文・写真=野中寿人
インドネシアにおける野球キャラバンの主旨は、東洋人の身体に適合した野球の動作と、最高のパフォーマンスとその維持を目的としたストレッチを幼年期の子供たちから青年期の子供たちへ指導することです。
また、上記とは別に、インドネシアという大国には、各種の犯罪も多く、大きな社会問題となっていることも、今回の主旨につながってきます。
生活レベルにも貧富の差が歴然とするインドネシアは、各層においての犯罪が絶えません。これはひとつに、幼年期時代の人間教育の欠陥からくる要因が多く、家庭環境、地域や周囲の環境、人間関係、経済環境などが挙げられるでしょう。
これらの要素から、安易に非行にはしる傾向が強いと思われる子供たちへ、現状の生活の中に、新しく野球というスポーツを紹介し、興味を持って、取り込んでもらい、余暇の時間を持て余すことがなく、野球によって、1つの目的と目標を持ってもらえたら、少しでも犯罪や非行の防止になると信じて、突撃キャラバンなる巡回指導を開始しました。
この突撃キャラバンとは、必要な野球用具をキャラバン車に積んで、市内を巡回し、子供たちを探して、野球を紹介するという、全く、事前の仕込み無しでの、アドリブ行為です。
今回は、日本大使館やオフィスビル、一流ホテルや大型モールなど、そして独立記念塔モナスを通るジャカルタの中心地であるタムリン通りの裏手に位置する、タナアーバン地区にある雑居団地が集まる、経済的にも恵まれない地域に出向いて、子供たちを探しました。
ジャカルタの目ぬき通りである、タムリン通りから数ブロックしか離れていないにもかかわらず、このタナアーバン地区は、昔ながらの市場や各種の卸問屋などがあり、ジャカルタの貧富状況を絵に描いたような場所になります。
我々は、市場の駐車場に入り、子供たちを見かけ「野球をやろうよ」と声をかけ、子供たちには友達を誘ってもらうように話しをし、我々は大声で雑居団地の各棟に、誘い声を張り上げながら歩いて行きます。すると、この雑居団地を統括する管理人の方が、我々の奇妙な行動を目にし、この地区での行動許可の有無を問いてきましたが、丁重に主旨を話すと、雑居団地の真ん中にあるテニスコートの使用を許可してくれたのでした。
テニスコートには、既に数人の子供たちが集まっており、後から、次々と子供たちがテニスコートに入ってきます。テニスコートの外には沢山の女の子や、雑居団地に住む方々が我々を見つめ、何が始まるのか?興味津々です。
テニスコートに集まった15名弱の子供たちに、我々に帯同しているインドネシア代表 チームの主力選手から、野球というスポーツを現地語で説明をしてもらい、投げ方、ゴロの取り方、打ち方の見本を示して、子供たちに実際にやってもらいました。
初心者ということから、使用するボールは軟球を使用し、打撃の時には、近所のガラス破損の心配からDr.ストレッチのキャラバン隊員からのアイデアで靴下を丸めてボールに仕立てて行いました。
初めて野球をしたとは思えないほど、動作バランスが良く、すんなりと適応していく子供も数名いて、子供たちから、本格的に野球をしたいという嘆願に、ジャカルタ市内のクラブチームを紹介しました。
この様な感じで、子供たちに野球を紹介し、野球用具の提供と補填を約束し、継続的に野球が行えることをサポートさせて頂きました。そして数名の子供たちから、今回の突撃キャラバンでの、野球に対する感想をもらい、管理人さんに野球用具を渡し、この雑居団地での突撃キャラバンを終了したのでした。
突撃キャラバンを終えた我々は、どんよりとしたジャカルタの夕刻とは対象的に、各人が清々しいく爽快な気持ちを胸に抱き、子供たちの無邪気な笑顔と、真っ白い歯を思い浮かべながら帰路のバスに揺られグランドへ向かったのでした。
また、グランドでも、孤児院の子供たちが集まっており、やはり、恵まれない環境の中で、野球というものち出会い、生活環境の中の1つにして欲しい。そして、野球というスポーツを通じて、道徳観を養い、多くの仲間を作り、その仲間たちと野球に集中して、笑顔を絶やさない人間に育って欲しいと思います。
今回のジャカルタ編では、初めて突撃キャラバンや、孤児院の子供たちへのキャラバンを行いましたが、つくづく、この様な活動を取り入れで行くべきだと感じています。
今年度は、ジャワ島の主要3都市にて野球キャラバンを開催させて頂きました。開催にてあたり株式会社フュービックの黒川社長様、Dr.ストレッチのキャラバン隊、小林隊長様、及び、キャラバン隊員の皆様方、そして全関係者の方々に、深く感謝と御礼を申し上げます。ありがとうございました。
また、来年度は、既に、バリ州、ランプン州、マナド州の3都市から、野球キャラバン開催の依頼を受けております。既存の野球キャラバン、突撃キャラバン、キャンプキャラバンなど、広い切り口でFu×Bic野球キャラバンを開催してまいりたいと思っております。皆様、ご期待下さい。
「今回の突撃キャラバンで、素足の子供がいたなぁ〜、今度、あの子に靴を届けてあげよう〜(微笑)」
- インドネシア野球「アジア競技大会 大会に向けての準備状況」
- インドネシア野球「教育としての野球-インドネシア野球キャラバン」
- インドネシア野球「インドネシア代表チームの編成、及び、最新のグラウンド状況」
- インドネシア野球「アジア競技大会への準備」
- インドネシア野球「東京都高野連様との提携」
- インドネシア野球「第13回 BICレッドソックス深谷組カップ」
- インドネシア野球「野球キャラバン ジョグジャカルタ編」
- インドネシア野球「インドネシア女子硬式野球始動~オーストラリアへ!」
- インドネシア野球「日本の各野球組織、団体との提携へ」
- インドネシア野球「野球キャラバン スラウェシ島マカッサル編」
- インドネシア野球「インドネシア野球の方向性 野球動作の統一」
- インドネシア野球「子供たちに未来を!2017野球キャラバン」
- インドネシア野球「高度な野球環境との同化」」
- インドネシア野球「卒業旅行と野球 バリ島」
- インドネシア野球「インドネシア アマチュア野球連盟人事改正(リーダーと組織)」
- インドネシア野球「2017インドネシア代表チームの運営」
- インドネシア野球「2017年インドネシア野球向上各プログラム」
- インドネシア野球「2017年 インドネシア代表ナショナルチーム展望」
- インドネシア野球「“野球国力”ランキング査定システムがもたらす野球衰退」
- インドネシア野球「国際大会開催不能による野球衰退の実情」
- インドネシア野球「非行麻薬防止 突撃キャラバン」
- インドネシア野球「Fu×Bic 野球キャラバン ジャカルタ編」
- インドネシア野球「野球教室とストレッチ講習」
- インドネシア野球「大会結果とセレクション結果」
- インドネシア野球「国内クラブチーム大会 Vol.4 (大会の主旨)」
- インドネシア野球「国内クラブチーム大会 Vol.3 (日イ友好 国際親善)」
- インドネシア野球「国内クラブチーム大会 Vol.2 (付加価値の提供)」
- インドネシア野球「国内クラブチーム大会開催 (インドネシア代表チーム選手セレクション)」
- インドネシア野球「ワールド・ベースボール・クラシック 予選について」
- インドネシア野球「第19回 インドネシア国民体育大会 総評」
- インドネシア野球「第19回 インドネシア国民体育大会 開催」
- インドネシア野球「Fu×Bic 野球キャラバン スラバヤ編」
- インドネシア野球「第11回 BFA U-18 アジア選手権 Vol.5~ストレッチングトレーナの導入~」
- インドネシア野球「第11回 BFA U-18アジア選手権 Vol.4」
- インドネシア野球「第11回 BFA U-18アジア選手権 Vol.3」
- インドネシア野球「第11回 BFA U-18アジア選手権 Vol.2」
- インドネシア野球「第11回 BFA U-18アジア選手権 Vol.1」
- インドネシア野球「U18 インドネシア代表強化練習 ~台湾へ」
- インドネシア野球「第11回 BFA U-18 アジア選手権大会 参加」
- インドネシア野球「深谷組硬式野球部 野球研修を終えて」
- インドネシア野球「Fu×Bic 野球キャラバン バンドゥン~後編~」
- インドネシア野球「Fu×Bic 野球キャラバン バンドゥン~前編~」
- インドネシア野球「日本プロ野球名球会野球教室」
- インドネシア野球「野球キャラバン スタート」
- インドネシア代表「2016年 アジア競技大会強化プロジェクト開始」
- 「社会人野球への挑戦」
- 「ソフトボールとの関係」
- 「野球動作〜異国で日本人選手の育成はいらない」
- 「泥水を飲み続けて修正へ導く」
- 「ライセンス制度の導入」
- 「現地人指導者の権威と権力」
- 「野球をどの様にして国内の学校に広めるか」
- 「インドネシア野球向上と発展プロジェクト」
- 「外国人監督として注意しなければならないこと」
- 「インドネシア代表 外国人監督としての宿命と任務」
- アジア選手権「第27回 BFAアジア選手権 インドネシア代表 総評(後編)」
- アジア選手権「第27回 BFAアジア選手権 インドネシア代表 総評(前編)」
- アジア選手権「第27回BFAアジア選手権 中国代表戦」
- アジア選手権「第27回BFAアジア選手権 特別な2つの国歌」
- アジア選手権「第27回BFAアジア選手権 パキスタン代表への挑戦」
- アジア選手権「一難去らずにまた一難、第27回アジア選手権大会へ向けて」
- アジア選手権「インドネシア人の体について探求する」
- アジア選手権「インドネシア代表ナショナルチームの選手選考」
- アジア選手権「スポンサー獲得とインドネシアからの教示」
- アジア選手権「インドネシア、国際大会への参戦」
著者プロフィール
- 野中 寿人(のなか かずと)
- 1961年6月6日生。日大三高野球部在学3年の夏に西東京代表にて全国高等学校野球選手権大会に出場。
その後、日本大学体育会硬式野球部へ進学。日本大学では1年の秋から体調を壊し2年間の休部をし、現役野球人生を終える。大学卒業後は、フィリピン、サイパンなどで仕事をし2001年にインドネシアのバリ島へ移住。2004年からバリ島の子供達に野球を教え始め2005年にリトルリーグを発足。2006年にはバリ州代表監督に就任、また、クラブチームを発足。2007年にはインドネシア代表ナショナルチームの監督に就任。2007年のSEAゲームスで銅メダル、2009年のアジアカップで優勝、同年のアジア選手権大会へ出場。その後、インドネシア代表ナショナルチームの監督を辞任し、地方州底上げの為に、東ジャワ州代表監督に就任。2011年のインドネシア国体予選で準優勝、2012年のインドネシア国体前哨戦で優勝、同年のインドネシア国体決勝大会で銅メダル。そして2014年からインドネシア代表ナショナルチームの監督に復帰をし、2015年の東アジアカップで準優勝。
- 世界の野球 可能性を秘めたコロンビア野球
- 世界の野球 力戦奮闘ブラジル野球!~日系移民が紡いできた夢~
- 世界の野球 東欧ブルガリア -野球事情とその展望-
- 世界の野球 ヒマラヤを北に臨む国 ネパールの野球
- 世界の野球 清水直行 ニュージーランド野球の世界挑戦記
- 世界の野球 アジア選手権 日本人監督の挑戦 インドネシア編
- 世界の野球 アジア選手権 日本人監督の挑戦 パキスタン編
- 世界の野球 アジア選手権 日本人監督の挑戦 番外編 タイ野球の歩み
- 世界の野球 日本人指導者の挑戦 香港野球編
- 世界の野球 フランス通信~フランス野球・ソフトボール連盟より~
- 世界の野球 南の楽園フィジーのHAPPYベースボール通信
- 世界の野球 "アフリカからの挑戦・赤土の青春" ウガンダベースボール
- 世界の野球 パラオ共和国 よみがえれ南洋の「ヤキュウ」魂
- 世界の野球 アフリカ球児の熱い青春!タンザニア野球“KOSHIEN”への道"
- 世界の野球 受け継がれるSri Lanka野球の物語~光り輝くスリランカ野球の夢~
- 世界の野球 セルビア野球の挑戦と葛藤 バルカン・ベースボール事情あれこれ
- 世界の野球 ケニア野球、一歩一歩 元独立リーガー日本人青年監督の奮闘!
- 世界の野球 欧州の野球事情
新着記事
ジャパン 関連記事
世界の野球 関連記事
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「ネパール野球25周年日本ネパールスポーツ交流プログラム2024-2025」2024年9月2日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「学校スポーツ連盟との協定」2024年4月12日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「1st National Baseball5 Championship 2024」2024年1月15日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「目指せ!体験から広がる笑顔の輪」2023年11月28日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球 「福島県×ネパール シャクナゲ交流」2023年10月2日 |