文・写真=NPO法人ネパール野球ラリグラスの会(小林 洋平)
これまでのコラムの中でも度々紹介していた「第14回BFA西アジア野球大会2019」が、去る7月15日から7月20日に渡りスリランカのコロンボで開催され、私もネパール代表チームのシニアアドバイザーとして参加した。4月のテロ事件の影響で大会日程が変更になったり出場を辞退する国が出たりと、大会前には様々な困難があった。しかし、大会関係者の尽力により、大会は無事に終了した。まずは、大会関係者の皆様に感謝申し上げたい。
紆余曲折はあったものの、最終的な参加国はWBSCランキング69位のネパールのほか、24位のパキスタン、41位のスリランカ、65位のインド、53位のイラン、そしてBFA未加盟のバングラデシュの計6カ国となった。大会は参加国がグループA(スリランカ、インド、ネパール)とグループB(パキスタン、イラン、バングラデシュ)の2組に分かれて予選リーグを行い、その後、決勝トーナメントや順位決定戦が行われた。
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ネパールの初戦は大会2日目、予選リーグのスリランカ戦。前回の優勝国でもあり地元開催で意気揚がるスリランカは強く、スリランカの14安打に対しネパールは1安打と打力の差を見せつけられた。試合は6回途中に雨が降り出し、5回降雨コールドの13-0で敗戦となった。また、翌日はインドとの対戦であったが、この試合でもネパール打線は振るわず2安打に抑えられる中、またもや雨で試合終了。8-0で5回降雨コールド負けとなり、決勝トーナメント進出はならなかった。
ちなみに、大会中は何度となく突然のスコールに見舞われ、しばしば試合が中断することがあった。雨が降り出すと大勢のスタッフにより内野を覆うシートが掛けられるのだが、その作業は統率が取れていて実に手際よかった。聞くところによると、彼らは軍隊だそうだ。このように大会には様々な人々が関わっているのである。
その後ネパールは、大会5日目に5・6位決定戦でバングラデシュと対戦した。バングラデシュとは、昨年インドで行われた「PRESIDENTIAL CUP」で対戦しており、その際はネパールが大差で勝利したが、今回は要所で長打を浴びたり守備の乱れがあり、11-4で敗戦。ネパールの6位が決まった。
今大会を振り返ってコーチのビピン・バジラチャルヤ氏は「今回の大会は貴重な経験になりました。また、辛い経験でもありました。ベストを尽くして戦いましたが、プレーだけでなく私たちコーチを含め全ての面で課題が見つかりました。この経験を踏まえ、次回に繋げていきたいと思います」と述べた。
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成績としてはネパールは残念な結果であったが、今大会では新しい世代の台頭もあった。18歳のアムリット・ネパーリー選手は一塁手として全イニングに出場し、スリランカ戦ではチームで唯一のヒットを放った。また、捕手のサグン・キチャジュ選手は試合の約半分でマスクを被った。二人とも2014年にネパール野球ラリグラスの会の招きによって来日したネパールの少年野球選手団の一員でもある。
一方、今回のチームには2011年にネパールが国際大会に初出場した際の代表選手4名も選ばれている。1999年にネパール野球が始まってから20年、今回、若手とベテランが混在する代表チームが作られたことは、野球がネパールの中でネパール人自身の手によって次世代に受け継がれていく道筋が見えてきた証でもあろう。様々な課題はあるが、今大会の経験を糧としてネパール野球は更に成長してゆく。
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