習で使用しているグランドが無い状況なのです。この改装工事は2017年末もしくは、2018年初めまでかかるものと思われ、選手たちからの依頼もあり、自主練習のメニューを私から選手たちに作成して渡しております。
以上が、インドネシア代表チームのトップチーム、及び、各年代別カテゴリー代表チームについての問題となります。
- インドネシア野球「アジア競技大会 大会に向けての準備状況」
- インドネシア野球「教育としての野球-インドネシア野球キャラバン」
- インドネシア野球「インドネシア代表チームの編成、及び、最新のグラウンド状況」
- インドネシア野球「アジア競技大会への準備」
- インドネシア野球「東京都高野連様との提携」
- インドネシア野球「第13回 BICレッドソックス深谷組カップ」
- インドネシア野球「野球キャラバン ジョグジャカルタ編」
- インドネシア野球「インドネシア女子硬式野球始動~オーストラリアへ!」
- インドネシア野球「日本の各野球組織、団体との提携へ」
- インドネシア野球「野球キャラバン スラウェシ島マカッサル編」
- インドネシア野球「インドネシア野球の方向性 野球動作の統一」
- インドネシア野球「子供たちに未来を!2017野球キャラバン」
- インドネシア野球「高度な野球環境との同化」」
- インドネシア野球「卒業旅行と野球 バリ島」
- インドネシア野球「インドネシア アマチュア野球連盟人事改正(リーダーと組織)」
- インドネシア野球「2017インドネシア代表チームの運営」
- インドネシア野球「2017年インドネシア野球向上各プログラム」
- インドネシア野球「2017年 インドネシア代表ナショナルチーム展望」
- インドネシア野球「“野球国力”ランキング査定システムがもたらす野球衰退」
- インドネシア野球「国際大会開催不能による野球衰退の実情」
- インドネシア野球「非行麻薬防止 突撃キャラバン」
- インドネシア野球「Fu×Bic 野球キャラバン ジャカルタ編」
- インドネシア野球「野球教室とストレッチ講習」
- インドネシア野球「大会結果とセレクション結果」
- インドネシア野球「国内クラブチーム大会 Vol.4 (大会の主旨)」
- インドネシア野球「国内クラブチーム大会 Vol.3 (日イ友好 国際親善)」
- インドネシア野球「国内クラブチーム大会 Vol.2 (付加価値の提供)」
- インドネシア野球「国内クラブチーム大会開催 (インドネシア代表チーム選手セレクション)」
- インドネシア野球「ワールド・ベースボール・クラシック 予選について」
- インドネシア野球「第19回 インドネシア国民体育大会 総評」
- インドネシア野球「第19回 インドネシア国民体育大会 開催」
- インドネシア野球「Fu×Bic 野球キャラバン スラバヤ編」
- インドネシア野球「第11回 BFA U-18 アジア選手権 Vol.5~ストレッチングトレーナの導入~」
- インドネシア野球「第11回 BFA U-18アジア選手権 Vol.4」
- インドネシア野球「第11回 BFA U-18アジア選手権 Vol.3」
- インドネシア野球「第11回 BFA U-18アジア選手権 Vol.2」
- インドネシア野球「第11回 BFA U-18アジア選手権 Vol.1」
- インドネシア野球「U18 インドネシア代表強化練習 ~台湾へ」
- インドネシア野球「第11回 BFA U-18 アジア選手権大会 参加」
- インドネシア野球「深谷組硬式野球部 野球研修を終えて」
- インドネシア野球「Fu×Bic 野球キャラバン バンドゥン~後編~」
- インドネシア野球「Fu×Bic 野球キャラバン バンドゥン~前編~」
- インドネシア野球「日本プロ野球名球会野球教室」
- インドネシア野球「野球キャラバン スタート」
- インドネシア代表「2016年 アジア競技大会強化プロジェクト開始」
- 「社会人野球への挑戦」
- 「ソフトボールとの関係」
- 「野球動作〜異国で日本人選手の育成はいらない」
- 「泥水を飲み続けて修正へ導く」
- 「ライセンス制度の導入」
- 「現地人指導者の権威と権力」
- 「野球をどの様にして国内の学校に広めるか」
- 「インドネシア野球向上と発展プロジェクト」
- 「外国人監督として注意しなければならないこと」
- 「インドネシア代表 外国人監督としての宿命と任務」
- アジア選手権「第27回 BFAアジア選手権 インドネシア代表 総評(後編)」
- アジア選手権「第27回 BFAアジア選手権 インドネシア代表 総評(前編)」
- アジア選手権「第27回BFAアジア選手権 中国代表戦」
- アジア選手権「第27回BFAアジア選手権 特別な2つの国歌」
- アジア選手権「第27回BFAアジア選手権 パキスタン代表への挑戦」
- アジア選手権「一難去らずにまた一難、第27回アジア選手権大会へ向けて」
- アジア選手権「インドネシア人の体について探求する」
- アジア選手権「インドネシア代表ナショナルチームの選手選考」
- アジア選手権「スポンサー獲得とインドネシアからの教示」
- アジア選手権「インドネシア、国際大会への参戦」
著者プロフィール
- 野中 寿人(のなか かずと)
- 1961年6月6日生。日大三高野球部在学3年の夏に西東京代表にて全国高等学校野球選手権大会に出場。
その後、日本大学体育会硬式野球部へ進学。日本大学では1年の秋から体調を壊し2年間の休部をし、現役野球人生を終える。大学卒業後は、フィリピン、サイパンなどで仕事をし2001年にインドネシアのバリ島へ移住。2004年からバリ島の子供達に野球を教え始め2005年にリトルリーグを発足。2006年にはバリ州代表監督に就任、また、クラブチームを発足。2007年にはインドネシア代表ナショナルチームの監督に就任。2007年のSEAゲームスで銅メダル、2009年のアジアカップで優勝、同年のアジア選手権大会へ出場。その後、インドネシア代表ナショナルチームの監督を辞任し、地方州底上げの為に、東ジャワ州代表監督に就任。2011年のインドネシア国体予選で準優勝、2012年のインドネシア国体前哨戦で優勝、同年のインドネシア国体決勝大会で銅メダル。そして2014年からインドネシア代表ナショナルチームの監督に復帰をし、2015年の東アジアカップで準優勝。
- 世界の野球 可能性を秘めたコロンビア野球
- 世界の野球 力戦奮闘ブラジル野球!~日系移民が紡いできた夢~
- 世界の野球 東欧ブルガリア -野球事情とその展望-
- 世界の野球 ヒマラヤを北に臨む国 ネパールの野球
- 世界の野球 清水直行 ニュージーランド野球の世界挑戦記
- 世界の野球 アジア選手権 日本人監督の挑戦 インドネシア編
- 世界の野球 アジア選手権 日本人監督の挑戦 パキスタン編
- 世界の野球 アジア選手権 日本人監督の挑戦 番外編 タイ野球の歩み
- 世界の野球 日本人指導者の挑戦 香港野球編
- 世界の野球 フランス通信~フランス野球・ソフトボール連盟より~
- 世界の野球 南の楽園フィジーのHAPPYベースボール通信
- 世界の野球 "アフリカからの挑戦・赤土の青春" ウガンダベースボール
- 世界の野球 パラオ共和国 よみがえれ南洋の「ヤキュウ」魂
- 世界の野球 アフリカ球児の熱い青春!タンザニア野球“KOSHIEN”への道"
- 世界の野球 受け継がれるSri Lanka野球の物語~光り輝くスリランカ野球の夢~
- 世界の野球 セルビア野球の挑戦と葛藤 バルカン・ベースボール事情あれこれ
- 世界の野球 ケニア野球、一歩一歩 元独立リーガー日本人青年監督の奮闘!
- 世界の野球 欧州の野球事情
新着記事
ジャパン 関連記事
世界の野球 関連記事
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「カラダを動かす楽しさを伝えよう!」2024年11月25日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「ネパール野球25周年日本ネパールスポーツ交流プログラム2024-2025」2024年9月2日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「学校スポーツ連盟との協定」2024年4月12日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「1st National Baseball5 Championship 2024」2024年1月15日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「目指せ!体験から広がる笑顔の輪」2023年11月28日 |