文・写真=野中寿人
インドネシア野球発展にとって大きなターニングポイントであったアジア大会も無事に終了しました。母国開催のインドネシア代表チームは、インドネシア人のみのチーム編成にて大会に臨みましたが7位という結果でした。
このインドネシア人のみのチーム編成は、インドネシア代表チームの一本立ちを意味しています。母国開催であるこの大会をきっかけとして、外国人による統括ではなく、インドネシア人みずからの手によって代表チームを率いるべき、という私の考えを提案し、実現に至ったものです。
アジア大会直前の強化練習においては、2015年までの私や原田氏が統括をしていた時と比較し、規律やメリハリ、練習内容も雑になっていましたが、ここから本当の意味でのインドネシア代表チームが始動して行くのであり、来年の東南アジア競技大会に向けて改善をして行ってくれることと信じております。
本大会でのインドネシア代表チームの試合観戦者は開催地ということもあって非常に多く、野球という競技の認知が急上昇する結果を招いたのではないかと思います。インドネシア国内の野球人口は2年前の統計では1万5000人でしたが、現在は2万人を越えており、今回の大会をきっかけとして、野球の認知度・競技人口ともに増加していくものと思われます。
また、この大会のために首都ジャカルタに新設された2つの野球場の存在が大きく、アジア大会で灯った野球競技への熱気を冷まさず、この2つの野球場を有効に使用して行くことがなによりも大切なことだと感じています。
アジア大会終了直後には、この野球場を使用して、MLBやNPBで活躍されたマック鈴木氏による野球教室が開催されました。マック鈴木氏の認知度とアジア大会の余韻から、ジャカルタ州内の約100人の選手が野球教室に参加し、選手達の父母や一般の方々が見学に来場し、スタンドを埋めました。更に、11月にはアセアン国際交流野球大会が開催されます。この大会では、日本、フィリピン、スリランカの選手達をジャカルタに招聘し、インドネシアを交えての野球大会および野球教室が開催されます。
加えて、インドネシア代表は、各年代別カテゴリーの国際大会へ常時参戦していく意向です。今年はU12とU18のアジア選手権大会へ参戦いたしました。インドネシア代表には、資金やチーム編成、強化練習の日数など、問題が山積しているのが実情ですが、今後も、参戦枠を頂ける大会には必ず参加をして行く姿勢です。
先日のU18アジア選手権大会の際、東京都高野連様との間で、2019年12月に東京都の現役高校野球指導者数名による野球教室をインドネシアで開催することが決定いたしました。またU15も新しいプログラムとして来春から男女選手混合のU15東アジア野球選手権大会をインドネシアで開催することが既に決まっており、福岡県とオーストリアからもチームが参加する予定です。
また、2018年のBFA U18アジア選手権大会に出場した明徳義塾高校野球部所属のアンダーソン君(高校3年/ 捕手)の様に、今後、インドネシアから日本の高校へ野球留学する生徒も増えることでしょう。また、来年の東南アジア競技大会を見据え3人の選手(社会人1名と高校生2名)が8月8日から9月2日まで日本大学準硬式野球部と駿河台大学硬式野球部へ野球研修をしておりました。このうちの高校生の選手は研修終了後にインドネシア代表チームのメンバーとしてU18アジア選手権大会へ参戦いたしました。
インドネシア野球は、今後も各野球先進国の団体や組織から沢山のお力添えを受け、引き続き発展と向上を目指してまいります。近い将来、にインドネシア独自の野球運営組織が確立され、インドネシア人の選手が日本をはじめとした野球先進国で活躍する日が来るものと確信をしております。
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著者プロフィール
- 野中 寿人(のなか かずと)
- 1961年6月6日生。日大三高野球部在学3年の夏に西東京代表にて全国高等学校野球選手権大会に出場。
その後、日本大学体育会硬式野球部へ進学。日本大学では1年の秋から体調を壊し2年間の休部をし、現役野球人生を終える。大学卒業後は、フィリピン、サイパンなどで仕事をし2001年にインドネシアのバリ島へ移住。2004年からバリ島の子供達に野球を教え始め2005年にリトルリーグを発足。2006年にはバリ州代表監督に就任、また、クラブチームを発足。2007年にはインドネシア代表ナショナルチームの監督に就任。2007年のSEAゲームスで銅メダル、2009年のアジアカップで優勝、同年のアジア選手権大会へ出場。その後、インドネシア代表ナショナルチームの監督を辞任し、地方州底上げの為に、東ジャワ州代表監督に就任。2011年のインドネシア国体予選で準優勝、2012年のインドネシア国体前哨戦で優勝、同年のインドネシア国体決勝大会で銅メダル。そして2014年からインドネシア代表ナショナルチームの監督に復帰をし、2015年の東アジアカップで準優勝。
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