文・写真=野中寿人
インドネシア国内の女子硬式野球の発足については、数年前から視野に入れていましたが、インドネシアのソフトボールの歴史と国内関係者の思考体質から、どうしても女子選手=ソフトボールという概念が浸透しており、特に、野球とソフトボールの中心的地域であるジャカルタなどにおいては、女子選手が所属するクラブチーム内や州内で野球の練習がままならない状況にあるのが実情になります。
また、今年度に開催される女子ソフトボールのアジアカップ大会、また、来年のアジア大会、そして、再来年のSEAゲームス(東南アジア競技大会)といった国際大会において、やはり、女子ソフトボール競技が大会の競技種目に織り込まれている関係から、選手達は生活面の部分からも野球への転向希望を抱いていても安易に転向の決意には至れません。また、幼年期の女子選手たちにしても、女子野球の実例が無いため、漠然とした影を追うのが心情です。
この様な状況ではありますが、2年前からバリ島、バンドゥン、ジャカルタの3都市に、オーストラリアの女子硬式野球チームが親善渡航を繰り返しています。このチームは「エメラルド」といい、オーストラリア代表女子野球ナショナルチームの選手も在籍をしており、親善試合や野球教室を過去2年間に渡って行って来ました。また、来年の1月にはバリ島にて「エメラルド」チームは、投手陣のトレーニングキャンプを行う計画でいます。
また、冒頭でのご説明内容から、地方州のバリ島では、インドネシア国内の他の州より一足早く、今年から本格的に女子硬式野球を発足させており、女子硬式野球の島内トーナメントを開催しています。
加えて、インドネシアのリトルリーグなどの選抜チーム、U-12などの代表チームの中には数名の女子選手が所属をしている関係から、先の9月26日から10月4日までの10日間、バリ島、バンドゥン、ジャカルタの3都市から、それぞれ11歳から15歳の5選手を選出し、「インドネシア ダイアモンド」チームを編成してオーストラリアへの遠征渡航を実施致しました。
このオーストラリアへの遠征渡航は「DIAMONDS IN THE ROUGH」とうプログラムで、全てのコーディネイトは「エメラルド」チームを統括する「Mrs. NERELLE GOSSTRAY」女史によるもので、この遠征に纏わる資金全般は、オーストラリア側からの支援金にて賄っております。また、他に、サポートとして「Aussie Hearts Foundation」「Australian Aid」「Baseball Queenslands Association」らの団体の協力が加わっています。
そして、このオーストラリア遠征の内容は5試合の親善試合と連日の野球講習を主要内容であり、オーストラリアのブリスベンで開催されました。
インドネシアにとって、既存の男子硬式野球は勿論、選手育成と、その成果を追うことは当たり前のことですが、アジア圏内の女子硬式野球を見た場合、日本が優勢で他国との差は歴然としています。すなわち、日本を除くアジア圏の他国が、まだまだ発展途上である現状、インドネシア野球の発展にとって、この女子硬式野球は1つの起爆剤になる要素を多様に含んでいるのです。その意味も含め、中長期的に継続する、この「DIAMONDS IN THE ROUGH」プログラムは、大きな意味を持ち、インドネシア国内の女子硬式野球始動と合い重なり、野球選手の増加を促すと共に、1つの大きな幹として確立して行くものでしょう。
また、女子硬式野球に限らず、女子の審判員の育成もバリ島では先駆けて実施をしております。来年は女子硬式野球選手、並びに、女子審判員の日本渡航修行を決行致します。
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著者プロフィール
- 野中 寿人(のなか かずと)
- 1961年6月6日生。日大三高野球部在学3年の夏に西東京代表にて全国高等学校野球選手権大会に出場。
その後、日本大学体育会硬式野球部へ進学。日本大学では1年の秋から体調を壊し2年間の休部をし、現役野球人生を終える。大学卒業後は、フィリピン、サイパンなどで仕事をし2001年にインドネシアのバリ島へ移住。2004年からバリ島の子供達に野球を教え始め2005年にリトルリーグを発足。2006年にはバリ州代表監督に就任、また、クラブチームを発足。2007年にはインドネシア代表ナショナルチームの監督に就任。2007年のSEAゲームスで銅メダル、2009年のアジアカップで優勝、同年のアジア選手権大会へ出場。その後、インドネシア代表ナショナルチームの監督を辞任し、地方州底上げの為に、東ジャワ州代表監督に就任。2011年のインドネシア国体予選で準優勝、2012年のインドネシア国体前哨戦で優勝、同年のインドネシア国体決勝大会で銅メダル。そして2014年からインドネシア代表ナショナルチームの監督に復帰をし、2015年の東アジアカップで準優勝。
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